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すべてのブログから「#小説家志望」タグの検索結果

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私は政治家ではなく、臨床家になりたい

この11か月、私はnoteで文章を書いてきた。  不特定多数の人に向かって、自分の考えていることを発信する。  読んでくれる人が増えれば嬉しい。スキがつけば嬉しい。たくさんの人に届く記事とは何なのかを考え、タイトルを変えたり、テーマを変えたり、ときには一日に何本もの記事を書いたりもした。  けれど、最近になって思う。 私は、政治家になりたいわけではなかった。  もちろん、本当の意味で政治家になりたいという話ではない。 ここでいう「政治家」とは、不特定多数の人に向かって言葉を投げかけ、人々の関心を集め、空気を読み、多くの人の心をつかむ人の比喩だ。 大勢の前に立てば、一人ひとりの顔を見て話すことはできない。  「いま、多くの人は何を求めているのか」  「どんな言葉なら反応してもらえるのか」  「どんなテーマなら読んでもらえるのか」  そうやって、ある程度は「多数」を相手にしなければならない。  これは一つの能力だと思う。  そして私は、この能力がそれほど得意ではないのだと思う。  100万人ではなく、目の前の一人 noteを書いていると、数字が見える。 PV、スキ、フォロワー。 数字が増えると、「届いた」と感じる。 けれど、そこで私は少し不思議なことにも気づいた。  相手の顔が見えない。 この記事を読んだ人は、どこで立ち止まったのだろう。 何を面白いと思ったのだろう。 逆に、どこで「違うな」と思ったのだろう。  本当は何を知りたかったのだろう。 数字だけでは、ほとんど分からない。  私はたくさんの人に向かって話している。  しかし、向こうから返ってくるものは限られている。 
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宇佐見りん『推し、燃ゆ』講評例#3

①「車酔いをしていた。額の内側、右の眼と左の眼の奥に感じる吐き気は、根深く、抉り出せそうになかった」(28頁)「額の内側」「右の眼と左の眼の奥」と身体部位を細かく指定した意図が気になった。身体感覚のリアリティを高めるためであれば、具体性を増したことで、かえって読者に医学的・解剖学的な読みを誘発する可能性がある。一方、医学的な正確さではなく、人物本人にしかにしか分からない主観的身体感覚を表現する意図であれば、この奇妙な局在そのものに意味が生じる。 リアリティを高めようとして具体化を重ねた結果、身体的位置と複数の比喩が競合し、かえって読者が〈吐き気そのもの〉より〈表現の仕方〉を意識してしまう。「根深い」は《根を張るもの》を想起させる。それを「えぐり出す」となると、今度は《肉の内部に埋まった異物》のようになるからだ。②「愚問だった。理由なんてあるはずがない。存在が好きだから、顔、踊り、歌、口調、性格、身のこなし、推しにまつわる諸々が好きになってくる。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、の逆だ。その坊主を好きになれば、着ている袈裟の糸のほつれまでいとおしくなってくる」(29頁) 「坊主憎けりゃ袈裟まで憎いの逆だ」と述べた時点で、「坊主を好きになれば袈裟まで好きになる」という後続の意味は読者に推論可能である。その直後に「その坊主を好きになれば……」と展開するため、やや説明が二重化しているように感じた。ただし、「袈裟の糸のほつれまで愛おしい」は単なる反復ではなく、対象に付随するものだけでなく、その瑕疵まで愛おしくなるという意味を付加している。この像を生かすのであれば、むしろ先行する「坊主憎けりゃ袈裟
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ストーリー作り|学びの記録.10 伏線回収

伏線とは、物語の中で登場する小さなヒントやサインのこと。それが後の展開と結びついたとき、読者に「ああ、なるほど!」と思わせる快感を与える要素です。今回は、伏線の役割やその効果、成功させるためのポイントなどを具体例を交えながら勉強しました。伏線の役割伏線というのは、物語の中で読者を惹きつける強力な仕掛けです。読者は、物語の中で散りばめられたパターンや小さなヒントを見つけ出し、それらがどのように物語と繋がるのかを予測することに大きな楽しみを見いだします。そして、伏線が鮮やかに回収される瞬間、読者は「ああ、こう繋がるのか!」と感動すると同時に、伏線の回収方法を予測してきたことで「物語に参加している」という一体感を味わいます。この一体感こそが、物語に没入し、さらに深く楽しむための原動力となるのです。伏線とは何か?その役割と魅力伏線が物語にあることで、読者は「この先どうなるんだろう?」とワクワクしながらページをめくる楽しみを得ることができます。そして、伏線が上手に張られていると、物語にぐっと引き込まれる感覚を味わえるのです。それでは、伏線が物語にもたらす役割について見ていきましょう。●未来の展開の下準備伏線は、物語の展開に納得感をもたせるための大切な準備と言えます。例えば、物語の序盤にさりげなく登場する出来事やセリフが、実は後の展開と深く結びついているとわかったとき、読者は驚きと喜びを感じるものです。この伏線があることで、物語全体がより説得力を持ち、読者に強い印象を与える仕掛けとなるのです。●読者の想像力を刺激する伏線というのは、読者の想像力を刺激するツールです。「この出来事にはどんな意
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ストーリー作り|学びの記録.06 読者の心を動かす具体性と物語性

概念的、抽象的、一般的な物事を扱う際、それを具体的なものにしなければなりません。それが、読者を引き込む鍵となります。人は視覚的なイメージに強く感情を動かされるため、物語が感動を与えるには、まずテーマを視覚化し、感覚的に「見える」形に落とし込むことが必要です。視覚化するためには、個別のシーンや出来事に置き換えて具体的にすることで、読者は物語に込められたメッセージを感情的に体感できます。今回は、物語の力であり、共感や想像を引き出す重要な技術である「視覚化」を学びました。視覚化で読者の心を動かす物語を通じて何かを伝えるとき、ただ事実を並べるだけでは人の心には届きません。特に、大規模で恐ろしい出来事であっても、一般的な説明にとどまると、多くの読者は感情的に深く関わることなく、ただの情報として流してしまうのです。2006年10月、ハリケーンによる洪水で6,000人が亡くなったこの文章を読んで何を感じましたか?確かにこの数字には悲劇的な重みがありますが、それを目にしたときに、多くの人は「大変な出来事だったんだな」と一瞬思いはするものの、それほど強い感情的反応は湧かないのではないでしょうか。数千人という膨大な犠牲者が出たとしても、その事実が「個人的な体験」として感じられない限り、意識の中でその重さが薄れがちです。では、次の文章はどうでしょうか?洪水が押し寄せる中で、半狂乱になって母親に必死にしがみついている幼い少年。母親は息子をなだめようと、こうささやいている。「心配ないわ、私はここよ、絶対に放さないから」。一瞬の静寂と安心したような表情を浮かべる少年、次の瞬間には大波がやってきて、息子を母
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宇佐見りん『推し、燃ゆ』講評例#4

① バイト先での働きぶりを描写する際、句点を打つべきところで読点を打ち、一方で読点を打つべきところで打たない。その効果について。 バイト先で次々と情報や動作が重なっていく場面では、句点で情報を確定させず、また読点を置ける箇所でもあえて境界を弱めることで、主人公が周囲の情報を十分に処理できないまま右往左往している感覚が、文体そのものに移されているように読める。 その中で「お酒が入ることで油を差したように口が回る人なのだろう」(51 頁)だけは、相手の性質を一歩引いて分析する文章になっており、前後に比べて主人公の認知が急に冷静になる。この一文だけ語りの速度・距離が変わって見える。主人公の混乱を文体的に持続させることを優先するなら、削除あるいはより即時的な知覚へ置き換える余地がある。② 推しの人気投票をテレビで見ているところ、母親が用事を頼まれ、テレビを見ることの緊張を描かなかったことについて。 人気投票の結果を待つ主人公の緊張を直接描写するのではなく、途中に母親から頼まれた用事を挿入し、戻ったときにはすでに「5位」という結果が出ている。この構成によって、本来ならクライマックスになり得る順位発表の「過程」が意図的に欠落する。主人公が見届けられなかった時間を読者も経験できないのである。 同時に、主人公にとって重大な「推し」の世界へ、母親の「いい加減にしなさい」(65頁)に象徴される日常生活が容赦なく割り込んでくる。結果として「5位」は劇的に到達する数字ではなく、主人公の知らないところで決定されてしまった事実として突然現れる。ここには、推しに強く感情を寄せながら、その世界そのものには介入
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ストーリー作り|学びの記録.09 主人公&作者への試練が物語を動かす

物語の役割は、主人公を予想もしない試練の中に置き、その試練をどう乗り越えるのかを読者に追体験させることにあります。特に現実ではあり得ない状況に主人公を置くことで、非日常的な体験を提供し、読者に興味を抱かせます。今回は、主人公に試練を与える方法やその効果について学びました。読者のために主人公に試練を与える物語が読者に面白いと感じられる理由は、主人公が試練に苦しむ様子を観察しながら、自分ならどう対応するかを学ぶためです。主人公が苦しむことで、読者は間接的に困難を乗り越える知識を得られ、実際に苦しむことなく新たな学びを得られるのです。そのため、物語の中で主人公には本気で苦しんでもらう必要があります。主人公が心底から苦しむことで、読者は感情移入し、その試練を自分のことのように感じます。このプロセスを通じて、読者は物語から価値ある学びを得られるのです。ここでの作者の重要な役割は、主人公の計画や期待を意図的に崩壊させ、物語を深める工夫をすることです。仕掛けを考え、徐々に災難を増幅させることで、読者は緊張感を持ちながら次の展開を楽しむことができます。読者を魅了する物語作りには、自分の可愛い主人公を苦しませる勇気が必要です。主人公を鍛えるために試練を与えよう物語を魅力的にするには、主人公をあえて苦しませる必要があります。読者を引き込み、主人公を成長させるために、どのような試練を与えるべきか。その方法と意義を深掘りします。読者のためを思って、主人公に試練を与える主人公が直面する困難は、物語を創る作者が用意するものです。愛する主人公を守りたくなる気持ちはわかりますが、それでは読者が楽しめる物語は生
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ストーリー作り|学びの記録.08 原因と結果で織りなす一貫性の技

物語とは、原因と結果の連鎖で成り立っています。この連鎖がなければ、物語は単なる出来事の羅列に過ぎなくなります。今回は、「原因と結果」を軸に、どのようにストーリーを展開させ、読者を惹きつける物語を作るかを学びました。「もし、その後、だから」というシンプルな法則から深いキャラクターの動機まで、物語の奥深さを追求する方法をご紹介します。原因と結果を軸にした物語の展開「原因と結果」は読者を引き込むための重要な軸です。この構造を活かすことで、物語は単なる出来事の羅列から脱却し、意味のあるストーリーとして機能します。この記事では、「もし、その後、だから」の法則を詳しく解説し、実際のストーリー作りにどのように応用できるかを探ります。「もし、その後、だから」の法則とは?「もし、その後、だから」とは、物語の流れを論理的かつ自然に保つための基本的な構造です。これは、キャラクターの行動とその結果を連続的に結びつけることで、物語を前進させるシンプルかつ効果的な手法です。この法則の基本構造・もし:キャラクターが選択や行動を起こすきっかけ(原因)・その後:その選択や行動が引き起こす結果(中間の出来事)・だから:キャラクターがその結果に基づいて次に下す決断(新たな行動)この連鎖が、物語全体を貫く「線路」のような役割を果たします。この線路がなければ、物語は単なる断片的な出来事の羅列に終わり、読者の興味を保つことは難しいでしょう。法則を活かしたストーリー展開具体例を使って、この法則がどのように機能するかを見てみましょう。もし:主人公が友人を助けるために銀行を襲うことを決意したその後:計画が失敗し、警察に追われる
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ストーリー作り|学びの記録.07 物語を動かす「対立」と「種明かし」

物語の本質は「変化」にあります。そして、その変化を生み出す源泉が「対立」です。現実の世界では、私たちは対立を避けるように生きています。関係が壊れることを恐れ、争いを回避する選択をとるのが普通です。しかし、読者は物語において現実では体験できない「対立の真っただ中」を求めています。それは、感情的な犠牲や葛藤を疑似的に体験し、現実では味わえない緊張感を楽しむためです。日常生活では避けがちな対立も、物語の中では大歓迎され、むしろその長引く緊張感が読者を引きつける重要な要素となるのです。今回は、対立の伏線からクライマックスでの解放、効果的な種明かしの作り方まで、読者を引き込むための技術を学びました。物語を彩る「対立」の伏線から解放解放まで対立はただの衝突ではありません。それは、物語全体に緊張感を持たせ、読者の感情を揺さぶるエネルギーです。しかし、読者が興奮し感情移入するためには、その対立が唐突に生じるのではなく、物語の初期から伏線として存在している必要があります。たとえば、物語の冒頭で何気なく描かれた出来事が、後に大きな対立を引き起こす伏線となると、読者は「そういうことだったのか」と驚き、物語にさらに没入します。何気ないシーンにも緊張感や予兆を持たせることで、読者はその展開を待ち望むようになります。物語での対立の効果的な使い方伏線で予兆を作る対立は突然起こるものではなく、その種は物語の最初から蒔かれているべきです。例えば、登場人物の些細な言動や環境の描写に、後に訪れる対立のヒントを忍ばせておくと、読者の興味を引き続けられます。長引く対立を歓迎する現実では速やかな解決が求められる対立も、物
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私は、小説を「正しい読み」に直したくない――講評するときに大切にしていること

小説の講評をするとき、私ができるだけ避けたいことがあります。それは、「この人物の心理はおかしい」「普通ならこんな行動はしない」「ここでは、こう書いたほうがいい」と、作品を一つの読み方へ導いてしまうことです。もちろん、講評には「こう感じた」という読後感もあります。しかし私は、それだけで作品を書き換える根拠にはならないと考えています。「私はこう読んだ」と「だから直すべき」は違う。たとえば、小説の中で父親が突然、息子に激しい言葉をぶつけたとします。そこで、「この父親がこんなことを言うのは不自然です」と指摘することは簡単です。けれど、本当にそうでしょうか。人間はいつも一貫しているわけではありません。普段は温厚な人が突然怒ることもあれば、自分でも説明できない行動を取ることもある。そして何より、小説にはさまざまな人物が登場します。講評者自身の人間観に登場人物を合わせてしまったら、その人物が持っていた異物感や不気味さ、不可解さまで消してしまうかもしれません。だから私は、「私はこう読んだ」ということと、「だから、こう直すべきだ」ということを分けて考えます。この二つの間には、思っている以上に大きな距離があります。私が見るのは「何が書かれているか」。では、何を見るのか。まず大切にしているのは、できるだけテキストそのものを見ることです。たとえば、「ここで人物の気持ちが変化している。しかし、その変化につながる記述が前段には見当たらない」という指摘なら、比較的客観的に確認できます。あるいは、「この代名詞には二つの照応先が考えられる」「この比喩では、前半と後半でイメージの方向が変わっている」「この語を置く
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ストーリー作り|学びの記録.05 主人公の内面的問題を深掘りする

読者の感情移入を得るためには、主人公の「内面的問題」を軸に物語を展開させると効果的です。そもそも、物語というのは、主人公が「自分が信じていたもの」に疑問を抱き、その信念とどう向き合っていくかの過程を描くことです。これは、単に外的な障害を乗り越えるだけでなく、内面で抱える問題や信念に立ち向かい、過去の出来事を再評価するという内面的な闘いを通じて成長していく姿です。 物語の進行において、プロットが主人公を追い詰め、逃げるか立ち向かうかを選択する状況を作り出します。そして、それまで当たり前のように信じていたものが、実は主人公の成長や幸福を妨げていたり、本当のゴールを見失わせていたりするのです。 こうして主人公は過去の経験や信念を再評価することを余儀なくされ、物語は次なる展開に進みはじめます。結果として、過去が異なる視点から意味を持ち、主人公が物語を通して成長し、深い変化を経験するきっかけとなります。 また、物語を構想する際に主人公がどのようにして信念を抱くようになったかを振り返ることで、キャラクターの成長に一貫性が生まれ、読者の共感を得やすくなります。今回は、主人公の内面的問題を表現することで、読者の共感を引き出す方法を学びました。 効果的なスタートの作り方 物語の本質は、避けがたい問題に挑む人々を描くことにあります。特に、「これは何の物語?」「なぜ今なのか?」、この問いに明確に答えられないと、物語が読者に響かなくなってしまいます。 また、キャラクターを描く上で、背景や性格の設定が固まっていないと、ストーリーが不自然なものになりがちです。多くの作家はキャラクターの細かな経歴を省きたが
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ストーリー作り|学びの記録.03 感情を書く

すべての物語の根幹は感情です。読者が感情を感じなければ、読んでいないのと同じことになります。 読者が「何が重要で何がそうでないか」を感じ取れない場合、物語の結末を含め、すべての要素が無意味になってしまいます。だからこそ、作者にとって大切なのは、感情がどこから生まれるのかを理解することです。 答えは簡単です。それは主人公から生まれます。 小説では、主人公がどのように出来事に影響を受け、その出来事をどう受け止めているのかを、直接的に書く必要があります。登場人物の考えや感じていることは、その場で明確に記述されるべきです。それが読者の期待する部分だからです。 読者は無意識のうちに、「自分が同じ状況ならどう感じるだろう?」「どう対処するのが最適だろう?」という問いを心の中で投げかけています。たとえ主人公が感情を表に出さない場合でも、その反応がひとつの答えとなり得ます。今回は、「出来事に対する主人公の感情を読者に伝える方法」について学びました。 主人公の反応を伝えよう 物語に没頭していると、読者は自分自身の境界を忘れ、主人公になりきります。主人公の感じることをそのまま感じ、欲するものを欲し、恐れるものを恐れるようになるのです。これは、小説でも映画でも同じです。 しかし、よくある誤りとして、作者が主人公を読者にとって触れられない存在として書こうとすることがあります。こういった場合、作者はただ出来事を描写することが物語を書くことだと勘違いしているのです。 本当の物語とは、出来事が主人公にどのように影響し、その結果主人公がどのように行動するかを書くものです。つまり、物語のすべては主人公が受ける影
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「ぞっとした」と書かなくても、読者はぞっとできる――小説講評で私が見ていること

小説を講評していると、「間違いではない。でも、少し引っかかる」という文章に出会います。今回、こんな趣旨の一節を読みました。主人公が帰ろうとして机の中を確認すると、友人から借りていた数学の教科書が出てくる。返す約束をしていたのに忘れていた。しかも友人はその日の授業で使うと言っていた――という場面です。冒頭は、次のような構造になっていました。『推し、燃ゆ』25頁。帰ろうとして、机の中から引っ張り出したのは数学の教科書だった。ぞっとした。意味は十分わかります。しかし私は、二か所で立ち止まりました。「引っ張り出す」は、この場面に合っているだろうかまず気になったのが「引っ張り出した」です。「引っ張り出す」には、対象に働きかけて外へ出すという、比較的強い能動性があります。たとえば、「押し入れから古いアルバムを引っ張り出す」なら自然です。アルバムという対象を認識したうえで、それを取り出しているからです。ところが今回の場面で重要なのは、主人公が数学の教科書を取り出そうとしたことではありません。むしろ逆です。帰ろうとする。机の中を見る。数学の教科書を偶然見つける。そこで「返すのを忘れていた」と気づく。つまり、この場面の核は〈取り出す〉ではなく〈発見する〉ことにあります。そこで、帰ろうとして、机の中を片づけていると、数学の教科書が出てきた。あるいは、もっと削って、帰ろうとして、机の中を見る。数学の教科書があった。くらいでも成立します。私は後者のような書き方も好きです。「数学の教科書があった」その瞬間、主人公の中で記憶が立ち上がる。確か、ゆうちゃん、五限に数学があると言っていた。ここまで書けば、読者
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ストーリー作り|学びの記録.04 主人公のゴールを定める

小説を書く上で、主人公に「明確なゴール」を設定することが、物語全体を動かす鍵となります。主人公が何を求めているのか、そのゴールが明確であればあるほど、読者は物語に深く没入し、感情移入しやすくなります。 興味深いのは、脳科学の観点からもこの現象が裏付けられているという点です。研究によれば、人間が小説を読んでいるとき、実際にその行動を経験しているかのように脳が反応することが分かっています。つまり、読者が物語を読んでいるときは、実際に主人公の内面に入り込み、その感情や経験を共有しているということです。読者は、主人公が何を感じ、何を目指しているのかを自分のことのように捉え、物語に感情移入します。 しかし、この感情移入が成立するためには、物語の中で主人公が何を求めているのかが明確であることが不可欠です。主人公がどんなゴールを持ち、そのゴールに向かってどのような行動を選んでいるのかを読者が理解できなければ、物語に共感することができなくなります。主人公の行動や選択の意味がわからないと、物語はただの出来事の連続に感じられ、読者は物語に引き込まれなくなってしまうのです。 今回は、物語に起こるすべての出来事に意味を持たせるために、主人公のゴールをどのように設定すべきかを学びました。 物語にゴールが必要な理由と読者を引き込む力 物語のプロットは、主人公の外面的なゴールを中心に展開されますが、それに加えて内面的な葛藤も必要です。主人公が外面的な目標に向かう中で、内面での闘いが描かれることで、物語は深みを持ち、読者を引き込む力が生まれます。読者は「主人公がゴールに到達するために、どんな感情的な代償を払う
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ストーリー作り|学びの記録.02 焦点を絞る

人間の脳は、何かに集中しているときに、不要な情報を無意識にふるい落とします。ですので、読者の注意を引きつけるためには、物語から不要な情報を排除し、焦点を明確にすることが大切です。 物語は、最初から最後まで、その物語を貫く1つの答えに到達するために作られます。読者が知る必要のない情報で溢れている物語は、もはや物語ではなく、単なる出来事の寄せ集めに過ぎません。 焦点が定まらない物語は、結局何も伝えられずに終わってしまいます。もし2〜3行で内容をまとめられない物語であれば、まとめられるまで全体を書き直すしかありません。 焦点を明確にしよう 焦点がないということは、物語のさまざまな要素の意味を解釈する手がかりがないということです。焦点が曖昧な物語では、物事を判断する基準が見えません。 では、この「焦点」とは具体的に何なのでしょうか? ここでの焦点とは、物語を展開するために機能する、次の3つの要素が統合されたものと定義します。 ①主人公が直面する課題 物語というのは、主人公が最終的に目標に到達できるかどうかだけを描くものではありません。主人公がその目標にたどり着くために、内面的にどんな課題を乗り越えなければならないのかを描くものです。これが物語を進行させるエネルギー源となります。 ②テーマ 物語が人間の本質について伝える内容です。登場人物の関わり方に反映され、物語の世界で何が可能かを決定します。主人公の努力が成功するか失敗するかも、テーマによって左右されることが多いです。 ③プロット プロットは、主人公が目標に向かう過程で、避けたいと思っている問題に何度も直面させられる出来事のことです。
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ストーリー作り|学びの記録.01 読者を引き込む

物語とは物語とは、①ゴールに向かおうとする②誰かに対して、③起きた出来事がどのように影響し、④その誰かがどのように変化するかを描いたものです。これをより分かりやすく言うと、以下のようになります。 ①ゴール:物語の中で解決すべき問題 ②誰か:主人公 ③起きた出来事:プロット ④その誰かがどう変わるか:何についての物語なのか 読者を冒頭から惹きつけるためには「この本は何について書かれているのか?」という疑問に、最初の1ページで明確に答えることが大切です。できれば1行で答えたい。 読者が最初のページで知りたがる重要なポイントは、次の三つです。①この物語の主人公は誰か? ②現在どのような出来事が進行しているのか? ③何が危険にさらされているのか? 例文) 15歳の虎杖悠仁が、「死刑宣告」されるきっかけとなったのは、高校のオカルト研究会に参加したことからだった。①この物語の主人公は誰か? ーー15歳の虎杖悠仁 ②現在どのような出来事が進行しているのか? ーー高校のオカルト研究会に参加していて、そのことがなんらかの引き金となり、これから「死刑宣告」されることが起きる(前半から想定できない後半に繋げることで、落差を出して読書を引き込む) ③何が危険にさらされているのか? ーー虎杖悠仁の命、オカルト研究会の誰か。 これが、重要なポイントを意識して作られた例文です。 読者を冒頭から引きつけ、続きが読みたくなる書き出しになっていると思います。 虎杖悠仁が何かしらの事件に巻き込まれるという事実は、この物語のテーマを示すだけでなく、前後の出来事のつながりも理解させてくれます。 この事実を手がかりに
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