企業向けPDF秘匿ツール「SECLAYER (シークレイヤー) 」を開発しています。
最初はかなりシンプルな発想でした。
PDFの中にある個人名、会社情報、住所、電話番号など、外部に出したくない情報を見つけて、必要な部分を黒塗りする。
いわゆる「PDFの秘匿ツール」です。
ただ、実際に作り続けていると、企業の文書秘匿は単純な黒塗りだけでは終わらないことが分かってきました。
■ 企業ごとに「隠す・残す」の正解が違う
同じ種類の情報でも、
「これは秘匿する」
「これは公開していい」
「判断が難しいので保留する」
「この会社では毎回公開する」
「この項目は毎回秘匿する」
と、会社や業務によって判断が変わります。
そこで現在のSECLAYERでは、単に機械が全部決めるのではなく、
機械が候補を見つけ、人間が必要な部分だけ判断し、その判断を次回以降に再利用する
という方向で開発を進めています。
現在は、PDF内の候補抽出、公開・秘匿・保留の確認、PDF出力、保存設定、辞書連携などを中心に、実機での確認を重ねています。
■ AIが何でも決めるのではなく、人間の判断を再利用する
大事にしているのは、「AIですべて自動化すること」ではありません。
企業の業務には、機械だけでは正解を決められないものがあります。
たとえば、
「この情報は社外に出してよいのか」
「この人物は案件上どのような名称で扱うのか」
「この会社ではどこまでを機密情報として扱うのか」
こういった判断は、会社や案件によって正解が変わります。
そこでSECLAYERでは、人間にしか決められない部分は人間が決める。
その代わり、
一度決めたことは、できるだけ二度判断させない。
ここを機械側が引き取る考え方です。
たとえば、毎回同じ項目を「公開」に変更しているなら、その判断を保存する。
同じ種類の文書で同じ判断が続くなら、次回から再利用する。
こうして、使えば使うほど会社の運用に合っていく仕組みを目指しています。
■ 黒塗りだけでは終わらない「仕上げ」の問題
開発を続ける中で、「秘匿した後の仕上がり」についても考えるようになりました。
会社によっては、黒塗りだけで十分です。
一方で、
白塗りにしたい
「個人情報」「非公開」「社外秘」などの固定ラベルを入れたい
「原告A」「担当者B」のような代替名を使いたい
秘匿済み文書が本当に安全か確認したい
というケースも考えられます。
ただし、ここでも何でも自動にすると逆に危険です。
たとえば、「この人物は原告A」と機械が勝手に決めるべきではありません。
正解を知っているのは、その案件を扱っている人です。
そこで、
人間が一度決める → 同じ対象には機械が再利用する
という構造を考えています。
仮に同じ人物が文書内に20回出てきても、20回同じ入力をする必要はありません。
最初の1回だけ人間が決め、その後は同じ案件内で再利用する。
こうした「判断回数そのものを減らす」ことが、SECLAYERの大きな価値になると考えています。
■ 高機能でも、使う人には複雑さを見せない
一方で、機能を増やしすぎると、今度は使いづらくなります。
ここはかなり重要だと思っています。
高機能なソフトでも、毎回大量の設定が必要だったり、どのボタンを押せばいいか分からなかったりすれば、現場では使われなくなります。
SECLAYERでは、
ユーザーの使いやすさを最上位で考える
という方針を強くしています。
普通に使う人には、必要な操作だけ見せる。
高度な設定は、必要な人だけ開ける。
一度決めた内容は保存して、同じ質問を繰り返さない。
「人間が判断すること」と「人間に作業を押し付けること」は別だと考えています。
■ 商品構成は「Lite」と「Plus」の2つを検討
商品構成についても、現在は2つに分ける方向で考えています。
SECLAYER Lite
「簡単に、安全に、企業文書を秘匿して出す」
こちらは、できるだけ迷わず使える構成です。
候補を見つける。
公開・秘匿・保留を確認する。
必要な部分を秘匿する。
PDFを出力する。
黒塗りだけで十分な会社もあれば、白塗りや固定ラベルが必要な会社もあるため、最低限の仕上げ選択も持たせたいと考えています。
Liteは「機能を削った安い版」ではなく、
普通の企業ならこれだけでも秘匿作業を完結できる、シンプルな完成版
という位置づけです。
SECLAYER Plus
こちらは、さらに複雑な業務へ対応する上位版です。
たとえば、
会社ごとの設定
高度な辞書
学習候補
案件単位のルール
代替名
同一対象への一括置換
別PDFへの再利用
詳細な仕上げ設定
安全確認レポート
監査用の証跡
などを想定しています。
つまり、
Liteは「簡単に秘匿する」
Plusは「会社や案件の判断を覚えて再利用する」
という分け方です。
■ 出力後に「本当に安全か」を確認する
もう一つ、今後かなり重要になると考えているのが「出力後の安全確認」です。
PDFは、見た目が黒くなっているだけでは安全とは限りません。
内部に元の文字情報が残っていたり、注釈やレイヤーなどから情報が確認できてしまう可能性もあります。
そのためSECLAYERでは、将来的にPDFを出力した後、
秘匿した文字が再抽出されないか
元情報が内部に残っていないか
注釈やレイヤーに情報が残っていないか
保留項目が残っていないか
などを確認し、日本語で結果を表示する仕組みも考えています。
表示も、
確認済み
確認が必要
問題あり
のように、技術者でなくても分かる形にしたいと思っています。
もちろん「完全に安全です」と断言するのではありません。
「SECLAYERが定めた安全確認項目を通過した」
という形で、利用者自身が確認できるようにする。
この方が企業向けとしては現実的だと考えています。
■ 最終的に目指しているSECLAYER
SECLAYERは、最初はPDFの黒塗りツールとして始まりました。
でも今は、
秘匿候補を見つける
人間が必要な判断だけする
その判断を保存して再利用する
会社や案件ごとの運用へ合わせる
最後に安全性を確認する
というところまで、少しずつ形が見えてきました。
目指しているのは、単なる黒塗りソフトではありません。
人間の判断を安全に再利用できる、企業向けのローカル文書秘匿ツール
です。
機能は増やす。
でも、使う人には複雑さを感じさせない。
必要な判断だけしてもらい、それ以外は機械が引き取る。
その方向で、引き続き仕上げていきます。