本屋で、なぜか一冊の前で足が止まる。
初めて訪れた場所なのに、もう少しここにいたくなる。
誰かが何気なく口にした言葉が、何日たっても心に残っている。
理由を聞かれたら、うまく説明できない。
ただ、なんとなく気になる。
そんな小さな感覚を、あなたはどう扱っているでしょうか。
理由より先に、心が動く
何かを選ぶとき、私たちは理由を求めます。
役に立つから。
自分に合っているから。
今、必要だから。
理由があれば、人にも説明できるし、自分も納得できます。
けれど、好きになったものを振り返ると、最初から理由がはっきりしていたものばかりではない気がします。
先に手が伸びて、あとから好きなところが見えてきた。
一度会っただけなのに、また話してみたいと思った。
予定にはなかったのに、曲がってみたい道があった。
「なんとなく」は、まだ言葉になっていない関心なのかもしれません。
なぜ惹かれるのかは、少し近づいてみてからわかることもあるのでしょう。
同じものが、違って見える日
以前は気にも留めなかった言葉が、ある日、急に心に響く。
忙しいときには退屈に見えた静かな風景を、今はずっと眺めていたくなる。
誰かの「無理しなくていいよ」に、今日はなぜか泣きそうになる。
目の前にあるものだけでなく、受け取る自分も、日々変わっています。
だから、何に心が動いたのかを見つめることは、今の自分を知る手がかりにもなりそうです。
あの景色に惹かれたのは、遠くへ行きたいからなのか。
それとも、誰にも急かされない時間がほしかったからなのか。
その人の言葉が残ったのは、自分も同じように感じていたからなのか。
それとも、ずっと誰かに言ってほしかったからなのか。
ひとつの「気になる」の中にも、いくつかの想いが隠れているのかもしれません。
直感なのか、そうあってほしいのか
ただ、強く感じたことを、いつも正しい答えだと受け取るのは難しいものです。
たとえば、気になる人から短い返信が来たとき。
「きっと、相手も私を気にかけている」
そう感じたとしても、その中には直感だけでなく、期待や願いが混ざっているかもしれません。
惹かれた気持ちは、自分の中に確かにある。
けれど、相手が何を思っているかは、それだけではわからない。
このふたつを分けておくことは、自分の感覚を否定することにはならないと思います。
「私は、そうだったら嬉しいんだな」
そこまでわかったら、相手の言葉や行動も、時間をかけて見ていけばいい。
直感か願望かを、今すぐ判定しなくても。
自分が感じたことと、実際に確かめられたことを、どちらも大切にしておきたいのです。
小さく、近づいてみる
なんとなく気になるものに出会ったからといって、大きな決断をする必要はありません。
気になった本を、数ページ読んでみる。
行ってみたい場所を、少し調べてみる。
心に残った言葉を、そのときの気持ちと一緒に書き留める。
少し近づくと、もっと知りたくなることもあれば、「思っていたものとは違った」と感じることもあります。
違ったとしても、最初の感覚が間違いだったと責めなくていいと思います。
近づいたことで、自分の好みがわかった。
今は必要としていないことがわかった。
その発見にも、意味はあるはずです。
まだ、意味のない出会いでも
印象に残る出来事があると、「これは何かのサインだろうか」と考えたくなることがあります。
けれど、その場で意味を見つけなくても、出会いを楽しむことはできます。
ただ美しかった。
なんだか好きだった。
理由はわからないけれど、もう一度見たかった。
それくらいの気持ちで、大切にしておけるものがあってもいい。
あとになって、あの日の一冊が何かを始めるきっかけだったと気づくかもしれません。
何にもつながらず、好きな記憶として残るだけかもしれません。
どちらであっても、心が動いたひとときの価値は変わらないと思います。
今日、なんとなく気になったものはありましたか。
答えを探す前に、
「私は、これに心が動いたんだな」と、少しだけ覚えておく。
自分のことを知る時間は、そんな小さなところから始まるのかもしれません。
MANDARIN SoulReading