これは全て地方の中小企業EC運営者のリアルです。
世間の求人票やSNSのイメージを見ていると、「EC運営=おしゃれなWEBショップで、最新のマーケティングを駆使して、ときにはインフルエンサーのように華やかに売上を作っていく仕事」――そんな華やかな勘違いをしている人が後を絶たない。(そんなことないかもしれないけど)
もしあなたが「自分のセンスで自己表現したい」「インフルエンサーみたいにチヤホヤされたい」という動機でEC業界に入ろうとしているなら、一度立ち止まったほうがいい。(これは本当に!)
ECの本質は、自己表現やアートではなく、商売・数字・流通という極めて実利的な仕組みの最適化でしかないからだ。
今回は、数々の現場を経験し、最後は会社とバチバチにやり合って「喧嘩別れ」で去っていった筆者が、誰も語らないEC業界の本当のリアルと、生き抜くための条件を言語化する。
0. 「新卒の配属ガチャ」で放り込まれるか、「転職の意思」で飛び込むか
まず大前提として、あなたが「会社の配属ガチャで突然『EC課』や『通販事業部』に放り込まれた新卒」なのか、それとも「自らの意思でキャリアチェンジを狙う転職者」なのかによって、この業界への向き合い方はガラリと変わる。
新卒で配属された場合: 自分の意志とは無関係に、ある日突然、数千アイテムや泥臭い受発注の修羅場に放り込まれる。
最初は「なんでこんな地味な仕事を……」と絶望するかもしれないが、強制的にビジネスの基礎体力と商売の全体像が体に叩き込まれるため、結果的にその後のビジネスパーソンとしての生存率を爆上げする特効薬になり得る。
転職で飛び込む場合: これまでの前職でのスキル(営業、WEB制作、数字管理など)をどうECの現場に持ち込むか問われる。
即戦力としての結果を求められる分、甘えが許されないシビアさがある。
どちらの立場で入るにせよ、事前の幻想と現実のギャップに押しつぶされないための覚悟が必要だ。
でも、と言うか、そのうち面白くなってくるのは間違いない。
1. 労働環境のリアル:休期の構造と、予想外の「転勤」
まず、労働環境のホワイトさやハードさは、「BtoB(企業間)」か「BtoC(個人向け)」かで大きく分かれる。
BtoB(企業相手のEC): 基本は会社のカレンダー通り。取引先も土日祝が休みなので、お盆や年末年始も含めてしっかり休める。
ちなみに、一般的には「ECに転勤なんてないはず」と言われがちだが、筆者の場合はなぜか普通に転勤があったりもした(笑)。
ただ、全体的な構造としては非常に安定的だ。
BtoC(一般消費者向けEC): 世間が休みの土日祝日や深夜こそが書き時になるため、土日出勤のシフト制や、セールのたびに休日返上で対応に追われるケースが多くなる。
普段の日常業務においては労務管理の目が厳しくなり、「残業は基本NG。するなら必ず申請」とホワイト化が進んでいる。
昔のような無法地帯ではない。(昔がどんだけいい加減かわかる)
ただし、それは「平時の話」だ。
誰もやったことがない「ゼロからの立ち上げ期」やその準備段階においては、個人の執念と猛烈なオーバーワークで突破するしかない時期もある。
実際に筆者も、文字通り没頭する勢いで月80時間の残業をこなし、インフラや業務フローを築き上げた。
ここを甘く見ていると、最初の数ヶ月でギャップに苦しむことになる。
2. 年収とキャリアのリアル:堅実な日本企業の延長線上
「ネットショップの運営」というと、なんだか最先端のIT企業っぽくて高給取りのイメージがあるかもしれないが、実態はもっと手堅い。
平社員のうちは日本の平均年収ラインに落ち着き、そこから主任、課長へとステップアップしていく中で、600万〜700万円あたりが現実的なキャリアの天井、あるいは目指せるラインになってくる。(あくまで個人の感想)
個人の裁量でいきなり億を稼ぐ世界ではなく、あくまで泥臭い日本型組織の給与体系の延長線上にある。
アマゾン本部で働くとか超一流の大手企業のEC担当ならもっと上はあると思うけど、私はそこにいたことがないのでなんとも言えないが、そうであって欲しいな。
夢があるね。
ここで勘違いしてはいけないのは、「会社の看板」と「自分の実働」を混同することだ。
会社という土台が剝がれた瞬間、自分に何が残るのか。
そこに気づいていない人間は、どこに行っても使い捨ての駒で終わる。
別にこれってECだからとか関係ない話ではあるが。
3. 社内政治の裏側:「外野」と「現場」のパワーバランス
ECをやりたがる人間は、社内にもうようよいる。(ウヨウヨはいないかも)
特に「ITが好き」「分析が好き」という営業の主任、マーケティングなどが、現場の苦労も知らずに不定期で勝手な分析データや資料を部長に送りつけてきたりする。
現場で数千アイテムのエクセル突合に追われ、配送トラブルの火消しに走っている人間からすれば「外から勝手に口出すなよ。調子にのんなよ!」と内心突っ込みたくなる瞬間だ。 ……だが、不思議なもので、部長はその営業の主任が出してきた資料を妙に参考にしたりする。
営業は営業で「商品を一番わかっている」という別の正義があるからだ。
この現場の実働部隊と、外から口を出す人間との絶妙なパワーバランスと社内政治も、ECの会社ではよくある日常の一コマである。(よくはないか)
4. エージェントの誘いから始まり、最後は「別の道」へ
そもそも筆者がこの業界に足を踏み入れたのは、元々WEB制作のディレクター、デザイナー、コーダー、アプリ開発(Android)のディレクターやUIデザイン、ちょっとした開発までマルチにこなしていたIT職人だった頃、転職エージェントからの一言だった。
「ネットショップ始める会社あるんだけど、興味ない?」
軽いノリで飛び込んだその世界は、蓋を開けたら数千アイテムと受発注の連続だった。
しかし、これまでのWEBや開発のバックグラウンドを総動員して、すべてのシステムと業務フローを構築し、会社に莫大な利益をもたらした。
(まあある程度は評価されたのかもしれない!?)
……そして最後は、色々な問題が生じて(笑)「別の道」を歩むことになった。
転落どころか、すべてのスキルを血肉にできた最高の経験だったが、組織にしがみつく生き方とは違う方向に舵を切った。
人生何があるか分からない。
5. 将来性と、これから「自分の意思」で挑む者へ:必要な戦闘力リスト
今後の市場全体を見ても、ECは伸び続けている。
特に「BtoB-EC市場」は、BtoCの派手なモールの陰に隠れがちだが、企業間の受発注や資材調達のデジタル化に伴い、圧倒的に巨大でかつ手堅い成長を続けている領域だ。
もしあなたが、偶然や勢いではなく、自分の意思で「EC業界に飛び込みたい」と本気で願うなら、以下の「現実的な戦闘力」を備えているか問うてほしい。
基本の数字・公式・計算
PV、CVRといった用語はもちろん、売上の公式や商売で使う最低限の計算が頭に入っているか。
WEB・デザイン・コードの基礎
WEBマーケティング、WEB広告の構造を理解し、画像加工が自分で手際よくでき、HTML/CSS/JSを軽く触ってレイアウトを直せる技術。
動画編集の対応力
今後のECに動画は必須。編集ソフトを使って、カット、テロップ入れ、素材の繋ぎ、簡単なエフェクトが自分で完結できるか。
ビジネス・経済のフレームワーク
ABC分析、ロングテール、LTVなど、商売の構造を読み解くための最低限の知識。
「ゼロから作るか、出来上がった仕組みに入るか」の見極め
これから入る会社が「ゼロから仕組みを作り上げるフェーズ」なのか、それとも「すでにガチガチに出来上がっている巨大な仕組みのパーツを回すフェーズ」なのかで、身につくスキルの深さは全く違う。
カオスの中から全体を組み上げる修羅場をくぐり抜けるか、特定のパーツを極めるか、自分のキャリアの現在地を意識する必要がある。
自分の主戦場の選択
「BtoC(個人向けのお祭り騒ぎ)」と「BtoB(巨大で手堅いマーケット)」のどちらを主戦場にするのか。
おわりに
会社の看板が剥がれた瞬間に何も残らない「自称マーケター」や「自己表現がしたいだけのアーティスト気取り」は、この業界の荒波ですぐに淘汰される。
しかし、自らの手で業務フローを引ける、**「普遍的なスキルを持った本物の実務者」**になれば、BtoBであれBtoCであれ、どこに行っても引く手あまたの存在になれる。
あなたは、どんなフェーズの現場を選び、どんなスキルを武器にこの戦場に挑むだろうか?