タロットと占い師(短編小説)

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占い
リサは占い師をしている。
といっても、地域のイベントで、公園でバザーがある時に、その1スペースを借りれるときに限定してだが。
リサが占い師として活動するのは、月末の日曜の10時から15時までだ。
リサは普段ファッション関連の仕事で事務員をしている。
リサはタロットを使って占いをする。
10分1鑑定で鑑定料は500円。
ワンコインという気軽さからか、相談者は大きなものではなく、小さな悩みや問題を持ってくるようでもある。
「好きな人がいるんですけど、相性はどうです?」
「先日、友人と喧嘩になってしまったのですが、仲直りはできるのでしょうか?」
「転職を考えてます。花屋の仕事ですが、私に向きますでしょうか?」
これは、大きな悩みといえば大きな悩みかもしれないが、小さな悩みといえば小さな悩みかもしれない。
もし、鑑定料が10分5000円になった場合は、小さな悩みともいえないように感じるかもしれない。
リサの場合は10分500円なので、同じ相談でも規模が小さく感じているのかもしれない。
リサに青年が質問した。
「3か月後に受験があるのですが、結果は大丈夫でしょうか?」
リサはタロットカードをシャッフルし、そして1枚のカードを引いた。
月のカードだ。
リサはこう解釈した。
「月のカードは、不安定な状況を象徴します。なぜかというと、月は満ち欠けをする不安定な存在と象徴されるからです。
これは、精神が不安とか、勉強の基盤が弱いとか、体調が安定していないなどという要因が考えられます」
「ああ、そうですか。どうしたらいいんですかね?」
「まず、自己分析をしてみてはどうでしょう。
自分の得意とする教科は何か、苦手としている教科は何かと考えてみる。
次に勉強が足りないと感じる教科に注目してみる。
そして、その教科の、どの単元が弱いか改めて分析してみては?」
「私は英語が好きなのですが、数学が苦手なんです。数学でも微分積分が苦手」
「自分の性格そのままで勉強してしまうと、英語に偏ってしまい、苦手意識の強い数学が疎かになるともいえるかもしれません」
「まぁ、気分で勉強するものを選ぶと、得意教科に傾く気がする」
「偏りは偏りで、得意分野を生むので悪いことでもないかもしれません。
ですが、偏りによって、苦手分野が生まれると、全体としてはバランスの悪くなってしまいます」
「バランスですか」
「バランスをとるには、無理のない計画を立ててみてはどうでしょうか?」
「どのように立てたらいいのでしょう?」
「週末に来週の時間割を作ってみるとかです。そして、その時間割に合わせて、自分の勉強スタイルを組み立ててみるというのはどうでしょうか?」
「一日のうち、19時に夕飯を食べ、20時から22時までは、集中して勉強に取り組むとかかな」
「それと、休養も大事です。
精神面と体力面が、頭の回転と結びつくともいえます」
「受験当日はベストな条件で臨みたいです」
「この3か月は、徹夜したり、暴飲暴食したりして、体調低下を起こさないように気を付けたほうがいいのかもしれませんね。
寝る時間を決め、身体に負担のかからない計画を立ててはいかがでしょうか?」
リサは「受験で受かるかどうか?」という答えについては「考える」が、「未来はこうである」というような「決まった未来を予言をする」ということはない。
その人の考える方向性から未来がなんとなくよめそうなときもある。
だが、それは方向性がなんとなく示されているのであって、方向性の最終地点がわかるわけでもない。

先日、リサの前にある人物が訪れた。
「私はタロットが趣味なんです。昔からタロット関連の本を読んでいるものでして」
どうやら、タロット愛好者らしい。
その人物は言った。
「10分500円ですか。その10分、私とタロットの話の相手をしてもらってもいいですか?」
その人物は、リサに10分500円を支払い、リサの時間を買うというのだ。
「はい。大丈夫です」
リサは承諾した。
「しかし、それにしても、なぜあなたは ”タロット占い” と看板を出さないで ”タロットコーナー” にしてるんです?」
リサは、廃材であった木の板を使い、自身でペイントした ”タロットコーナー” という看板を出している。
「なんとなく、タロット占いっていったら、悩み事相談みたいな重たい印象がするようで…」
リサは続けた。
「私はファッション業界ということもあり、どこにでもありそうな既存のスタイルに対しては何かと疑問を持ってしまうんです。
タロット占いではなく、タロットコーナーと称することで、占い鑑定という固定概念から少し自由になれる気がするので、こうしました」
その人物は話を続けた…
「あなたの持っているタロットを見せていただけますか?」
リサはタロットケースからカードを取り出した。
「これは、ウエイト版タロットですね。私もウエイト版タロットを持っています。
それと、マルセイユタロットも持っています」
タロットといえば、ウエイト版タロットやマルセイユタロットの二大が主流といえるだろう。
タロット占いで使われるものの多くはウエイト版かマルセイユ版で、それらは、伝統的な理論体系をもっているのだ。
「いや、ところで、タロットを知っている人間というのは ”ケルト十字スプレッド” とか ”ヘキサグラムスプレッド” という展開法をを使って占うというのが、既存のパターンだと思うのですけど、
あなたも、タロット鑑定では、そのような展開法を使うのですか?」
この会話は、タロットをある程度知っている人しかしないであろう。
スプレッドとは、カードの置き方で、ケルトクロスや、ヘキサグラムという形にカードを展開するものである。
例えば、ヘキサグラムスプレッドという展開法を使う場合、カードを使って六芒星の形をつくる。
△の形の頂点に1枚ずつカードを置いたあと▽の頂点に1枚ずつカードを置くと六芒星になるのだ。
最初の△は「一枚目(過去)・二枚目(現在)・三枚目(未来)」を示す。
次の▽は四枚目(対応策)・五枚目(環境)・六枚目(本人の状況)を示す。
そして、最後は中央に、結論となる1枚カードを置く。
形の中の置く位置に、意味が込められているのだ。
リサは言った。
「私の場合は、そのような既存の展開法を使いません。
その時、その人を前にして、自分の思いつきで、カードを引くのです。
目の前の人が何を言ったかによって、1枚・3枚・5枚・7枚・12枚といったようにカードを引く枚数が変わる。
私はその時によってカードを引く枚数が異なり、カードを置く位置が変わるのでカード全体の配置は一定してないのです」
リサはその時の状況やその日の気分でカードの引きかたや置き方が違ってしまうのだ。
その人物は言った。
「あなたは世間ではメジャーな、ケルト十字スプレッドやヘキサグラムスプレッドはあえて使わないことにしてるのですか?
なんとなく、あなたは、既存の形に徹底して反抗している面もあるように感じてしまうのですが…
もしかしたら、マイナーなほうがいい、オリジナリティが強いほうがいいと思い込んでいる節があったりして…」
リサは考えた。
自分は状況と気分でカードの引き方や置き方を変える。
その方法は、ある意味、自分のやり方でそれが自由でいいとも思っている。
だが、それだけではない。
自分はあえて、意識的に既存の形を避けているともいえる。
なんとなく人の真似事に従いたくないからだ。
「たまには、既存の形に従うのもいいんじゃないですか?」
その人物は言った。
「既存の形に従ってみる…ねぇ…」
リサは考えた。
既存の形に毎回従うのはありきたりでなんとなく暇そう、飽きそうな気もする。
だが、たまになら…
どこかにある既存の形を使ってみてもいいかもしれない。
さらにその人物は言った。
「例えば、タロットではなく、花札を使ってみては。
花札を使って、ケルト十字スプレッドで占ってみるとか」
それは、リサからすると考えたこともない発想だった。
「音楽家はそこに転がっている、石や棒も、楽器にしてしまうものだよ。
音がでれば、石は石ではなく、棒は棒でもなく、それは楽器になる。
そこにリズムができれば音楽になる。
占い師なら、花札も占い道具にできると思う。
花札を引いて偶然に出た形からも何かの印象を引き出すことができると思うけど…」
リサは考えた。
そしてシミュレーションしてみた。
「花札を使ってケルト十字スプレッドでカードを展開するのですか…
…となると、結果を示す位置に坊主とかが出たりすることもあるってことですよね?!」
占いでそんなことしたら、占い師も、相談者も、その問題も、どうでもいいようになってしまいそうだ。
ケルト十字スプレッドという展開法という形だけ、既存の法則に従い、タロットが花札になるという中身は、既存の常識にある法則を無視しているような気がするのだ。
「外の形は既存の法則に従っても、中は既存の法則に反抗することがある。または、外の形は既存の法則に反抗しつつも、中は既存の法則に従うこともある。
ファッションってそのような形のことを指したりするのでは?」
その人物は知っているのだか、知らないのだかわからないが、知ったようなことを言った。
リサは考えた。
知っているのだか、知らないのだかわからないが、知ったようなことを言うのは占い師に限ったことではないのかもしれない。


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