商品戦略とは?売れる商品を増やすのではなく「勝てる商品構成」をつくる方法

記事
ビジネス・マーケティング
## 良い商品を開発すれば売れるのでしょうか?

「もっと性能の良い商品を開発しよう」

「競合より安い商品をつくろう」

「顧客から要望があった機能を追加しよう」

商品開発の現場では、こうした議論が頻繁に行われます。

もちろん、性能向上や機能追加は重要です。

しかし、ここで考えたいことがあります。

**そもそも、その商品は誰の、どのような課題を解決するのでしょうか?**

例えば、従来品より精度が2倍高い商品を開発したとします。

技術的には優れています。

しかし、顧客が従来品の精度で十分に満足しているなら、追加性能に対して高い価格を支払う理由はありません。

逆に、性能は従来品と同程度でも、洗浄時間を半分にできる商品なら、顧客にとって大きな価値になるかもしれません。

つまり、**技術的に優れた商品と、市場で選ばれる商品は必ずしも同じではありません。**

この違いを理解することが商品戦略の出発点です。

---

## 1. 商品戦略とは?

商品戦略とは、**どの市場の、どの顧客に、どのような価値を、どの商品で提供するかを決めること**です。

単に新商品を開発する計画ではありません。

既存商品をどう成長させるか。

どの市場へ投入するか。

どの商品を重点販売するか。

競合とどう差別化するか。

どの商品から撤退するか。

といった意思決定まで含まれます。

商品戦略で考えるべきことは、大きく5つあります。

1. **市場**:どの市場で戦うのか?
2. **顧客**:誰の課題を解決するのか?
3. **価値**:顧客にどのような便益を提供するのか?
4. **競争**:競合ではなく自社が選ばれる理由は何か?
5. **収益**:どのように利益と持続的な成長を生み出すのか?

この5つがつながって初めて、商品戦略として機能します。

---

## 2. 商品戦略と商品開発の違い

商品戦略と商品開発は混同されがちですが、役割が違います。

**商品戦略は「何を、誰のために、なぜつくるのか」を決めること。**

**商品開発は「それをどのように実現するのか」を考えること。**

例えば、ある産業機器メーカーが新しいポンプを開発するとします。

商品開発の議論では、

- 流量をどこまで高めるか
- どの材料を使用するか
- 耐圧性能をどう確保するか
- 製造コストをどう下げるか

などが中心になります。

一方、商品戦略では、

「どの業界で需要が伸びているのか?」

「顧客は既存ポンプの何に困っているのか?」

「その課題は競合商品では解決できないのか?」

「顧客はいくらなら購入するのか?」

を考えます。

技術的な検討に入る前に、**市場で勝つための仮説を立てること**が重要なのです。

---

## 3. 商品戦略の出発点は顧客課題

商品戦略で最初に考えるべきなのは、商品の機能ではありません。

顧客が抱えている課題です。

例えば、顧客から、

「もっと高精度なポンプが欲しい」

という要望があったとします。

そのまま受け取れば、高精度ポンプの開発がテーマになります。

しかし、なぜ高精度が必要なのでしょうか?

詳しく聞くと、

「流量がばらつくことで製品品質が安定しない」

という問題があるかもしれません。

さらに調べると、流量のばらつきはポンプだけでなく、配管条件や制御方法によって発生している可能性もあります。

そうなると、解決策は高精度ポンプの開発だけではありません。

制御システムの改善。

センサーとの組み合わせ。

運転条件の最適化。

なども選択肢になります。

ここで重要なのは、**顧客が求めた仕様と、顧客が本当に解決したい課題を区別すること**です。

---

## 4. STPで戦う市場を決める

顧客課題が見えてきたら、次に考えるのが市場の選択です。

ここで活用できるのがSTP分析です。

### Segmentation:市場を分ける

例えば産業用ポンプ市場を、

化学。

医薬。

食品。

半導体。

水処理。

などに分けます。

さらに医薬市場でも、

研究開発。

パイロット。

量産。

と分けることができます。

### Targeting:狙う市場を選ぶ

すべての市場を同時に攻略することはできません。

市場規模。

成長率。

顧客課題の強さ。

競争環境。

自社の技術優位性。

などから、優先市場を選びます。

### Positioning:選ばれる理由をつくる

例えば、

「高精度で安定した微量送液ができる」

という価値を明確にします。

ただし、それが競合にも提供できるなら差別化にはなりません。

**顧客にとって重要で、競合と比較して優位性のある価値**を見つける必要があります。

---

## 5. 差別化とは「性能差」ではなく「価値差」

差別化というと、競合より優れた機能を考えがちです。

しかし、顧客にとって重要でない性能を高めても、競争優位にはつながりません。

例えば、ある設備で、

競合品:洗浄時間60分。

自社品:洗浄時間15分。

だったとします。

単なる機能比較では、

「洗浄時間を45分短縮」

です。

しかし顧客にとっては、

作業時間の削減。

設備停止時間の短縮。

生産効率の向上。

人件費の削減。

といった価値があります。

つまり、商品戦略では、

**機能 → 便益 → 顧客価値**

へ変換して考えることが重要です。

---

## 6. 商品ポートフォリオを考える

商品戦略は、新商品だけを考えるものではありません。

既存商品を含めた商品全体の構成を考える必要があります。

例えば、企業には次のような商品があります。

**主力商品**

現在の売上・利益を支える商品。

**成長商品**

市場成長が期待でき、今後の売上拡大を狙う商品。

**戦略商品**

単体の利益は小さくても、新規顧客獲得や他商品への展開に貢献する商品。

**低収益商品**

売上や利益が小さく、維持負担が大きい商品。

これらを同じ基準だけで評価してはいけません。

例えば売上が小さい商品でも、その商品を入口として高収益商品へ展開できるなら、戦略的に重要です。

一方、売上が大きくても市場が縮小し、維持コストが増加している商品なら、見直しが必要かもしれません。

**商品単体の売上だけでなく、商品群全体でどのような役割を果たしているかを見ること**が重要です。

---

## 7. PPM分析で経営資源を配分する

商品ポートフォリオを考える代表的なフレームワークにPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)があります。

PPMでは、市場成長率と相対的市場シェアを軸に、事業や商品を4つに分類します。

**花形(Star)**

市場成長率が高く、相対的市場シェアも高い。

成長維持のための投資が必要です。

**金のなる木(Cash Cow)**

市場成長率は低いものの、相対的市場シェアが高い。

安定したキャッシュ創出が期待されます。

**問題児(Question Mark)**

市場成長率は高いものの、相対的市場シェアが低い。

重点投資するか、見直すかを判断します。

**負け犬(Dog)**

市場成長率も相対的市場シェアも低い。

収益性や戦略的役割を踏まえ、維持・再構築・撤退などを検討します。

ただしPPMだけで機械的に判断するのは危険です。

商品間の相乗効果や顧客獲得への貢献など、二つの軸では捉えきれない価値もあるからです。

---

## 8. 商品を増やすことが正解とは限らない

商品戦略では、商品を増やすことだけでなく、減らすことも重要です。

顧客要望へ個別対応を続けると、

商品型式が増える。

部品点数が増える。

在庫管理が複雑になる。

製造コストが上がる。

営業担当者が商品を理解しにくくなる。

という問題が発生します。

例えば100種類の商品があっても、そのうち20種類で売上の80%を生み出しているなら、残りの商品をどう扱うか検討する余地があります。

ただし、売上が少ないという理由だけで廃止してはいけません。

特定の重要顧客に不可欠な商品。

他商品への入口となる商品。

将来市場への参入に必要な商品。

などもあるからです。

**商品を増やす判断と同じくらい、標準化・統合・廃止の判断が重要**なのです。

---

## 9. BtoBの商品戦略では市場の成長段階を見る

BtoBメーカーでは、顧客の事業成長と商品戦略を結びつけることも重要です。

例えば医薬品製造の分野では、

研究開発。

↓

パイロット。

↓

商用生産。

↓

増設・別工場展開。

という流れがあります。

研究開発段階では、小流量・高精度の商品が必要かもしれません。

一方、商用生産へ移行すると、流量、耐久性、メンテナンス性などの要求が変化します。

そこで商品戦略として、

研究開発向け商品。

パイロット向け商品。

商用生産向け商品。

をどうつなげるか考えます。

重要なのは、商品を個別に販売することではありません。

**顧客の成長段階に合わせて、自社の商品群が継続的に選ばれる構造をつくること**です。

---

## 10. 商品戦略を実践する7つのステップ

商品戦略を実務に落とし込むなら、次の順序で考えます。

### STEP1:市場を理解する

市場規模、成長率、競争環境、顧客動向を調査します。

### STEP2:顧客課題を特定する

顧客の要望だけでなく、その背景にある課題を明確にします。

### STEP3:ターゲット市場を選ぶ

市場の魅力度と自社の競争力を比較し、優先順位を決めます。

### STEP4:提供価値を定義する

顧客が自社商品を選ぶ理由を明確にします。

### STEP5:商品ポートフォリオを設計する

主力商品、成長商品、戦略商品などの役割を整理します。

### STEP6:経営資源を配分する

開発費、人員、営業活動、設備投資などの優先順位を決めます。

### STEP7:成果を検証する

売上、粗利、シェア、新規顧客獲得、クロスセル、LTVなどを確認し、戦略を見直します。

---

## 11. 商品戦略でよくある失敗

商品戦略が機能しない企業には、いくつかの共通点があります。

一つ目は、**技術起点で考えすぎること**です。

「何がつくれるか」ばかり考え、「誰が必要としているか」を十分に検討していません。

二つ目は、**顧客の個別要望をそのまま商品化すること**です。

一社の課題が市場全体に共通するとは限りません。

三つ目は、**商品単体の売上だけで評価すること**です。

新規顧客獲得や将来のクロスセルなど、戦略的役割を見落とします。

四つ目は、**何をやらないか決めていないこと**です。

限られた経営資源をあらゆる市場や商品へ分散すると、競争優位を築きにくくなります。

そして五つ目は、**商品戦略と営業戦略がつながっていないこと**です。

良い商品を開発しても、どの顧客へ、どの価値を訴求して販売するかが決まっていなければ、市場で成果を生み出すことは難しくなります。

---

## まとめ|商品戦略の本質は「選択と集中」

商品戦略とは、単に新商品を開発することではありません。

**どの市場で、どの顧客に、どのような価値を提供し、どの商品で競争優位と収益を生み出すかを決めること**です。

そのためには、

市場を理解する。

顧客課題を発見する。

ターゲットを選ぶ。

差別化する。

商品ポートフォリオを設計する。

経営資源を配分する。

という一連の意思決定が必要です。

ここで最も重要なのは、**「何をするか」と同時に「何をしないか」を決めること**です。

あらゆる顧客の要望に応え、あらゆる市場へ参入し、あらゆる商品を維持しようとすれば、経営資源は分散します。

逆に、顧客課題が明確で、自社が競争優位を築ける市場へ資源を集中できれば、限られた経営資源でも成果を生み出せる可能性があります。

そして、もう一つ重要なことがあります。

**商品戦略は、商品から考えるのではなく、顧客から考える。**

「どんな商品を開発できるか?」

ではなく、

「どんな顧客課題を解決すべきか?」

「その課題を解決するために、どんな商品が必要なのか?」

「競合ではなく自社が選ばれる理由は何か?」

と考える。

商品戦略の本質は、商品を増やすことではありません。

**顧客に選ばれる理由を明確にし、勝てる市場へ経営資源を集中させること。**

それが、持続的な成長を実現する商品戦略の基本です。

---

## 要約

商品戦略とは、どの市場のどの顧客に、どのような価値を、どの商品で提供するかを決める戦略です。商品開発が技術や仕様を具体化する活動であるのに対し、商品戦略は市場選択、顧客課題、差別化、商品ポートフォリオ、収益性までを含む意思決定です。STP分析で戦う市場を選び、顧客価値に基づいて差別化し、PPMや販売データを参考に経営資源を配分します。特にBtoBでは、個別要望への対応だけでなく、複数顧客に共通する課題や研究開発から量産への展開可能性を見極めることが重要です。商品戦略の本質は、商品を増やすことではなく、選ばれる理由をつくり、勝てる市場へ経営資源を集中させることです。

---

## ハッシュタグ

#マーケティング #商品戦略 #商品企画 #商品開発 #プロダクトマネジメント #STP分析 #PPM分析 #差別化戦略 #BtoBマーケティング #経営戦略
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す