ちゃぶ台日記Vol. 41「あの日、何も言わず辞めてしまった理由」
あの日、介護士ショウさんの歌に、心を掴まれた。認知症の方の気持ちを代弁するその歌は、どこかで聞いたことのある声のようで、胸の奥に静かに入り込んできた。そして今日、更新されていた新しい曲。今度はショウさん自身の気持ちを歌っているようだった。気の利いた言葉も魔法のような力も私は何ひとつ持っていないけれど入居者さんの悲鳴誰かのため息溢さないようにそっと拾い集める(歌詞より)私は、介護の仕事が嫌いだったわけじゃない。辞めてしまった理由は、人間関係に、心が耐えられなかったから。「いろんな人が来るけれど、楓さんは心に残るヘルパーさんです」ご利用者様にそう言っていただいたことがある。あの言葉は、今でも忘れていない。できないことがひとつずつ増えていく中でも、人を思いやる気持ちや、感謝の心は、むしろ強くなっていく。長い人生を生きて来た方の言葉には、重みがあって、あたたかくて、だからこそ、まっすぐ心に届く。ショウさんの歌を聴いていると、あの方の顔が浮かぶ。何も言わずに辞めてしまったこと。ごめんなさい。「今日はお休みかな」最初は、そう思ってくれていたかもしれない。でも――次の日、その次の日も。本当は、最後まで見届けたかった。それが、私の後悔。でも、あのときはもう――限界だった。歌の中でショウさんは言う。「魔法のような力はない」と。でも、本当にそうだろうか。人の気持ちに寄り添い、言葉にならない想いを拾い上げ、それを誰かに届けること。それはきっと、目には見えない“魔法“なんだと思う。この歌に共感する人は、きっとたくさんいると思う。私も、そのひとり。人の気持ちを想像できる人が、ひとりでもいる場所は、きっと
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