こんにちは!ココナラで【トランスジェンダー・育児・家族・脳卒中】の当事者電話相談をお受けしている、くまごろうパパです。
久々の投稿となりましたが、今回は、トランスジェンダー高学年編(その2)です。
小学校5年生の夏休み。僕の人生を大きく変える出来事が…というお話です。
高学年にもなると、世界は急に「男」と「女」の境界線をくっきり描き始めます。それまでは泥だらけになって男の子たちと混ざって遊べていたのに、なんだか最近、僕だけが浮いているような、不思議な居心地の悪さを感じるようになっていました。そんな、少しだけ息苦しさを覚え始めた小学5年生の夏休み。僕の人生を大きく変える「大切なお話」が、おばあちゃんから切り出されました。
「お母さんが、再婚したいと思っている人がいるの」
おばあちゃんの言葉に、僕は正直、かなりびっくりしました。
だけど、世間一般の子供が抱くような「お母さんを誰かに盗られる!」という嫉妬は、不思議と湧いてきませんでした。
僕は元々、お母さんと離れて暮らしていました。だから、誰かがお母さんの隣にいてくれることは、僕にとっても少し安心することだったのかもしれません。
でもこの段階ではお母さんが再婚するという事が分かっただけで、なんだか少し人ごとのような感じ。
だけど次におばあちゃんが発したのは僕にとって衝撃的な言葉でした。
「相手の方には小学三年生の娘さんがいて、あなたの妹が出来るんだよ。
だから、あなたもお母さんのところに戻って家族としてみんなで暮らしたいんだって」
お母さんのそばにいられるのは正直嬉しい。だけど、心の中はざわざわと忙しい。
「どんな人なんだろう?」
「妹になる子は、仲良くしてくれるかな?」
そして何より、「大好きなおじいちゃん、おばあちゃんと離れて暮らすことになるんだ」という寂しさが、胸の奥をチクチクと刺しました。
「まずはどんな人なのか会いに行ってみようね。」
顔合わせは、お互いの住んでいる場所の中間にある県。ホテルのロビーで会ったその人は、とても優しそうなおじさんでした。
おじさんはおしゃべりが上手で、僕たちを楽しませる天才でした。一緒にたくさん遊んでくれて、緊張していた僕の心は、いつの間にかふんわりと解けていました。
一緒についてきた小学3年生の女の子は、出会ってすぐに僕のことを「お姉ちゃん!」と呼んでくれました。
「……うん、お姉ちゃんだよ」
顔では笑って返しながら、心の中で僕は、もう一人の自分とこっそり会話します。
(ごめんね、実はお兄ちゃんなんだよ)
誰にも言えない秘密を抱えたまま、可愛い妹ができた。それは嬉しいような、でもどこか「嘘をついている自分」を再確認するような、くすぐったくて少し切ない瞬間でした。
田舎に戻ると、親戚一同での「会議」が始まりました。大人たちはみんな、お母さんの再婚に賛成ムード。「どう思った?」と聞かれた僕は、小さく頷きました。
正直なところ、本当の気持ちなんて自分でもよく分かっていなかったんだと思います。でも、子供の判断基準はいつだってシンプル。
「たくさん遊んでくれるおじさん=いいお父さん」
そんな直感に従って、僕も賛成しました。
最後まで僕を悩ませたのは、やっぱり祖父母との別れです。ずっと育ててくれた二人のそばにいたい。その気持ちは痛いくらいにありました。
けれど、それ以上に僕を動かしたのは「ここではないどこか」への期待でした。
めちゃくちゃ田舎なこの場所で、僕の抱えている「性別の違和感」がバレたら、きっと大変なことになる。でも、お母さんの住む都会なら?
もしかしたら、僕と同じような悩みを持つ子がいるかもしれない。
僕が何者なのか、そのヒントが見つかるかもしれない。寂しさと、ほんの少しの希望。
僕は「いい子」の顔をして、新しい家族の一員になることを決めました。
おじいちゃん、おばあちゃんと共に、お母さんの住む街へ向かい、数日間の観光を楽しみました。そしてついに、二人だけが田舎に帰る日がやってきました。
「寂しいけれど、絶対に泣かない。僕が泣いたら、二人が心配するから」
新幹線のホームで、僕は一生懸命、自分に言い聞かせました。ガタンと音がして、ゆっくりと動き出す車体。窓の向こうでどんどん小さくなっていく二人の顔。ちぎれるほどに手を振る祖父母の姿。それが見えなくなるまでは、なんとか耐えました。正確には、あふれそうになる涙を必死に食い止めていた、という方が正しいかもしれません。
でも、白い車体が視界から消えた瞬間、僕のダムは決壊しました。
一度こぼれた涙は、もうどうやったって止められませんでした。自分でもびっくりするくらい、ポロポロと、ポロポロと。
そうして始まった新しい生活で、僕を待っていたのは予想外の試練でした。
転校先の学校には「制服」があったのです。
鏡に映る自分は、ひだの寄ったプリーツスカートに、白いブラウス。
それは僕が一番遠ざけたい姿でした。心がぎゅっと縮こまるような感覚。でも、今の僕は「お母さんの再婚を受け入れた物分かりのいい子」でなければなりません。「嫌だ」なんて、口が裂けても言えませんでした。
「これは、仕方がないことなんだ。こういうルールなんだ」
そう自分に言い聞かせ、心を無にして、僕は「女の子」の鎧を纏って登校し始めました。
そして、順調にスタートを切ったかに見えた家族生活も徐々にほころび始めました。継父も、母も、妹も、もちろん僕もそれぞれに必死だっただろうという事は今なら少しは分かります。
だけど、この時はまだ、継父の外面も、妹から向けられた嫉妬も、そして何より、優しかったお母さんが少しずつ「毒母」へと変わっていくことも、僕が「ヤングケアラー」として家を支える日々が来ることも、想像すらしていませんでした。
そして、田舎にいた時は想像することもできなかった、このスカートを穿いた僕の、あまりにも切ない「恋」の物語がもうすぐ始まることも。
僕の歩む道は、ここから少しずつ、険しくて、それでいてどこか愛おしい、複雑な色に染まっていくことになります。
本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。
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