星の歌姫と失われた音楽3 ファンタジー 短編
遥か昔、世界のあちこちに、ポータルと呼ばれる別の場所への移動を可能にする不思議な扉が存在していました。
ポータルを、行きたい場所へ繋げるには、その場所に合わせた歌やメロディが必要で、その歌を歌ったり、メロディを演奏したりする事で、扉を開くことができるのです。
リアンは魔法の森へ行く為に、まずは最寄りのポータルを目指すことに決めました。
それぞれのポータルには歌と楽器が上手な管理人さんが配置されていて、行き先ごとに決められている歌やメロディを管理しています。
ポータルは日常的に良く利用されており、旅人さんたちは管理人さんに、行きたい場所に合わせて音楽を奏でてもらっていました。それだけでなく、利用する人自身が自分の手持ちの楽器で演奏したり、歌ったりしてポータルを起動させることも良くあります。
例えば、平日の朝には、音楽学校の生徒さん達がヴァイオリンを持って、学校近くのポータルまで移動します。その時は、管理人さんも参加して、ささやかな時間ですが、小さな演奏会が開かれる光景が見られたりもします。
一度など、草笛でポータルを目的地に繋げることに成功した人が居て話題になったこともありました。
ポータルはいつも沢山の人の奏でる音楽が溢れていたので、ここを利用する人達は、自分が頻繁に通う場所の歌やメロディは自然と覚えておりました。
しかし、リアンを含めた多くの人は魔法の森へ行ける歌やメロディが奏でられているのを聞いた事がありません。
なぜなら魔法の森に行こうとするのは、特定の人に限られていたからです。例えば、そこにしか生えていない植物が必要になった薬師さんや、森の管理者さんなど、ごくわずかな人
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