行動にフォーカスする 〜「学びになった」で終わらせない、行動目標の作り方〜

行動にフォーカスする 〜「学びになった」で終わらせない、行動目標の作り方〜

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コーチングをしていると、時々ふと本音がこぼれる瞬間があります。

セッションの中で「ちゃんとやります」という言葉が出てくると、私はこっそり身構えます。何年もクライアントの方々とお話ししていると、この言葉が出たあとのパターンが、なんとなく予想できるようになるものです。

たとえば、「何をちゃんとするんですか?」とお聞きすると、答えに詰まってしまうことがあります。それは、「ちゃんと」という言葉の中身——何を、どれだけ、どんなふうに——がまだ決まっていないからです。決まっていない行動は始めることができませんから、当然、何も進みません。「ちゃんと」という言葉が口をついて出てきたときは、「ちゃんと何をするんだっけ?」と自分に問いかけてみるとよいと思います。何をするかが決まって初めて、それを「ちゃんと」することができます。「何を」が決まったら、次は「どれだけ」「どんなふうに」も決めておく。どれだけできたら「ちゃんと」できたと言えるのかをあらかじめ決めておけば、できたときには「できた」とはっきり言えるようになります。

「ちゃんと」以外にも、コーチとしてのアンテナが反応する言葉があります。セッションの最後にクライアントの方がつい口にする、「良い学びになりました」というフレーズです。

口ぐせで言われたのかもしれませんし、心からの感謝の言葉なのかもしれません。ですが、コーチングの中でこの言葉を聞くと、正直なところ、思わず「おっとぉ……」と思ってしまいます。そして、こんな人物像が頭に浮かびます。セミナーに行ったり本を読んだりして、真面目に細かくメモを取る。よく勉強するけれど、勉強そのもので終わってしまう人。知識はどんどん増えていくのに、行動にはつながらない、というタイプです。

逆に一番嬉しいのは、セッションの最中に「あ、今すぐやります」と、その場で動き出してしまう方です。迷っていた講座のページをその場でパソコンで開き、申し込みボタンをクリックしてしまう方もいます。この差は、実は言葉のニュアンスにちゃんと表れています。

今日は、この話を「行動にフォーカスする」というテーマに結びつけてお話ししたいと思います。

ティーチング・コーチング・メンタリング

コーチングの周りには、似ているけれど少しずつ違うアプローチがいくつかあります。知識やスキルを教える「ティーチング」。考え方や価値観について話す「メンタリング」。そして、「行動」を扱うコーチング。コーチングが向き合うのは、基本的に「行動」なのです。

だからこそ、「いい学びになりました」で終わってしまうと、実は少し——いえ、かなりがっかりしてしまいます。「学びになった」という言葉は、ティーチングへの反応であって、コーチングによって課題がきちんと行動まで落とし込めた人の反応ではありません。コーチングで本当に聞きたいのは、「このセッションが終わったら、すぐやります」という一言です。行動レベルの言葉が出てくるかどうか。それが一つのバロメーターになります。

もちろん、学ぶこと自体は素晴らしいことです。ただ、その学びから得たものをもとに実際に行動できるかどうかは、また別の問題なのです。

「達成目標」と「行動目標」

では、その「行動」を具体的にどう始めればよいのでしょうか。ここで大事なのは、「達成目標」と「行動目標」を分けて考えることです。

たとえば、こんな方がいたとします。転職を考えていて、そのために「簿記2級に合格したい」と思っている。次の試験の日程はもう決まっているけれど、具体的な学習計画は特に考えていない、という状態です。

「簿記2級に合格する」というのが「達成目標」、つまりゴールです。ゴールが決まったら、次に考える必要があるのは、そのゴールに向かって今何をすべきか、ということ。この「今すべきこと」が「行動目標」です。行動目標が決まると、初めの一歩を踏み出すことができ、そこから、その行動を習慣に変えていくことができます。

もちろん、その行動は自分が実際にできることでなければ意味がありません。やるかやらないかを自分でコントロールできてはじめて、意味のある行動目標になります。達成目標を眺めているだけでは、身体は動きません。

「今月中に、問題集の最初のセクションをやりきる」「毎日1時間、過去問に取り組む」——そう決めたらまずやってみて、うまくいかなかったときは「失敗したのではなく、そういうデータが取れた」と考えます。そして、やり方に工夫を加えたり、新しいアイデアを試したりしてみる。もし「毎日1時間」でもまだ目標が大きすぎるなら、「テキストを手に取って今日のところを開くだけ」にしてみる。それでも難しければ、「朝のコーヒーを飲み終わったらテキストを開く」と声に出して言ってみる。もう「これができない」とは言えないところまで、一度小さくしてみるのです。それならきっとできるはずです。

こんなふうに行動目標に分解し、実際にやってみて、その結果というデータを見て、必要ならやり方を変えてみる。こうしてはじめて、「やるべきこと」が「できること」に変わっていきます。これは資格試験に限らず、どんな目標にも使える方法です。

自分自身の実践:健康習慣

これは、私自身の話でもあります。「健康でいたい」——たぶん、ほとんどの方がそう思っているのではないでしょうか。ですが、「健康でいたい」というだけでは、今日何をすればいいのかは見えてきません。

行動目標に落とし込むと、こんな感じになります。「適度な運動をする」「バランスの良い食事をとる」「質の良い睡眠を守る」。さらにそこから、「適度な運動をする」をもっと具体的に、「毎日5キロ歩く」と言い換えると、やることがはっきりします。

5キロがきつければ、まずは1キロから。その1キロもきついという日は、とりあえず家の前の公園でストレッチだけしてみて、できそうなら公園の中を少し歩く。それができたら、家の周りをぐるっと1周してみる。少し先の神社の森まで、少しずつ距離を伸ばしていく。それでも本当に家から出るのが億劫なら、シューズだけでも履いてみる。それも忘れそうなら、朝目が覚めたときに「今日も歩く」とつぶやくことにする。そのためにはまず、今日も歩いている自分の姿を思い浮かべてみるとよいと思います。ここまで小さくすれば、もう「できない」とは言えません。

「達成目標」が先にある場合には、そこから行動目標を切り出す、という話をしましたが、こんなふうに小さな行動目標をまず決めて、それを地道にコツコツ続けていく、というやり方もあります。

クライアント実例:弾き語りからライブハウスへ

こんな方もいらっしゃいました。「いつか、ライブをしたい」。最初は「弾き語りのライブをしたい」というざっくりとした話でした。ですが掘り下げていくと、本当はもっと大きな夢を描いていることが見えてきました。

「『やった』と思えるのは、どんなライブが実現したときですか」とお聞きすると、「都内のライブハウスで、70人規模のワンマン企画をやりたい」という答えが返ってきました。これで、達成目標が具体的で、はっきりした形になりました。

そこから、行動目標を切り出していきます。「今月中に、弾き語りの動画をYouTubeにアップする」。そのためには、今日、今すぐにでも弾き語りを動画で撮ってみる。まずは一番小さくて、確実にできる一歩から。大きな夢と、今日の一歩。この二つがつながったときに、はじめて実際に動き出すことができるのです。

おわりに

「行動にフォーカスする」——これは、コーチングのとても大きな原則の一つです。何かを学んで知識やスキルを伸ばすのは、もちろん素晴らしいことです。ですが、それだけで終わらせず、今日一つでも、すぐにできる行動を思い浮かべて、「今日これをする」と言葉にしてみる。それだけで、景色が少し変わってくるはずです。

※ 文中でご紹介した「ある方」の事例は、個人情報保護のために多数のクライアントさんの事例から創作した「ペルソナ」さんの事例です。実在の特定のクライアントさんの例ではありません。


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