「民主主義の定義と女性の政治参加」名古屋大学法学部法律学科前期2023年
(1)問題
以下の文章は,前田健太郎『女性のいない民主主義』(岩波新書,2019年)から一部を抜粋し,出題用に編集を加えたものである。この文章を読んで,後の問いに答えなさい。
① 1917年4月2日,アメリカ大統領ウッドロー・ウィルソンは,連邦議会の上下両院の合同会議に出席していた。目的は,第一次世界大戦に協商国側で参戦するべく,ドイツヘの宣戦布告を議会に提案するためである。
② それまで,アメリカは孤立主義の国であった。なぜ,アメリカの兵士たちがヨーロッパの戦争で血を流さなければならないのか。その理由を説明する上で,ウィルソンは次のように論じた。アメリカは,民主主義の国であり,ドイツのような権威主義体制とは共存することができない。だから,武力を行使してでも,その脅威を取り除き,皇帝ウィルヘルム二世の支配からドイツ国民を解放しなければならない。「世界は,民主主義にとって安全にならなければならない」。4月6日,上下両院の決議を受けて,アメリカはドイツに宣戦を布告した。翌1918年春,ヨーロッパ西部戦線にアメリカ軍が到着すると,戦局は一気に協商国側に有利に傾き,11月にはドイツの降伏で戦争が終わった。
③ この連邦議会でのウィルソンのスピーチは,彼の理想主義者としての側面を描くものとして広く知られてきた。だが,ウィルソンのスピーチに登場する「民主主義」という言葉が何を意味するのかを考えてみると,あることに気づく。それは,ウィルソンの言う民主主義に,女性が含まれていないということである。④ 1917年の時点で,アメリカではいまだ連邦レベルの女性参政権が導入されていなかった。こ
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