あの人が距離を置く本当の理由
五月の風が少し甘くなってきた気がして、ふと立ち止まった。ボロニアという花を知っているだろうか。オーストラリア原産の、小さくて愛らしい花だ。ピンク色の鈴型の花びらが枝先にぽつぽつと連なって、見た目はとても控えめなのに、近づくと柑橘系のやわらかな香りがふわっと漂ってくる。主張しない。でも、確かにそこにいる。そういう花だ。花言葉は「芳香」と「心が和む」。香りが由来になっているのだけれど、この言葉を聞いたとき、なんとなく胸がざわついた。香りって、論理じゃないんだよね。頭で考えるより先に、体が反応する。懐かしい人の香りを思い出して、気づいたら涙が出そうになっていた、なんて経験、あなたにもないだろうか。あの人のことを思い出すとき、理由を説明できないことの方が多い。好きだった理由は言えても、忘れられない理由は言葉にならない。それは香りと同じで、どこか感覚の深いところに刻まれてしまっているものなのかもしれない。少し前に、三十代の女性から相談をいただいた。職場で知り合った男性のことが気になっていて、でも相手の気持ちがまったく読めないと言う。優しくされることもあるけれど、距離を感じる瞬間もある。「好かれているのか、そうじゃないのか。もう自分では判断できなくなってしまいました」と、そんな言葉が届いた。霊視で視てみると、その男性の中には確かに彼女への感情があった。ただそれは、本人もまだ整理できていない種のような状態で、表に出せずにいるのが見えた。彼女に見せていた距離感は、冷たさではなく、近づきすぎることへの怖さからきているものだった。そのことを伝えると、「どう動けばいいかわかりました」と少し声が明るく
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