3CとSTP分析を個人店向けに。「誰に、何を売る店か」を決める紙1枚の手順

3CとSTP分析を個人店向けに。「誰に、何を売る店か」を決める紙1枚の手順

記事
ビジネス・マーケティング
「ターゲットを絞りましょう」

マーケティングの話では、よく聞く言葉です。
でも、個人店のオーナーほど、こう思いませんか。

「絞ったら、来てくれているお客さんが減るのでは」
「うちは来てくれる人なら誰でもありがたい」

その気持ちは自然です。

席数や枠が限られる個人店は、
ひとり欠けるだけでも売上に響きます。

ただ、「誰に来てほしい店なのか」が決まっていないと、
困ることがあります。

SNSやチラシで、何を書けばいいか毎回迷う
値段の説明も、メニューの見せ方も、なんとなくになる
近くの似た店と並べられて、価格で比べられる

この記事では、その迷いを減らすために、
3C分析とSTP分析を使います。

名前は難しく見えますが、やることは
「紙1枚に書き出して、一文にまとめる」だけです。

所要時間は、1人でやって30分ほどを想定しています。

3CとSTPは「現状の整理」と「方針の決定」
まず、2つの役割を分けておきます。

3C分析:今の状況を整理する(現状を知る)
STP分析:誰に、どう売るかを決める(方針を決める)

順番は、3Cが先、STPが後です。

マーケティングの分析は、
「環境を分析する → 戦略を決める → 具体的な施策を考える」
という流れで説明されることが多く、
3Cは最初の段階、STPは次の段階に置かれます。

家づくりにたとえると、
3Cは敷地の調査、STPは間取りの決定です。

敷地を見ずに間取りを決めると、
あとで困りやすいのと同じです。

ステップ1:3Cで現状を整理する
3Cは、次の3つの頭文字です。

Customer(お客様・市場)
Competitor(競合)
Company(自店)

書く順番は、お客様、競合、自店の順がおすすめです。

お客様の動向や競合の存在は、自分では変えられません。
先に外の状況を見てから自店を見ると、
「自分たちはこうありたい」という
思い込みに引っぱられにくくなります。

用意するのは、A4の紙1枚とペンだけです。
紙を3つに分けて書いてみてください。

3c分析.png

Customer:どんなお客様が、なぜ来ているか

大きな市場調査は必要ありません。

次の3つを、思い出せる範囲で書いてください。

今よく来てくれているお客様は、
どんな人か(年代、暮らし方、来店の目的)

そのお客様は、何に困って、何を求めて来ているか

「この人に来てもらえて良かった」と思う人は、どんな人か

ポイントは、年齢や性別だけで終わらせないことです。

「30代女性」より、「朝の忙しい時間に、手間をかけずにまとまる髪にしたい人」のように、困りごとまで書くと、あとのSTPで使いやすくなります。

Competitor:お客様が、うちと比べている相手は誰か

競合というと、大手チェーンを思い浮かべがちです。

でも、個人店にとっての競合は、
お客様が「どこにしようか」と迷うときに候補に挙がる店です。

同じエリアの似た業種の店

少し離れていても、同じ悩みに応えている店

店以外の選択肢(自分でやる、通販、家で済ませる)

書き出すのは、2〜3店で十分です。

それぞれについて、次の2つを書きます。

お客様が選ぶ理由(価格、技術、雰囲気、立地、予約のしやすさなど)

自店が負けていると感じる点と、勝てていると感じる点

SNSや口コミサイトを見るだけでも、手がかりは集まります。

ここで見ているのは、競合の欠点探しではありません。
「同じ土俵で戦わなくていい場所」を探すための作業です。

Company:自店は何ができて、何が難しいか

最後に自店です。

お客様に褒められること、リピートの理由になっていること

他店より手間をかけていること、時間をかけていること

逆に、人手・時間・予算の面でできないこと

できないことを書くのも大切です。

1〜5人の店では、全部に応えるのは現実的ではありません。
「できないこと」を先に認めておくと、
あとの選択がぶれにくくなります。

ステップ2:STPで「誰に、どう売るか」を決める
3Cで材料がそろったら、STPに進みます。

STP分析.png

セグメンテーションとターゲティング
STPは次の3つです。

Segmentation(セグメンテーション)
お客様をグループに分ける
Targeting(ターゲティング)
どのグループに来てほしいかを選ぶ
Positioning(ポジショニング)
そのグループにとって「こういう店」という立ち位置を決める

S:お客様を「困りごと」で分けてみる

3Cの Customer の欄を見ながら、
お客様を3〜4つのグループに分けます。

分け方は、年齢や性別だけに頼らないほうがうまくいきます。

来店の目的(特別な日のため/日常の整え/悩みの解決)

困りごと(時間がない/自分に合う提案が欲しい/落ち着いて過ごしたい)

来店のしかた(平日昼/仕事帰り/家族で)

名前をつけておくと、あとで見返しやすくなります。

T:今回は誰に来てほしいかを選ぶ

グループが分かれたら、
「今回、最も来てほしいグループ」を1つ選びます。

選ぶときは、次の3つの問いが目安になります。

自店の強みが活きるか(3Cの Company と重なるか)

近くに、そのグループが十分にいそうか(来店圏内で想像できるか)

競合が応えきれていないか(3Cの Competitor で手薄な部分か)

3つとも当てはまるグループがあれば、第一候補です。

ここで大切なのは、「他のお客様をお断りする」わけではない
ということです。

ターゲットを決めるのは、
「誰に向けて発信し、メニューや説明を整えるか」を決めること。
来てくれたお客様は、これまでどおり大切にして構いません。

P:一文にまとめる

最後に、ポジショニングです。

次の型に当てはめて、一文にしてみてください。

「(ターゲット)が、(困りごと)のときに、(自店ならではの理由)で選ばれる店」

競合と比べた位置を見たい場合は、2本の軸で整理する方法もあります。

ポジショニングマップ.png

たとえば「価格(手頃⇔高め)」と「提案の深さ(定番中心⇔じっくり相談)」のように、お客様が店を選ぶときの基準を2つ選んで、自店と競合を置いてみます。

軸は、お客様が実際に気にしているものを選ぶのがコツです。
自店のこだわりが軸になっていると、お客様には伝わりにくくなります。

記入例(架空の美容室)
実在の店ではなく、イメージをつかむための架空の例です。

店の前提…スタッフ2名の美容室。駅から少し離れた住宅街にある。

3C

Customer
近所に住む30〜40代の女性が多い。
「朝の準備に時間をかけられない」
「髪質が変わって、今の髪型が合わなくなった」という悩みが目立つ。

Competitor
駅前の大型サロンは予約が取りやすく、価格は手頃。
ただ、じっくり相談する時間は取りにくそう。
近所の個人店は、カラー中心の印象。

Company
カウンセリングに時間をかけている。
ただし、ひとり施術のため、同時に対応できる人数は少ない。

STP

S
①とにかく安く早く ②流行のデザイン
③髪質の変化に悩む大人 ④特別な日のスタイル

T
③を選ぶ。理由は、カウンセリングという強みが活き、
近所に多そうで、駅前店が手薄な部分でもあるため。

P
「髪質の変化で、今の髪型が合わなくなった30〜40代が、相談しながら似合う髪型を見つけられる店」

この一文が決まると、次のような判断がしやすくなります。

ホットペッパーやInstagramの紹介文に何を書くか

メニュー名を「カット」だけにするか、「髪質変化に合わせた相談カット」とするか

口コミで、どんな声を増やしたいか

飲食店でも考え方は同じです。
「近所の会社員が、昼に一人でゆっくり食べられる定食屋」
のように、誰が・どんな場面で・なぜ選ぶかを一文にします。

つまずきやすいポイント
① 絞るのが怖くて、全員を書いてしまう
→ 「今回の発信で、最初に届けたい人」と考えると決めやすくなります。あとで変えて構いません。

② 競合に大手ばかり書いてしまう
→ お客様が迷う候補は、近所の個人店や、「自分でやる」という選択肢であることも多いです。

③ 自店の強みが「丁寧な接客」だけになる
→ 「丁寧」は多くの店が言っています。「何について、どのくらい時間をかけているか」まで書くと、違いが見えます。

④ 一度決めたら変えてはいけないと思う
→ お客様の反応を見ながら、見直して構いません。3か月ごとに紙を見返すくらいで十分です。

⑤ 想像だけで書いて終わる
→ 3CのCustomerは、常連さんとの会話や、予約時のアンケートで確かめられます。「合っていそうか」を1人でも聞けると、精度が上がります。

今週やること
A4の紙を1枚用意し、3つに分けて、3Cを書く(15分)

お客様を3〜4グループに分け、来てほしいグループを1つ選ぶ(10分)

「(ターゲット)が、(困りごと)のときに、(理由)で選ばれる店」の一文をつくる(5分)

完成したら、紙を店の見える場所に貼っておくのがおすすめです。
メニュー、写真、投稿文を考えるたびに、
「これは、あの一文のお客様に届くか」と確かめられます。

まとめ

3Cは、お客様・競合・自店の現状を整理する
STPは、誰に、どんな店として選ばれるかを決める

順番は、3Cが先、STPが後

絞るのは「発信する相手」であって、来てくれるお客様を断ることではない

まずは紙1枚、30分、一文を目標にする

完璧な分析をめざす必要はありません。

「うちは、こういうお客様に、こういう理由で選ばれたい」と言えるだけで、毎日の判断が少し楽になります。
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