― 農業機械を使う農家さんの特別加入 ―
農業労災の特別加入制度には、3つの区分があります。
前回の第3章では「特定農作業従事者」についてお話ししました。
今回は、2つ目の区分。
「指定農業機械作業従事者」についてご紹介します。
名前は少し難しそうですが、農業機械を使って作業する農家さんに関係する制度です。
まずは図解をご覧ください。
🌱① 指定農業機械作業従事者とは?
農業機械を使用して農作業を行う自営農業者などが、一定の条件を満たすことで労災保険に特別加入できる制度です。
対象となるのは、厚生労働大臣が指定した農業機械を使用して行う、土地の耕作・開墾や植物の栽培・採取の作業です。
農業機械なら何でも対象になるわけではありません。
使用する機械の種類と作業内容がポイントになります。
🌱② どんな農業機械が対象になるの?
代表的なものをご紹介します。
トラクター・動力耕うん機
コンバインなどの自走式収穫機
自走式田植機
動力草刈機
チェーンソー(対象となる農作業で使用する場合)
トラックなどの自走式運搬機械(対象となる農作業で使用する場合)
このほかにも、指定されている機械があります。
また、農業専用に製造された機械でなくても、指定された機械の種類に該当する場合があります。
ただし、機械が指定されていることだけで、すべての作業中の事故が補償されるわけではありません。
実際の作業内容や事故の状況などによって判断されます。
🌱③ 加入できる人は?
基本的には、指定された農業機械を使用して対象となる農作業を行う自営農業者です。
労働者に該当しない家族従事者なども、対象となる場合があります。
ここで覚えておきたいのが、前回ご紹介した「特定農作業従事者」との違いです。
特定農作業従事者には、農業経営の規模などに関する要件があります。
一方、指定農業機械作業従事者は、農業経営の規模にかかわらず、指定された機械を使って対象となる農作業を行うことが基本的な要件です。
加入には、特別加入団体を通じた手続きが必要です。
💡 ここでひとつ、覚えておきたいこと
前回ご紹介した「特定農作業従事者」と、今回の「指定農業機械作業従事者」。
実は、加入条件だけでなく、労災保険の補償対象となる作業の範囲にも違いがあります。
例えば、農業機械を使った作業や、家畜の世話をしているときの事故など。
どちらの制度に加入しているかによって、補償の対象となる作業が異なります。
「加入しているから、すべての農作業中の事故が補償される」というわけではありません。
この違いはとても大切なので、今後のコラムで詳しくご紹介したいと思います。
🌱④ 農業機械の事故に注意!
私は以前、農業労災の事務組合で、農作業中の事故対応に携わっていました。
その中でも印象に残っているのが、トラクターの横転事故です。
傾斜地や田畑への出入り口などでトラクターが横転し、重大な事故につながったケースがありました。
農地の状態は、天候によって変化します。
雨が降れば、畔(あぜ)の地盤が緩むこともあります。
昨日は安全に通れた場所でも、今日も同じ状態とは限りません。
長年作業している慣れた土地だからこそ、油断しないことが大切です。
農業機械は作業を効率化してくれる一方で、使い方や作業環境によっては重大な事故につながる危険性があります。
日頃から安全を心がけるとともに、万が一の事故に備えて、労災保険の特別加入制度について知っておくことも大切だと思います。
🌱⑤ まとめ
指定農業機械作業従事者は、指定された農業機械を使って農作業を行う自営農業者などを対象とした特別加入制度です。
大切なのは、
「どんな機械を使って、どんな作業をしているか」
ということ。
ご自身の農作業が対象になるかどうか、加入を検討する際には特別加入団体などに確認してみてください。
次回は、農業労災の特別加入制度、3つ目の区分。
「中小事業主等」についてご紹介します。
農業法人や従業員を雇っている農家さんにも関係するお話です。
🌷 このブログを書いた人
Sato_coco
JA職員として農業労災の事務組合業務に従事し、特別加入の手続きや農作業中の事故対応などを経験。その後、社会保険労務士法人で労災申請業務に携わりました。これまでの実務経験をもとに、労災保険の制度や手続きを、できるだけわかりやすくお伝えしています。
※本記事は制度の一般的な説明です。個別の事故について労災保険の給付対象となるかどうかは、労働基準監督署が判断します。
📚 制度の確認資料
厚生労働省「農業者のための特別加入制度について」(令和7年1月版)
農林水産省「農業者のための労災保険の特別加入制度」(2026年10月15日確認)
厚生労働省「指定農業機械の範囲に関する通達」(平成27年3月25日)