「体調が優れないので、辞めます。」
上司にそう伝えた日。
Teams会議。日の光が入らない自分の部屋。ワイヤレスイヤホンをつけて、とつとつと話していました。
上司の顔は見えません。声はいつも通り。
伝えるだけでいっぱいいっぱい。
その日のことは半年以上たったいまも忘れられません。
体調が悪かったのは本当です。
でも辞めた本当の理由は体調だけではありません。
会議を入れる時間も、切り出す言葉も、
AIに何度も相談して決めました。
何時に入れればいいか。どう切り出せばいいのか。
でも本番で最初に聞かれたのは、
どう悪いのか、でした。
「朝、起きられなくて。日中も、体が重くて。」
そう答えると、上司は、
始業を遅らせるなど、働き続ける方法を探してくれたんです。
僕は日中にパソコンの前に座っていること自体がつらかった。
横になったままなんとかパソコンを打つ日々。
布団から出られない日もありました。
迷惑をかけながら続けるのは心身にもよくない。
そう伝えたんです。
「仕方ないね。」
話は淡々と進んでいきました。
不思議なことに退職を伝えたあたりから、
一気に体が楽になったような気がしたのを覚えています。
仕組みをつくるのが仕事だった僕が、
自分では動けなくなったのはなぜか。
そしてそんな僕が、
なぜ頼まれたことなら動けて、ココナラを続けられているのか。
■ 仕組みをつくっても動かせなかった
僕はもともとインフラエンジニアとして、
IT企業でサーバーの設計と構築を担当していて、
入社3年目の春、仕事が追いつかなくなりました。
2025年4月16日、構築中の仮想サーバーでのことです。
コマンドの確認が足りないまま操作をして、
サーバーを動かなくしてしまったんです。
その夜の懇親会には出る気になれず、
涙を浮かべながら、ひとりで帰りました。
能力不足だと思われるのが何より怖かった。
睡眠を削り、昼休みの仮眠でつなぐ日々でした。
そこで考えたのが仕組みをつくって解決すること。
予定やメモを扱うアプリ、Notionに、
3つの置き場をつくったんです。
思いつきを入れる「アイデア」。
段取りを決める「計画」。
今日やることを並べる「実行」。
さらにToDoリストとタイマーが一つになった別のアプリも使いました。
理屈の上では合理的な設計。
でも使いこなせませんでした。
Notionの内容をToDoリストとタイマーのアプリへ移す作業。面倒だったんです。
そのうちそのアプリだけを使うようになり、Notionは使わなくなりました。
さらにはToDoリストも開かず、リマインダーも無視し続け、
仕組みは止まったまま。
Notionは僕が開かなければ何も進みません。
自動で更新される仕組みもありませんでした。
仕組みをつくったつもりでも、使う自分が動かない。
努力不足だ。能力不足だ。
そう思っていたんです。
もう、限界かもしれない。
2025年5月、ゴールデンウィークが明けても休んだ気がせず、
オンライン診療を受けました。
診断書を出してもらい休職です。
■ 「努力不足」ではなかった
休職中、自分の苦手なことが見えてきました。
忘れ物が多いこと。
関心の移りやすさ。
夢中になると生活が崩れること。
もしかするとこれは自分の特性なのかもしれない。
そう思えたのは2025年11月のことです。
きっかけは自宅で受けていた副業の無料個別相談でした。
担当の方によると、似た特性と付き合いながら働いている人がいるそうです。
それを聞いてはっとしました。
そんなふうに、どうにかなるものなのか。
湧いたのは絶望ではなく、
対処できるかもしれないという希望です。
その後、医師に相談し、治療が開始。
少し動けるようになった気がして、
7か月ほどの休職を終え、2025年12月末に復職しました。
まもなく2つの案件を任されたんです。
片方は片道2時間半の現場に通う案件。
僕がリーダーに任命されました。
もう片方はあとから出張があると分かった案件。
翌1月から残業が続き、2月には大阪へ出張し、
途中で産業医にドクターストップを出してもらって、東京へ戻りました。
このまま続けても、誰かを幸せにすることも、世界を変えることもできない。
この先も、こういう未来が続いていくのか。
そう思うと、続けられる未来がまったく見えなかったんです。
体調だけではない本当の理由は未来が見えなかったこと。
そして2026年3月末、会社を辞めました。
■ 頼まれたことなら動けた
退職してから最初のご依頼が成立するまで4か月ほどありました。
その間は家で横になる日が多く、
たまに外へ出る程度。
とりあえず休みたかったんです。
6月からは事業のことを考え始め、
AIに相談し、マーケティングの本を読み、
動ける日に動いていました。
いくつかのサービスに登録し、
一番最初に依頼につながったのがココナラです。
募集に応募すれば依頼主から直接返事が来ます。
頼まれる形で始められる入口がココナラにはありました。
Notionでは動けなかった僕がなぜココナラでは続けられたのか。
理由は二つです。
AIが止めないこと。お客様に頼まれていること。
Notionは僕が動かなければ止まります。
ココナラの仕事はAIがほぼ毎日進めてくれるので、
僕が動けない日も止まりません。
お客様の依頼や連絡のうち僕の判断が要るものだけ、AIから報告が届きます。
僕は届いた報告に応えて動けばいいんです。
仕組みをつくったつもりでも使う自分が動かないまま。
でもお客様から頼まれたことなら動けました。
布団の中のスマホに、ココナラの依頼についてAIの報告が届いていたんです。
お客様が確認を待っている項目だけを読んで返信を打ちました。
AIは仕組みを動かしてくれます。
でも僕を動かしたのは、お客様が待っているという事実でした。
エンジニアとしての知識はあっても、
これといって出品できるものはなし。
あったのは論理的に考える力くらいです。
こんなプロフィールだと案件は取れないだろうと思っていました。
ココナラでの最初のご依頼は2026年8月。
募集に応募した翌日のことでした。
内容は商品画像を集めるリサーチで、金額は5,000円。
小さな一歩です。
ココナラで受注したと僕が知ったのはAIからの報告でした。
Notionで動けなかった経験から、僕が動かなくても進む形をつくり、仕事をAIに任せていたからです。
「おぉ、意外と早く取れたな」と思ったのを覚えています。
ただ最初の仕事は手戻りの多いものでした。
AIが集めた画像には品目の取り違えなどの誤り。
見分け方を調べつつ確認していた僕には気づけないものもありました。
お客様のご指摘を受けて見落としに気づく。
そして直す。
差し戻しと追加のご指示で、その繰り返しは数度に及びました。
万全ではありません。
だから届いた報告は次の二点で確かめています。
お客様のためになるか。
自分が納得できる品質か。
最初のご依頼でいただいた評価のコメント。
「リサーチとして画像の収集作業をいただきました。こちらの指示不足で戻しが数度発生してしまいましたが、いずれも迅速かつ丁寧にどうもありがとうございました。」
その後も文字起こしなどのご依頼をいただきました。
依頼を受けて納品して評価をいただく。
最初のご依頼から約2か月で販売実績は4件になりました。
この記事の投稿時点で評価はすべて星5つ。
出品者ランクはゴールド。
一番印象に残っているのはポスターを作ったご依頼です。
高校生のご友人への誕生日プレゼントにする一枚。
そのご依頼を受けたのは長岡の花火大会へ出かけた旅の途中でした。
ホテルでも新幹線の中でも、
AIと「こうするべきじゃないか」と壁打ちしながら、進めていたんです。
ちょうど、AIの週の利用上限が尽きたころ。
追加で課金して対応しました。
費用が増えても、
応援したいと思ったんです。
AIに任せている分、僕の見えていないところで、お客様を困らせていないか。
そんな不安がいつもあります。
だからその案件の評価も自分の部屋のパソコンで見に行きました。
「仕上がりも想像以上で、大満足でした!」
画面を見たまま、しばらく動けなかった。
「誰かを幸せにすることも、世界を変えることもできない。」
以前、そう考えていたことを思い出しました。
贈り物にしたいという気持ちを、
少しでも支えられたのかもしれない。
やってよかった。
夕方、ソファでパートナーへ「こんな言葉をもらえた」とLINEしたんです。
しばらくして返ってきたのは「え!!!めちゃくちゃすごい!!」の一言。
あの日「辞めます」と告げた僕はいまも万全ではありません。
動けない日はありますが、
それでも、ココナラで頼まれたことには期限までにひとつずつ応えられています。
■ 同じように迷っている方へ
いまの会社が合わない。
それだけで飛び込むのはおすすめしません。
僕は飛び込みすぎたと思っています。
でも時間に余裕があって収入をもっと増やしたい。
誰かの役に立ちたい気持ち。
普通とは違う働き方を試してみたい。
そんな方に大きな計画は要りません。
とりあえず一件ずつで十分です。
スキルに自信のなかった僕は、AIにできることから始めて、
ココナラで最初の一件を取れました。
仕組みを使いこなせなかった僕を動かしたのは、お客様が待っているという事実。
副業やココナラを始めようか迷っているなら、
まず一件から始めてみませんか。