老人ホームは「月額○万円」だけで決めてはいけない厚労省資料から読む、契約前に確認したい費用・重要事項・退去条件

老人ホームは「月額○万円」だけで決めてはいけない厚労省資料から読む、契約前に確認したい費用・重要事項・退去条件

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老人ホームは「月額○万円」だけで決めてはいけない
厚労省資料から読む、契約前に確認したい費用・重要事項
老人ホームを探すとき、最初に目に入るのは月額費用だと思います。
月額12万円。15万円。20万円。
食事付きでこの金額なら払えそうだ。年金と貯金を合わせれば何とかなる。施設もきれいで、職員の感じも悪くない。
そう考えて、入居を決めることもあるでしょう。

ただ、老人ホームの費用は、ホームページに大きく表示されている「月額○万円」だけでは分かりません。
介護が必要になったら、いくら増えるのか。
病院への付き添いは料金に含まれているのか。
外出や散歩の付き添いはどうなのか。
おむつ代や医療費は別なのか。
退去するときには、何を負担するのか。
介護度が上がっても、そのまま住み続けられるのか。
こうしたことは、入居してから初めて問題になる場合があります。

2026年9月18日、厚生労働省は「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」の参考資料として、「有料老人ホームの現状と課題について」を公表しました。
158ページにわたり、施設の類型、入居者像、料金、苦情、情報公開、紹介事業、指導監督など、有料老人ホームをめぐる現状が整理されています。
この資料を読んでいくと、老人ホームの契約前に確認しておきたいポイントが見えてきます。

「月額費用」は、実際に毎月払う総額とは限らない
まず気になるのが、老人ホームの月額費用です。
厚生労働省資料に掲載された2025年の調査では、月額費用の最多価格帯は、介護付き有料老人ホームでは「30万円以上」、住宅型有料老人ホームでは「10~12万円未満」、特定施設ではないサービス付き高齢者向け住宅では「12~14万円未満」とされています。
ただし、ここでいう「月額費用」には重要な注意点があります。

資料では、
家賃
共益費
基本サービス費
食費・光熱水費
の合計を月額費用としており、介護サービスや医療サービスの自己負担分は含まれていません。

つまり、「月額12万円」と表示されている施設でも、実際に毎月支払う総額が12万円で済むとは限りません。
介護保険サービスを利用すれば、その自己負担があります。
医療機関を受診すれば、医療費もかかります。
さらに施設によっては、おむつ、日用品、洗濯、通院介助、外出支援などが別料金になっている場合があります。

そのため、契約前には、
「月額はいくらですか」
だけではなく、
「この金額には何が含まれていて、何が含まれていないのですか」
と確認する必要があります。
似たような質問ですが、意味はかなり違います。
「介護付き」と「住宅型」では仕組みが違う
老人ホームの費用を分かりにくくしている理由の一つが、施設には複数の類型があることです。

大きく見ると、介護保険法上の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた介護付き有料老人ホームと、指定を受けていない住宅型有料老人ホームでは、介護サービスの仕組みが異なります。
介護付き有料老人ホームでは、ホームが介護保険サービスを包括的に提供します。
一方、住宅型有料老人ホームでは、必要に応じて訪問介護、訪問看護、デイサービスなどの外部サービスを利用する形が基本です。
さらに、サービス付き高齢者向け住宅もあります。
その中には、有料老人ホームに該当するものもあります。
同じ「高齢者向けの住まい」に見えても、住居費と介護サービス費がどのように組み合わされるかは同じではありません。

たとえば、
A施設 月額13万円
B施設 月額18万円
と並んでいても、それだけでA施設のほうが実際に5万円安いとは判断できません。
本人の介護度。
利用する介護サービス。
医療の必要性。
自費サービス。
こうしたものまで含めなければ、実際の負担は見えてきません。

契約前に確認したい「重要事項説明書」
では、料金やサービス内容は何を見れば確認できるのでしょうか。
パンフレットやホームページだけでは十分ではありません。
重要な資料の一つが「重要事項説明書」です。
厚生労働省資料では、有料老人ホームの設置者には、提供する介護などの内容、費用負担の額、そのほか入居契約に関する重要事項を開示することが求められています。

さらに、「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」では、入居希望者が契約内容を十分理解できるよう、契約締結前に十分な時間的余裕をもって、重要事項説明書と実際の入居契約書について説明することとされています。
ここで大切なのは、重要事項説明書は「契約する日に初めて見る書類」ではないということです。
標準指導指針では、入居相談があった際に交付するほか、求めに応じて交付することとされています。
また、重要事項説明書には、
「事業者が運営する介護サービス事業一覧表」
「入居者の個別選択によるサービス一覧表」
を添付することも示されています。
契約当日に説明を聞きながら初めて読むよりも、できれば事前に確認しておきたい資料です。

苦情事例を見ると、契約前に聞くべきことが見えてくる
厚生労働省資料には、全国有料老人ホーム協会に寄せられた苦情相談の事例も掲載されています。
これを見ると、契約前に確認しておきたいことが具体的に分かります。

たとえば、母親がホームの協力医療機関ではない病院へ通っていたところ、ホームから通院介助を提供しないと言われたという相談があります。
住宅型有料老人ホームへ住み替える際、ホームが指定したケアマネジャーを利用するよう言われたという相談もあります。
また、両親が散歩をするとき、以前は施設職員が付き添っていたのに、今後は自費になると言われたという事例も掲載されています。

費用についても相談があります。
入居時に、退去時のクリーニング費用は約3万円と口頭で説明されていたものの、実際には7万9,000円を請求されたという事例です。
内訳には、クリーニング代1万5,000円、クロス張り替え費用4万9,600円などが含まれていました。

別の事例では、入居から3カ月で退去した際、敷金から5万円のハウスクリーニング代が差し引かれたものの、相談者によれば明細が示されなかったとされています。
もちろん、これらはあくまで「相談として寄せられた内容」です。
資料に掲載されているだけで、施設側の違法性や法的責任が確定したわけではありません。
ただ、契約前に何を確認すればいいのかを考える材料にはなります。

たとえば、
「通院介助は基本料金に含まれますか。それとも自費ですか」
「外出や散歩の付き添いはどのような扱いですか」
「現在無料のサービスが、将来有料になる可能性はありますか」
「退去時のクリーニング代や原状回復費はどのように決まりますか」
といったことです。

トラブルが起きてから契約書を読むより、起こりそうな場面を想像しながら契約前に確認するほうが安心です。

契約前に確認しておきたい8つの項目
老人ホームの契約前には、少なくとも次のような項目を確認しておくとよいでしょう。
1.月額料金に何が含まれているか
家賃、食費、管理費だけでなく、介護保険自己負担、医療費、おむつ、日用品、洗濯、通院介助、外出付き添いなど、別料金になるものを確認します。
2.「無料」「基本サービス」の内容
無料、あるいは基本料金に含まれると説明されたサービスが、どの書類に記載されているのか確認します。
料金改定やサービス変更の条件も見ておきたいところです。
3.介護度が上がった場合の費用
現在より介護が必要になった場合、どの程度費用が増える可能性があるのか確認します。
現在の居室に住み続けられるのか、住み替えが必要になる場合があるのかも重要です。
4.医療ニーズが増えた場合の対応
夜間の職員体制、看護体制、協力医療機関との関係などを確認します。
本人の状態が変化したとき、どこまで対応できるのかを知っておく必要があります。
5.介護サービス事業者を選べるか
ケアマネジャー、訪問介護、デイサービスなどを自分で選べるのか確認します。
施設と同一法人や関連法人のサービスを利用することが前提になっていないかも確認したいところです。
6.契約解除や退去の条件
長期入院、認知症の進行、医療行為の必要性などによって、退去を求められる場合があるのか確認します。
7.退去時の費用
原状回復、クリーニング、敷金精算などについて、誰がどこまで負担するのか確認します。
8.入居一時金や前払金
前払金がある場合には、償却方法、途中退去時の返還額、保全措置について確認します。

厚生労働省資料では、2024年6月30日時点で前払金を受領していた有料老人ホーム2,317施設のうち、23施設で必要な保全措置が講じられていなかったとされています。
割合としては大きく減少していますが、保全措置がなければ、施設の事業継続が困難になった場合に前払金の残額を返還できなくなる可能性があります。
もちろん、すべての施設に問題があるという意味ではありません。

問題を避けるために、契約前に確認しておく項目の一つです。
「紹介された施設だから大丈夫」とは限らない
老人ホーム探しでは、無料の紹介会社を利用するケースもあります。
紹介会社には、多くの施設から候補を絞ったり、見学を調整したりする役割があります。

その一方で、ビジネスモデルも知っておいたほうがよいでしょう。
厚生労働省資料に掲載された高齢者住まい事業者団体連合会の調査では、紹介料1件当たりの平均額は21.5万円でした。
20万円台が約半数を占め、紹介料の決め方について47.9%が「ホームごとに介護度や医療必要度等を考慮して決めている」と回答しています。
また、一部で高額な紹介料をめぐる問題が確認されたことから、厚生労働省は有料老人ホーム設置運営標準指導指針を改定しています。
介護度や医療必要度などに応じた手数料設定や、高額な手数料と引き換えに優先的な紹介を求めることについて、留意事項が設けられています。
これは、「紹介会社が紹介する施設は信用できない」という話ではありません。

紹介会社から紹介された施設が、本人に合う施設であることも当然あります。
ただ、利用者が無料で利用している場合でも、施設側から紹介会社へ紹介料が支払われる仕組みがあることは知っておいたほうがよいでしょう。

誰が誰から対価を受け取る仕組みなのかを理解したうえで、最後は自分でも契約条件を確認する。
そのくらいの距離感がよいと思います。

公開情報だけでも、かなり調べられる
実は、老人ホームについて公開されている情報は少なくありません。
老人福祉法では、有料老人ホームの事業者が運営状況などを都道府県等へ報告し、自治体側が利用者の施設選択に役立つよう公表する仕組みがあります。
自治体によって公開方法は異なりますが、施設一覧だけでなく、重要事項説明書そのものを公開しているところもあります。

厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」でも施設情報を検索できます。
ただし、掲載状況や検索のしやすさには差があり、情報公表の充実は厚生労働省資料の中でも課題として扱われています。
そのため、ホームページの写真と料金表だけを見て決める必要はありません。
施設の公式資料。
自治体が公開している資料。
重要事項説明書。
契約書。
料金表。
介護サービス情報。
こうした資料を重ねて見ていけば、かなり具体的なところまで確認できます。
一方で、問題もあります。

資料が長いことです。
重要事項説明書だけでも数十ページになることがあります。
そこに契約書、料金表、管理規程、介護サービスの資料まで加わります。
しかも老人ホームを探している家族は、病院から退院期限を示されていたり、仕事をしながら親の施設を探していたりする場合もあります。
制度として情報が公開されていても、
「普通の家族が簡単に比較できる」
とは限りません。
情報公開と、実際の意思決定との間には、まだ大きなギャップがあります。
本当に確認したいのは「今いくら」だけではない
老人ホームの契約で大切なのは、
「現在の月額はいくらか」
だけではないのだと思います。

今は自立に近くても、数年後には介護が必要になるかもしれません。
歩けている人が車いすになることもあります。
通院回数が増えるかもしれません。
認知症が進むこともあります。
そして最後には、退去や看取りの問題も出てきます。
老人ホームは、ホテルのように一泊の料金だけを比べて終わるサービスではありません。
本人の状態が変化する中で、長期間利用する可能性のある住まいです。
だから契約前には、
「今いくら払うのか」
と同時に、
「状態が変わったとき、何が変わるのか」
を確認しておいたほうがよいでしょう。
どんな施設にも、できることとできないことがあります。
完璧な老人ホームを探す必要はありません。
大切なのは、契約する前に、
何をしてもらえるのか。
何が別料金なのか。
どのような場合に料金が変わるのか。
どこまで住み続けられるのか。
退去するときにはどうなるのか。
を、できるだけ把握しておくことです。

「そんな話は聞いていなかった」を完全になくすことは難しいかもしれません。
それでも、重要事項説明書や契約書を契約前に一度しっかり確認するだけで、分かることはかなりあります。

参考資料
厚生労働省
「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会(第9回)」
2026年9月18日
厚生労働省
「有料老人ホームの現状と課題について」
第9回検討会・参考資料3
厚生労働省
「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」
第9回検討会・参考資料2
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