どう考えても・・・
校庭には、春の風が流れていた。女子の列が、グラウンドの端に集まり始めている。凪は、フェンスのそばで足を止める。少し離れたところで、悠真も男子のほうへ歩こうとしていた。そのとき。凪の視線が、ふとグラウンドの向こうに向く。陽菜が、女子の友達と話している。何か言って、くすっと笑う。その笑顔につられて、周りの子たちも笑っている。凪は思う。やっぱり、明るい。無理をしている感じがない。ただそこにいるだけで、空気がやわらかくなる。そのとき。陽菜の視線が、ふっとこちらに向いた。悠真と目が合う。ほんの一瞬。陽菜は、小さく手を振る。呼ばない。ただ、それだけ。でも。悠真の表情が、少しだけやわらぐ。凪は、それを見てしまう。胸の奥が、きゅっとする。どうしてだろう。嫌なわけじゃない。むしろ、二人とも、いい人だと思う。でも。それでも。――どう考えても。その言葉が、また胸に浮かぶ。陽菜のほうが、明るくて、自然で、悠真の隣に似合う。凪は、そっと目をそらす。風が、制服のスカートを揺らす。体育の笛が鳴る。女子の列が動き始める。凪は、ゆっくり歩き出す。でも。胸の奥では、さっきよりもはっきりと、ひとつの考えが形になり始めていた。――やっぱり。わたしが、離れたほうがいい。まだ誰にも言わない。でも。その決意は、凪の心の中で、静かに、確かに、芽を出していた。
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