個人事業主やフリーランスの場合、自宅を仕事場にしていたり、プライベートと共用のスマホや車を使っていたりすることも多いのではないでしょうか。
そんなときに気になるのが、
「この支出はどこまで経費にできるの?」
という問題です。
以前の記事では「事業用の口座やカードを分ける」という基本的な対策をご紹介しました。
今回はもう一歩踏み込んで、プライベートと事業の両方に関係する支出をどのように分けて考えるのか、「家事按分」をテーマに解説します。
そもそも「経費」とは?
事業を行うために必要な支出は、一定の条件のもとで必要経費として計上できます。
一方、個人的な生活のための支出は、原則として事業の必要経費にはできません。
たとえば、仕事とは関係のない食費やプライベートな買い物などです。
ただし、実際に事業をしていると、
・ 自宅で仕事をしている
・ 自宅のインターネットを仕事でも使っている
・ 自分のスマホを仕事でも使っている
・ プライベートでも使う車を事業にも使用している
など、事業用とプライベート用を完全に分けられない支出もあります。
このような支出について、事業で使用している部分を合理的な基準で分ける考え方が「家事按分」です。
家事按分とは?
家事按分とは、一つの支出について、事業で使用している部分とプライベートで使用している部分を分け、事業に必要な部分を経費として計上する考え方です。
たとえば、自宅の家賃が月10万円で、仕事で使用しているスペースが家全体の30%に相当するとします。
この場合、単純化すると、
10万円 × 30% = 3万円
というように、事業で使用している部分を経費として計上する考え方になります。
ただし、実際の按分方法は支出の内容や使用状況によって異なります。
大切なのは、「なぜこの割合なのか」を説明できる根拠を持っておくことです。
家事按分の対象になりやすい支出
家事按分を検討することが多い代表的な支出には、次のようなものがあります。
1.家賃
自宅の一部を仕事スペースとして使用している場合、事業で使用している部分を面積などの合理的な基準で按分する方法があります。
たとえば、
仕事で使用している面積 ÷ 自宅全体の面積
という考え方です。
2.水道光熱費
自宅で仕事をしている場合、電気代などについて事業利用分を按分することがあります。
使用時間など、実際の利用状況を考慮して割合を決める方法があります。
3.通信費
スマートフォンやインターネット回線をプライベートと仕事の両方で利用している場合も、事業利用分を按分することがあります。
仕事で使用している時間や利用状況などをもとに、合理的な割合を考えます。
4.車両関連費
プライベートでも使用する車を事業にも利用している場合は、ガソリン代や駐車場代などについて、事業利用分を按分することがあります。
走行距離や使用日数など、実際の利用状況をもとに割合を考える方法があります。
按分の割合はどうやって決める?
家事按分でよくある疑問が、
「何%にすればいいの?」
というものです。
実は、すべての支出について「○%にする」という一律の基準が決まっているわけではありません。
重要なのは、実際の利用状況に応じて、合理的に説明できる基準で割合を決めることです。
たとえば、
・ 家賃 → 仕事で使用している面積
・ 通信費 → 使用時間や利用状況
・ 車両費 → 走行距離や使用日数
など、それぞれの支出に合った基準を考えます。
「なんとなく50%」と決めるのではなく、「なぜこの割合なのか」を説明できるようにしておくことがポイントです。
国税庁も、家事関連費について、使用面積や利用状況などの適切な基準によって事業分と家事分を区分する考え方を示しています。
家事按分でよくある注意点
1.都合よく割合を変えない
前年は30%だったのに、今年は利益が少ないから50%にする、といったように、利益の状況に合わせて按分割合を変更するのは避けましょう。
実際の利用状況が変わったのであれば見直す必要がありますが、根拠のない割合変更をしないことが大切です。
2.実態とかけ離れた割合にしない
「できるだけ多く経費にしたい」と考えて、実際の利用状況とかけ離れた割合を設定するのも避けましょう。
たとえば、自宅のごく一部しか仕事に使っていないのに、家賃の大部分を事業経費として計上するような処理には注意が必要です。
あくまで実際の使用状況に合った割合を考えましょう。
3.按分の根拠を記録しておく
「どうしてこの割合にしたのか」を後から説明できるよう、根拠を残しておくことも大切です。
たとえば、
・ 自宅の仕事スペースの面積
・ 家全体の面積
・ 車の事業利用距離
・ 仕事で使用した日数
・ 通信費の利用状況
などを記録しておきます。
後から確認する必要が生じたときにも、根拠が残っていれば説明しやすくなります。
家事按分で迷いやすいポイント
家事按分は、
「30%なら大丈夫?」
「スマホは何%?」
「自宅の家賃はどこまで?」
のように、実際の取引になると判断に迷いやすい部分です。
特に注意したいのは、「経費にできる割合を先に決める」のではなく、「実際の利用状況から割合を考える」ことです。
自分の事業でどのように使っているのかを整理してから、合理的な基準を考えるようにしましょう。
また、住宅ローンについては、家賃と同じように単純に「支払額×事業割合」と考えられるわけではありません。住宅ローンの元本返済部分は必要経費にはならず、利息などについて別途考える必要があります。
判断が難しい場合は、税理士などの専門家に確認することをおすすめします。
まとめ|「何%」より「なぜその割合なのか」が大切
プライベートと事業の支出を完全に分けられれば理想的ですが、自宅兼事務所や共用のスマホ・車など、どうしても混在する支出もあります。
そのような場合には、家事按分という考え方を使って、事業で使用している部分を合理的な基準で区分することが重要です。
今回のポイントをまとめると、
・ 家事と事業の支出を区別する
・ 支出の内容に合った按分基準を考える
・ 「なんとなく○%」で決めない
・ 実際の利用状況に合った割合にする
・ 按分の根拠を記録しておく
・ 状況が変わらない限り、基本的なルールを継続する
ということが大切です。
「按分の割合をどう決めればいいかわからない」
「自分の処理方法で合っているのか不安」
「家事按分を含めて記帳するのが大変」
という方は、記帳代行を利用するのもひとつの方法です。
本業に集中する時間を増やし、毎月の記帳にかかる負担を減らしたい方は、記帳代行という選択肢も検討してみてはいかがでしょうか。