Mother tongueという言葉はなぜ使われなくなったのか
昔、英会話を習っていたころ、「母国語」という意味で「mother tongue」といういい方を記憶しました。でも、実際に英語ネイティブに囲まれて暮してみると、「mother tongue」といういい方を耳にしたことはほとんどないことに気づきます。どうして、「mother tongue」という言葉は使われなくなってしまったのでしょうか。海外で暮らしてみると、そもそも「mother tongue」という英語表現以前に、日本語の「母国語」という表現に違和感を覚えることが多くなりました。日本、日本人と日本語については、とてもシンプルです。日本で生まれて日本で育つ人は、かなりの割合で「日本人」であり、デフォルトとして「日本語」を話すという事実があります。だから、圧倒的多数の日本人にとっては、日本語が第一言語であり、母国の言葉、すなわち「母国語」だと思うのです。ところが、日本以外の世界へ目を向けてみると、言語の境界線がすなわち国境であることの方が、むしろ少なかったりします。だから言葉の問題を語るとき、「国」単位でどうこう述べることは困難であり、「国」という文字が含まれている「母国語」という単語を用いることについて、釈然とできなくなるのです。じゃあ、「国」という文字を入れないで「母語」といういい方はどうでしょうか?「mother tongue」といういい方にも「国」という概念は入っていないので、「母語」とするほうが正しいような気がしますね。ところが今度は、「母(mother)」という性別を彷彿とさせる単語が入っているので、性平等(gender equality)の観点から、時代にそぐわないよ
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