「自分でコントロールできること」にフォーカスする 〜動かせるものを、動かす〜

「自分でコントロールできること」にフォーカスする 〜動かせるものを、動かす〜

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海に出ると、いつも思い知らされることがあります。

ビーチから漕ぎ出すその瞬間から、まわりの環境は、何ひとつ思い通りには動いてくれません。風も、波も、潮の流れも。「もう少し風が良くならないかな」と思っても、風は聞いてくれません。

だから、全部「あるがまま」受け入れます。そのうえで、自分に何ができるかだけに集中します。体の向きを変える。力の入れ方を変える。ときには、休む。動かせないものに文句を言っても、ひと漕ぎも進みません。でも、動かせるものを動かせば、ちゃんと進みます。

海の上だと当たり前なのに、陸に上がると、これがとたんに難しくなります。相手の返事。仕事の評価。結果の数字。動かせないものを、動かそうとして、くたびれてしまう。

今日の標語は、「動かせるものを、動かす」です。この話を、自分で自分に問いかけるやり方として、整理してみます。

動かせるものと、動かせないもの

以前、「行動にフォーカスする」というテーマで、行動目標は、やるかやらないかを自分でコントロールできて、はじめて意味がある、という話に少し触れました。今日は、その「自分でコントロールできる」の中身を、もう少しきちんと見てみます。

まず、動かせないもの。相手の返事。相手の気持ち。人からの評価。合格か不合格か。売上や再生数といった、結果の数字。それから、天気と、過去。どれだけ気にしても、自分の手では直接動かせません。

次に、動かせるもの。自分の行動。準備。言葉の選び方。時間の使い方。自分のまわりの環境の整え方。

結果は、自分の行動と、相手の判断と、ちょっとした運の、合作でできています。だから、結果そのものに手を伸ばしても、つかめません。手を伸ばすのは、その手前の、自分の側にある部分です。「相手に伝わるように、言い方を工夫する」ところまでは、自分の仕事。「それをどう受け取るか」は、相手の領分です。

動かせないものは、「条件」として受け取る

ひとつだけ、誤解してほしくないことがあります。動かせないものは、「どうでもいい」ものではありません。

風は動かせません。でも、風向きを読んで、進む向きを決めることはできます。動かせないものは「条件」として受け取って、そのうえで、動かせるものを選ぶ。迷ったら、自分にこう聞いてみてください。「これは、自分で動かせる?」。

よくある場面:返事を待っている間に、動かせるもの

たとえば、こんな場面です。大事な連絡を送った。面接の結果を待っている。見積もりを出した。メッセージに、既読がついた。返事が来るまでの間、何回、スマホを見たでしょうか。見るたびに、気持ちが少しずつ、すり減っていきます。でも、何回見ても、返事は早くなりません。返事を出すかどうか、いつ出すかは、相手が決めることだからです。

送るところまでが、自分の領分。送ったあとは、相手の領分です。

では、待っている間、自分に動かせるものは何でしょうか。ひとつ目は、待っている間の時間の使い方です。返事が来るまでの間に、別の作業をひとつ、進めておきます。ふたつ目は、待つ期限を決めておくこと。「3日たって来なかったら、もう一度、短く連絡する」と、先に決めておきます。決めておけば、見る回数は、自然に減っていきます。

気にするのをやめるのではなく、気にする代わりに、手を動かす。動かせるものを動かすと、待っている時間が、ただの「待ち」ではなくなります。

私自身の経験:10年以上直らなかった悪い習慣を、「動かせるもの」から攻めてみた

ここで、私自身の話をします。

実は、10年以上続いている悪い習慣があります。夕ご飯のあと、ソファでうとうとしてしまうのです。ちょっとだけのつもりが、気がつくと夜中の2時。そこから、やり残した作業や、明日の段取りをしているうちに、あっという間に3時。朝は6時に起きるのがいつものルーティーンなので、当然、昼間に眠くなって、たびたび寝落ちします。わかっているのに、10年以上、直りませんでした。

この動画のテーマを考えていた時に、ふと気がつきました。「あ、これ、まさにうってつけのテーマじゃないか」と。それで、さっそく実験を始めました。

まず、動かせないものは、夕食のあとに眠くなること。これは、止められません。では、動かせるものは何か。最初にやったのは、過去の行動記録をさかのぼることでした。夕食のあとでも、寝落ちせずに過ごせた日に、何をしていたのか。抜き出してみると、掃除、片付け、軽い運動。テレビやYouTubeを見ていた日もありました。自分のデータの中に、すでに答えがあったのです。

次に、その中から、食後の過ごし方を選びました。眠気を覚ますには、軽い運動が効くと言われています。そこで、まずは「軽い運動」を採用。いつも運動ルーティーンでやっている、その場でジャンプを400回です。これなら、ハードルも低い。映画を見る、録画したテレビをまとめて見る、といった候補にも入れましたが、最優先ではありません。

そして、体を動かすのがよさそうだとわかったので、いちばんの本命は「ジャンプのあとに、楽器の練習」にしました。楽器だけだと、単調さに負けて、弾きながら寝てしまいそうだからです。まず体を起こしてから、弾く。その次の候補が、片付けと掃除でした。

もうひとつ、決めたことがあります。いちばんの難所は、21時から22時の間。その時間の目標を、こう決めました。「22時までは寝ない。22時すぎに眠くなったら、そのままちゃんと寝る。うたた寝は、しない」。眠気をなくそうとするのではなく、眠気が来る前や来たあとの、自分の動きを決めたのです。

やってみると、朝起きた時の体の軽さが、まるで違いました。ルーティーンも、はかどるようになりました。ただ、これはまだ実験中です。習慣になったとは、まだ言えません。でも、10年以上、動かなかったものが、動き始めています。

実例:目標の人数に届かなかったイベント

別の方の例もご紹介します。

イベントを開くことになって、「500人に来てほしい」と目標を決めた方がいました。告知をして、開催まであと2週間の時点で、集まっていたのは300人。「あと200人。このままじゃ足りない。何をどう頑張ればいいんだろう」と、焦っていました。

そこで、その方は、自分にこう聞いてみたそうです。「この人数は、自分で決められるだろうか」。来るかどうかを決めるのは、来る人です。人数そのものは、自分では動かせません。

では、自分で動かせるものは何でしょうか。告知を何回出したか。どんな人に届けたか。どんな言葉で伝えたか。そう分けて見ていくと、告知の回数は、ちゃんとやれていました。つまり、行動の量は、足りていたのです。まず、そこは認めていいところです。

足りていなかったのは、量ではなく、「やり方」の側だったのかもしれません。同じ告知を、同じ場所で、増やし続けても、届く人は変わらないからです。だから、次の一手は「もっと頑張る」ではなく、「違うやり方を、ひとつ試してみる」。たとえば、広告を出して、いつもと違う人に届けてみる。効果があるかどうかは、やってみないとわかりません。それも含めて、ひとつの実験です。

最終的な人数は、目標には届きませんでした。でも、この方に見えてきたのは、もう「人数」ではありませんでした。自分の手の中にある、次の一手だったのです。

セルフコーチングで使う、3つの問い

最後に、ここまでの話を、自分で自分に問いかけるやり方にまとめます。うまくいかなくてモヤモヤする時、頭の中で、この3つを順番に聞いてみてください。

ひとつ目。「これは、自分で動かせる?」。動かせるかどうかで、まずは分けます。紙に「動かせる」「動かせない」の2列で書き出してみると、はっきりします。

ふたつ目。動かせるものがあるなら、「今日できる、初めの一手は何?」。大きくなくて構いません。いちばん小さいもので、いいのです。

みっつ目。動かせないものなら、「それを、どう受け入れて、何に使う?」。風は動かせませんが、風向きは使えます。

そして最後に、気持ちについて。さっきの眠気と、同じ構造です。ムカッとした。不安になった。そういう気持ちそのものは、動かしにくいものです。意志の力でなくそうとすると、だいたい、疲れてしまいます。でも、気持ちが動いたあとの「行動」なら、動かせます。その画面を閉じる。席を立つ。水を一杯、飲む。気持ちは動かせなくても、そのあとの行動なら、動かせるのです。

おわりに

今日は、海の上の話から、動かせるものと、動かせないものの話をしました。結果は、直接動かせません。でも、結果の手前にある、自分の体は動かせます。動かせるものを、動かす。

もし今、何かをずっと気にして、くたびれているなら。まず「これは、自分で動かせる?」と、ご自身に聞いてみてください。

※文中の事例(目標の人数に届かなかったイベントの主催者)は、プライバシーに配慮し、典型的なケースをもとに設定を変えて再構成した架空のペルソナです(一部は実際のセッションでの気づきを参考にしています)。特定の個人・会社を指すものではありません。

※睡眠や運動に関する内容は、私個人の体験と、一般に言われている話の紹介であり、医学的な助言ではありません。効果には個人差があります。

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