もう会わなくなった人を、ふと思い出すことがあります。
似た声が聞こえたとき。
一緒に聴いた曲が流れたとき。
何でもない出来事を、あの人ならどう話すだろうと思ったとき。
普段は忘れていたはずなのに、その瞬間だけ、記憶が近くなる。
「まだ好きなのかな」
そう問いかけても、はっきりとは答えられない。
連絡したいわけでも、あの関係に戻りたいわけでもない。それでも、心に残っている。
その気持ちを、すぐに未練と呼ばなくてもいいのかもしれません。
あの人と一緒に、思い出しているもの
誰かを思い出すとき、浮かんでくるのは、その人の顔や言葉だけでしょうか。
会う日のために服を選んだこと。
次の約束があるだけで、仕事を頑張れたこと。
普段なら言えないことまで、自然に話せたこと。
そこには、その人と過ごしていた「自分」もいます。
よく笑っていた自分。
誰かをまっすぐに好きだった自分。
これから先に、楽しみなことがたくさんあると感じていた自分。
懐かしいのは、相手だけではない。
あの頃の自分に、もう一度会いたくなることもあるのではないでしょうか。
続かなかった未来にも、想いは残る
実際に過ごした時間より、その先に思い描いていたことが、心に残っている場合もあります。
いつか一緒に行こうと話した場所。
季節が変わったら、しようと思っていたこと。
まだ言葉にしていなかった、小さな期待。
関係が終わったとき、それらは実現しないまま残ります。
「あの人に会いたい」の中に、
「あの続きを生きてみたかった」が混ざっていることもあるのでしょう。
もちろん、本当にその人自身が恋しいこともあります。
どちらかひとつに決める必要はありません。
ただ、自分が何を懐かしんでいるのかを少し見つめると、胸に残っている想いの輪郭が、見えてくるかもしれません。
今の自分が、もう一度ほしいもの
もし、あの頃の自分に会いたいのだとしたら。
その自分の、どんなところが懐かしいのでしょう。
何かを楽しみにする気持ち。
背伸びせずに話せる安心感。
誰かのことを考えながら過ごす、何でもない時間。
「あの人がいないから、もう手に入らない」と感じていたものの中にも、別の形で、これから育てられるものがあるかもしれません。
行ってみたかった場所へ、自分のために出かける。
気持ちを隠さずに話せる人との時間を大切にする。
誰かに見せるためではなく、自分が好きな服を選ぶ。
それで寂しさが消える、という話ではありません。
ただ、あの人との記憶を見つめていた時間から、今の自分が望んでいるものへ、少し目を向けてみることはできます。
忘れることを、目標にしなくても
忘れられない人がいることと、これからを生きていくことは、両立していいと思います。
懐かしい曲を聴けば、今でも思い出す。
大切だった時間まで、なかったことにはしない。
それでも、今日の楽しみを見つけ、新しい約束をする。
思い出すたびに、「まだ忘れられていない」と自分を確かめなくてもいい。
その出会いを運命と呼ぶかどうか、今、決める必要もありません。
心が動いた時間があった。それは、自分にとって大切なことだった。
それだけでも、十分なのではないでしょうか。
忘れられないのは、あの人なのか。
それとも、あの頃の自分なのか。
答えを急ぐ代わりに、もうひとつだけ、問いかけてみてください。
「あの頃、大切にしていた何を、これからの私にも渡してあげたいだろう」
過去を思い出す時間が、今の自分の願いに気づく時間になることもあるはずです。
MANDARIN SoulReading