読書をして、放心する。
圧倒的な物語を読み終えると、しばらく動けません。私が読み終えたのは「レーエンデ国物語 月と太陽」です。レーエンデという地域が国として独立し、自由と権利を手にするまでのお話になります(まだ全巻は出ていないので、私の予測も入ります)。全部で5巻になる予定の2巻目(4巻目まで出ている)です。1巻目はレーエンデが植民地のような状態に陥るまで、2巻目で植民地状態に抗って戦う人々が描かれます。しかし、5巻で終わるなら2巻目で独立できるはずがないのです。そう、主人公たちがどれだけ快進撃を続けようと、必ずこの戦いは失敗する。それが約束された中で読み進めるのがとても辛いお話でした。物語の結末が約束された中で、しかしそれでも圧倒してくる登場人物の生き様。世界を変えようと戦う人々の視座の高さと、ただ今の生活を守りたい民衆のずれは胸が痛むものでした。レーエンデ国物語は、大人向けのファンタジーです。大人向けなだけあってテーマもずんと重く、ファンタジー要素も「神の御子」だけであり、魔法は登場してきません。私が中高で学んできた人々が平等を謳い、権利を手にしていく歴史が心に迫って実感できた物語でした。平等や権利を求め戦う過程で、得られるのは少しずつ。それもまた、権力側の目論見通りだったりもする。全国民に選挙権は与えたくないから、成人男性だけにしておく。こうすれば単純計算半数で済むし、男性が女性を牽制してくれる。分断により、敵が勝手に弱体化していくのです。なんて酷いのだろうと思いながら、「この年に成人男性に選挙権が認められました。これは素晴らしい一歩です」なんて教科書や教師の言葉を信じてしまった自分を恥じました
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