商品を改良しているのに、売上につながらない。
顧客の要望に応えているのに、競合との差が伝わらない。
そんなときに確認したいのが、「誰に、どんな価値を提供する商品なのか」という商品戦略です。
商品戦略では、対象とする顧客、優先して解決する課題、提供する価値を明確にします。その方針を、開発や価格、品ぞろえ、販売方法の判断につなげていきます。
今回は、その出発点となる「選ばれる理由」の考え方を紹介します。
**機能が増えても、購入の決め手になるとは限らない**
商品を改良するとき、私たちは機能や性能に目を向けがちです。
もっと速くする。
もっと高精度にする。
使える条件を広げる。
こうした改良は、顧客が重視する課題の解決につながれば価値になります。
例えば、製造現場で使う装置を考えてみましょう。
処理速度を高めても、現場が困っているのが「毎日の清掃に時間がかかること」であれば、購入の決め手にはなりにくいかもしれません。
その現場では、分解しやすさや洗いやすさのほうが重要な可能性があります。
機能の価値は、使う人や使う場面との関係で決まります。
**顧客の要望を聞いたら、その背景も確認する**
顧客から「もっと小さくしてほしい」と言われたら、まず何を確認するでしょうか。
設置場所が狭いのか。
持ち運びに困っているのか。
周辺設備に干渉するのか。
点検のための空間が足りないのか。
同じ要望でも、背景にある課題は異なります。
持ち運びの問題なら、軽量化や取っ手の追加で解決できるかもしれません。点検の問題なら、部品の配置を変える方法も考えられます。
「小さくしてほしい」という言葉から、困っている場面まで掘り下げることで、解決方法の選択肢が広がります。
**選ばれる理由を考える三つの問い**
商品戦略の出発点として、次の三つを整理してみましょう。
①誰に届けるのか
「製造業向け」だけでは、顧客の姿が広すぎます。
例えば、「少人数で複数の設備を管理する現場担当者」と具体化すると、作業負担や保守のしやすさなど、確認したい課題が見えてきます。
②どんな課題を優先するのか
顧客の困りごとを、すべて解決するのは難しいものです。
問題が起きる頻度、時間や費用への影響、現在の対処方法を確認し、優先する課題を選びます。
要望の件数だけでなく、放置した場合の影響も見ることが大切です。
③どんな価値で選ばれるのか
性能、操作のしやすさ、清掃、導入、保守、供給の安定性など、価値の候補はさまざまです。
その中から、対象顧客が特に重視し、自社が継続して提供できる価値を明確にします。
**優先する価値が、機能追加の判断軸になる**
例えば、「少人数の現場で、簡単に扱えること」を重視する商品なら、新機能を加える際に、操作が複雑にならないかを確認できます。
高機能になっても、覚えることや設定作業が増えれば、目指す価値を弱める可能性があるからです。
また、顧客にとって魅力的でも、開発・生産・サポートの負担が大きすぎれば、事業として続けることが難しくなります。
顧客の価値、自社の強み、収益性を結び付けて考える必要があります。
**まずは商品の価値を一文にする**
自社の商品を、次の形で説明してみてください。
「この商品は、〇〇に困っている△△に、□□という価値を提供する」
例えば、
「この商品は、日々の清掃に時間がかかっている少人数の製造現場に、短時間で洗浄できる価値を提供する」
この一文があると、必要な機能や伝えるメッセージを検討しやすくなります。
ただし、最初は仮説です。
実際に清掃へ時間がかかっているのか。どの作業が負担なのか。改善のために商品を変更する意向があるのか。
顧客への確認を通じて、一文の確かさを高めていきましょう。
**まとめ**
商品戦略の出発点は、誰の、どんな課題を優先し、どんな価値で選ばれるかを決めることです。
その方針が、機能、価格、品ぞろえ、販売方法の判断をつなぎます。
次の改良案を考える前に、「この商品は何を理由に選ばれるのか」を一文で書き出してみませんか。
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