はじめに
「敷居が高い」「役不足」「失笑する」
――どれも日常でよく耳にする言葉ですが、実はこれらすべて、文化庁の「国語に関する世論調査」で、本来の意味とは違う使われ方をしている人の方が多いと判明した言葉です。
言葉は生き物なので、使われ方が変化すること自体は自然なことですが、せっかくなら本来の意味も知ったうえで、意識的に使い分けられるようになりたいものです。
今回は、そんな「実は誤用されがちな日本語」を、文化庁の調査データとともに8つ紹介します。あなたはいくつ、正しい意味を知っていたでしょうか。
受験生の方向けに★マークを付しています。
このマークがついている用語は受験でも頻出です!
確認しておきましょう!
①★敷居が高い
本来の意味は「相手に対して不義理をしてしまっていて、行きにくい」ということ。
「高級すぎて入りにくい」という意味で使う人が多いですが、これは誤用です。
文化庁の調査では、令和元年度の時点で本来の意味を選んだ人はわずか29.0%、誤用の意味を選んだ人は56.4%で、平成20年度の42.1%対45.6%と比べても年々誤用が広がっていることが分かります。
②★役不足
本来の意味は「本人の力量に対して、役目が軽すぎること」。
実力者が簡単すぎる仕事を任されたときに使う言葉です。ところが「自分の力不足で役目が果たせない」という正反対の意味で使う人が非常に多く、令和6年度の調査では本来の意味を選んだ人が45.1%、誤用の意味を選んだ人が48.9%と、ついに逆転してしまいました。
ちなみに、「自分の力不足で役目が果たせない」は「力不足」です。
例えば、責任が自分には軽すぎる仕事の場合は
「自分にとってこの仕事は役不足だ」
逆に自分には責任が重すぎる仕事の場合は
「自分はこの仕事をこなすのに力不足だ」
となります。
③★失笑する
本来の意味は「こらえきれず吹き出して笑ってしまうこと」。
しかし「笑いも出ないくらいあきれる」という意味で使われることが多く、平成23年度の調査では、本来の意味を選んだ人27.7%に対し、誤用の意味を選んだ人は60.4%にのぼりました。
④★さわり
本来の意味は「話や歌などの要点、聞かせどころ」のこと。
「話の最初の部分」という意味で使われがちですが、誤用です。
正しい意味を選んだ人は36.1%にとどまり、53.3%の人が誤った意味を選んでいます。
⑤他山の石
本来の意味は「他人の誤った言動も、自分の行いを正すための参考になる」ということ。
良い手本という意味で誤用されがちですが、正答率はわずか30.8%でした。
⑥世間ずれ
本来の意味は「世間を渡り歩くうちに、ずる賢くなっていること」。
「世の中の常識から外れていること」だと思っている人が多いですが、誤用です。
正答率は35.6%にとどまります。
⑦ぞっとしない
本来の意味は「面白くない、感心しない」ということ。
「ぞっと」という音の印象から「恐ろしくない」という意味だと誤解されがちですが、今回紹介する中でもっとも正答率が低く、わずか22.8%でした。
もしかしたらZ世代、α世代の方は聞いたことすらないかもしれませんね。
⑧★煮詰まる
本来の意味は「議論や意見が十分に出尽くして、結論が出せる状態になること」。
「行き詰まって結論が出ない」という正反対の意味で使われがちですが、この言葉に関しては51.8%が本来の意味を選んでおり、今回紹介した中では数少ない「まだ正しい意味の方が優勢」な言葉でした。
おわりに
こうして見ると、私たちが「なんとなく」使っている言葉のかなりの部分が、実は本来の意味とは違う形で定着していることが分かります。
言葉は時代とともに変化するものなので、誤用が絶対に悪いというわけではありません。
ただ、本来の意味を知ったうえで使うのと、知らずに使うのとでは、言葉に対する解像度が大きく変わってきます。
こうした一つひとつの言葉への感度は、実は現代文の読解や小論文の説得力にもつながっていきます。
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