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砂時計の破片で、古いラジオを磨く真夜中

こんにちは!前嶋拳人です。深夜の作業机の上で、不注意に落として割ってしまった砂時計の破片を眺めていました。飛び散った細かな砂は、まるで誰かの記憶が細かく分解されて、二度と元の形には戻らないことを告げているようです。大手企業で基幹システムの構築を担っていた頃、僕にとっての時間とは、一分の狂いもなく刻まれるべき絶対的な物差しでした。すべての処理を決められた秒数の中に収め、遅延を許さず、完璧な秩序を保つ。それが正しい世界の在り方だと信じて疑わなかった。けれど、独立して一人ひとりの想いに寄り添うようになり、僕の指先は、砂の粒のようにこぼれ落ちてしまう「曖昧な時間」の愛おしさを知りました。ふと、棚の奥で埃を被っていた古いラジオを取り出し、砂時計の鋭い破片でその表面をそっと磨き始めてみました。研磨されるプラスチックの焦げたような匂いが、真夜中の静寂に混じり合います。すると、電源も入れていないはずのスピーカーから、ざらついたノイズと共に、見知らぬ異国の青い海を渡る風の音が聞こえてきました。それは、僕がこれまで一度も記述したことのない、けれどどこか懐かしい、未完成の旋律でした。論理だけでは決して捉えきれない、誰かの溜息や、夜明け前の予感を動力源とする不思議な放送。僕はそのダイヤルを、導かれるままにゆっくりと回してみました。すると、部屋の壁が薄いレースのように透き通り、足元には、巨大なチェス盤が無限に広がる平原が現れました。僕はその盤上の駒の一つになり、目に見えない巨大な存在が動かすのをじっと待っています。かつて僕が必死に守り抜いてきた納期や仕様、社会的な立場という重い鎧が、ここでは一枚の薄い紙
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