デザインを知ると、毎日が少しだけ豊かになるーー第12回 革命が生んだデザイン「ロシア・アヴァンギャルド」

デザインを知ると、毎日が少しだけ豊かになるーー第12回 革命が生んだデザイン「ロシア・アヴァンギャルド」

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第12回 革命が生んだデザイン「ロシア・アヴァンギャルド」

20世紀初頭のロシアでは、芸術の世界にも大きな変化が起こっていました。その中心にいたのが、ウラジーミル・タートリン、カジミール・マレーヴィッチ、アレクサンドル・ロトチェンコ、エル・リシツキーなど、後に「ロシア・アヴァンギャルド」と呼ばれる芸術家たちです。

彼らが目指したのは、単に新しい絵画や美しい作品をつくることではありませんでした。1917年のロシア革命によって社会そのものが大きく変わる中、「新しい社会には、新しい芸術が必要だ」と考えたのです。

芸術を、美術館から街へ

ロシア・アヴァンギャルドの大きな特徴は、芸術を限られた人だけのものにしなかったことです。芸術家たちは絵画だけではなく、ポスターや雑誌、書籍の表紙、街路や劇場の装飾など、人々の生活に直接触れるさまざまな分野へ活動を広げていきました。

特にポスターは、新しい政府の考え方や情報を多くの人へ伝える重要なメディアとなります。強い色彩、大胆な文字、斜めに走る線、写真と図形を組み合わせた構成など、ひと目で人を引きつける表現が数多く生み出されました。

現在の広告やグラフィックデザインを見ても、その影響を感じることがあります。100年以上前の表現でありながら、今見ても驚くほど力強く、現代的です。

「芸術家」から「社会をつくる人」へ

彼らの関心は、ポスターや雑誌だけにとどまりませんでした。衣服、家具、食器などの実用品にもデザインの領域を広げ、芸術を人々の日常生活へ取り入れようとします。

ここには、それまでの「芸術家」の姿とは異なる考え方があります。

一点だけの高価な芸術作品をつくるのではなく、安価に大量生産できるものをデザインし、多くの人々の生活をより良くする。芸術家自身が社会や産業に積極的に関わろうとしたのです。

この発想は、これまで紹介してきたドイツ工作連盟やバウハウスとも、どこか共通しています。国や政治的背景は大きく異なりますが、「芸術を暮らしや社会と結びつける」という考え方は、20世紀のデザインを考えるうえで重要な流れになっていきました。

幾何学が生み出した新しい美しさ

ロシア・アヴァンギャルドの作品には、円や三角形、四角形、直線など、幾何学的な形が多く登場します。

マレーヴィッチは、具体的な物を描くことから離れ、正方形や円などの純粋な形による抽象表現を追求しました。一方、タートリンやロトチェンコらの活動は「構成主義」と呼ばれる動きへとつながり、素材や構造、機能を重視した新しい造形を生み出していきます。

そこには、過去の芸術を飾り直すのではなく、まったく新しい時代にふさわしい造形をゼロからつくろうとする強い意志がありました。

なぜ、今見ても新しく感じるのか

ロシア・アヴァンギャルドのポスターを見ると、文字が斜めに配置され、写真が大胆に切り取られ、赤や黒などの強い色が画面を横切っています。整然と並べるのではなく、あえてバランスを崩すことで、見る人の視線を強く引きつけています。

現在なら、広告や雑誌、Webサイトなどでも使われている手法です。

デザイン史を知る面白さは、ここにあります。「現代的だな」と思っていた表現の原点をたどってみると、100年ほど前のデザインに出会うことがあるのです。

おわりに

ロシア・アヴァンギャルドの芸術家たちは、芸術を鑑賞するためだけのものではなく、社会を変える力を持つものとして捉えました。

その理想がすべて実現したわけではありません。しかし、芸術と社会、産業、そして人々の暮らしを結びつけようとした彼らの試みは、その後のグラフィックデザインやタイポグラフィ、建築、プロダクトデザインなどに大きな影響を残しました。

デザインは、美しいものをつくるだけではない。情報を伝え、人を動かし、ときには社会そのものに働きかけることもできる。ロシア・アヴァンギャルドは、そんなデザインのもう一つの力を見せてくれたのです。

【参考資料】
ロシア・アヴァンギャルドの図案や作品画像を含む、より詳しい参考資料については、私が別途まとめている記事でもご紹介しています。
ココナラの仕様上、この場で具体的なURLは記載できませんが、検索エンジンで「増田恵一デザインブログ」などと検索すると、関連する記事が見つかりやすくなります。
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