次の一手が決まらない個人店オーナーへ。紙1枚で店の全体像が見える、ビジネスモデル・キャンバスの使い方

次の一手が決まらない個人店オーナーへ。紙1枚で店の全体像が見える、ビジネスモデル・キャンバスの使い方

記事
ビジネス・マーケティング
Instagramを始めるべきか。
値上げはいつがいいのか。
新しいメニューを作るべきか。

やることは次々に出てきます。
でも、どれも「自分の店に合うのか」が
わからなくて、決められない。

そんな状態のときに役に立つのが、
ビジネスモデル・キャンバスです。

名前は少し堅いですが、やることはシンプルです。
自分の店の仕組みを、9つの枠に分けて紙1枚に書き出すだけ。
ビジネスモデルキャンバス.png


この記事では、1〜5人で運営しているお店を想定して、
書く順番と、各枠で自分に聞く質問をまとめました。
30分あれば最初の1枚が書けます。

ビジネスモデル・キャンバスとは
スイスの研究者アレックス・オスターワルダー氏とイヴ・ピニュール氏が考えた、事業の全体像を1枚で表すためのフレームワークです。

「フレームワーク」というのは、考えるときの型のこと。
分厚い事業計画書の代わりに、1枚の図で事業の仕組みを見られるようにしたものです。

枠は9つあります。

顧客セグメント(誰に売るか)
価値提案(その人にどんな良いことを提供するか)
チャネル(どうやって出会い、届けるか)
顧客との関係(どんな付き合い方をするか)
収益の流れ(どこからお金が入るか)
主要活動(そのために何をしているか)
リソース(何を持っているか。人、場所、技術、道具など)
パートナー(誰の力を借りているか)
コスト構造(何にお金がかかっているか)

配置にも意味があります。
中央が「価値提案」で、右側がお客様に関すること、
左側が自分の店の中のことです。

つまり、「お客様に何を渡すか」を真ん中に置いて、
右と左から整えていく図です。

個人店にとって、何が役に立つのか
大きな会社の新規事業の道具に見えるかもしれません。
でも、個人店にも相性のいい理由があります。

① 施策がバラバラになるのを防げる
SNSも値上げもメニューも、本来は同じ店の仕組みの一部です。
全体が見えていれば、「それはうちの店の価値につながるか」で判断できます。

② 「書けない枠」が見つかる
書けない枠は、今まで考えてこなかった部分です。
そこが次に考えるべきところのヒントになります。

③ 人に説明できる
スタッフや家族、相談相手に1枚見せれば、店の考え方が伝わります。

書く前の準備
紙(A4かA3)に、9つの枠を手書きで作る
付箋があれば用意する(なくても大丈夫)
完璧を目指さない

コツは3つです。

1つの枠に時間をかけすぎない。 まず9つすべてを埋める
1つの枠は3〜5個の短い言葉まで
専門用語は使わない。 自分の言葉で書く

書き直せるように、付箋か鉛筆がおすすめです。

書く順番と、各枠の問い
説明のために、想定例として「スタッフ2人の地域密着の美容室」を使います。
実在のお店ではなく、イメージしやすいように作った例です。

順番は、顧客 → 価値 → その他がおすすめです。

① 顧客セグメント|誰に来てほしいか

問い:「いちばん来てほしい人は、どんな人?」

「地域のお客様全員」では、あとの枠が書けません。
「どんなことに困っている人か」まで具体的にします。

<想定例>

30〜40代で、子育て中。美容室に行く時間がなかなかとれない女性

白髪染めを、自然に済ませたい人

絞ることを不安に感じるかもしれません。
でも、他のお客様をお断りするわけではありません。
「いちばん響かせたい人」を決めるだけです。

② 価値提案|その人に、何を渡しているか

問い:「その人は、なぜ大型チェーンではなく、うちの店を選ぶのか?」

商品名ではなく、お客様にとっての良いことを書きます。

<想定例>

短時間で、手入れしやすい髪型にしてもらえる

お子さん連れでも気兼ねなく行ける

毎回同じ人が担当してくれる安心感

ここがぼんやりしていると、
SNSも値上げもうまくいきにくくなります。
この枠がキャンバス全体の軸です。

③ チャネル|どうやって出会い、届けているか

問い:「お客様は、どこで私の店を知り、どうやって予約している?」

想定例:

予約サイト、Instagram、近所の口コミ

予約は電話とLINE

「今ある入口」を正直に書き出します。
ここで、「②の価値を、①の人に届ける入口になっているか」を確認します。
たとえば、子育て中の人に届けたいのに、入口が平日昼の電話だけだと、すれ違いが起きます。

④ 顧客との関係|どんな付き合い方をしているか

問い:「来店前と来店後、お客様とどう関わっている?」

<想定例>

次回の予約の提案

来店後のお礼メッセージ

お子さんの話など、小さな会話の記憶

新規のお客様を探す前に、
今のお客様との関係を整えるほうが、
手間が少なく済むことも多いです。

⑤ 収益の流れ|どこからお金が入っているか

問い:「売上は、何から、どんな形で入ってきている?」

想定例:

カット、カラー、トリートメントなどの施術料金

ホームケア用品の販売

書き出してみると、
「メニューが多いわりに、実際は2種類で売上の大半」
といった偏りに気づくことがあります。
ここは、自分のお店の実際の数字を見ながら書いてください。

⑥ リソース|持っているもの

問い:「価値を出すために、今あるものは?」

人、場所、技術、道具、
お客様との信頼関係、口コミなどです。

<想定例>

オーナーの技術と経験

駐車場つきの立地

キッズスペース

長く通ってくれる常連のお客様

小さなお店の強みは、意外とここに眠っています。

⑦ 主要活動|価値を出すために、欠かせない仕事は何か

問い:「②の価値を出すために、絶対に外せない作業は?」

<想定例>

施術

丁寧なカウンセリング

予約の管理と返信

「やっているけれど、価値につながっていない作業」も見つかります。
そこは、減らす候補です。

⑧ パートナー|誰の力を借りているか

問い:「お金を払ってお願いしている、あるいは協力してもらっている相手は?」

<想定例>

材料の卸会社

予約サイトの運営会社

近所の保育園やカフェ(チラシを置いてもらっている、など)

「紹介し合える近所のお店」もここに入ります。
広告費をかけられないお店ほど、
地域のつながりが大きな力になります。

⑨ コスト構造|何にお金がかかっているか

問い:「毎月、大きく出ていくお金は何?」

<想定例>

家賃

材料費

人件費

予約サイトや広告の手数料

ここでは、「減らせるか」の前に
「②の価値に必要なコストか」を見ます。
価値につながらない出費は見直し候補になります。

書き終えたら、3つだけ確認する
9つ書けたら、全体を眺めて次の3点を確認します。

① 顧客と価値提案が合っているか
「その人は、本当にこの価値を求めているか」を確認します。

② 右と左がつながっているか
お客様に約束していることを、
自分の店の中の活動やリソースで本当に支えられているか、
ということです。
たとえば「毎回同じ人が担当」という価値を約束するなら、
オーナーの予定枠が確保できているかが問題になります。

③ 収益とコストのバランスはどうか
入ってくるお金と出ていくお金が、価値の大きさに見合っているか。
値上げや新メニューを考えるときの出発点になります。

そして、書けなかった枠や、空欄が残った枠にこそ、次の一手のヒントがあります。

よくある失敗
・きれいに書こうとして、止まってしまう
最初は粗くて構いません。
まずは9つすべてを埋めることを優先します。

・書いて終わりにしてしまう
お客様の悩みや世の中の状況は変わります。
半年に一度くらい、見直す機会をつくると使いやすくなります。

・大企業の事例をそのまま真似する
Amazonのような事例は仕組みの理解には役立ちますが、1〜5人のお店にはそのまま使えません。
自分の店の言葉で書いたものが、いちばん役に立ちます。

まとめ|まず、30分
ビジネスモデル・キャンバスは、
お店の仕組みを1枚で見える形にして、
迷ったときに立ち戻る地図にするための道具です。

今日やることは、これだけです。

紙に9つの枠を作る

まず「顧客セグメント」と「価値提案」を書く

残りの枠を、完璧を目指さず埋める

書けなかった枠に印をつける

印をつけた枠が、次に考えるべきところです。
全部できなくても大丈夫です。
顧客と価値提案が書けただけでも、次の施策の判断がかなり楽になります。

さいごに
まずは、顧客セグメントと価値提案の2つだけ、今日書いてみてください。
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