「MDSは弊社では対応していません。」
保健所検査やサイバーセキュリティ対策を進めていると、多くの病院SEが一度は経験する言葉です。
「MDSの提出をお願いします。」
そう依頼したところ、
「弊社では対応しておりません。」
「そのような資料はありません。」
「保守契約の範囲外です。」
と言われてしまった。
「では、保健所にはどう説明すればいいのだろう……。」
そんな経験はありませんか?
私自身も何度も同じ壁にぶつかりました。
しかし、結論から言うと、
「対応していません」で終わる必要はありません。
少し依頼の仕方を変えるだけで、状況が大きく変わることがあります。
まず知っておきたい「MDS」とは?
MDS(Manufacturer Disclosure Statement)は、医療機器や医療情報システムについて、メーカーがセキュリティ対策の実施状況を回答するための資料です。
病院側が安全管理を行うための重要な情報となります。
近年では保健所検査やサイバーセキュリティ対策の中でも、確認される機会が増えています。
ベンダーが断る理由
実は、「提出したくない」のではなく、
次のような理由で断られるケースが多くあります。
・営業担当がMDSを知らない
・開発部門へ確認していない
・社内ルールが決まっていない
・作成に時間がかかる
・保守契約外と判断している
つまり、担当者レベルでは判断できないことも多いのです。
「提出してください」だけでは伝わらない
病院側から
「MDSをください。」
だけ伝えると、担当者も困ってしまいます。
私が意識しているのは、
「なぜ必要なのか」
まで伝えることです。
例えば、
「保健所検査および医療情報システムのセキュリティ管理の確認資料として必要です。」
と添えるだけでも、社内で相談してもらえる可能性が高くなります。
担当営業で止まっていませんか?
営業担当が「ありません。」と言ったとしても、
それで終わる必要はありません。
次のようにお願いしてみましょう。
「もしご存じなければ、開発部門やセキュリティ担当部署にも確認していただけますでしょうか。」
これだけでも、後日「資料がありました。」と連絡が来ることは珍しくありません。
「代替資料」はないか確認する
どうしてもMDSが存在しない場合でも、代わりになる資料があることがあります。
例えば、
・セキュリティ仕様書
・脆弱性対応方針
・サポート資料
・SOCレポート
・ISO27001取得資料
・セキュリティホワイトペーパー
病院として必要なのは、
「安全性を確認できる資料」です。
必ずしもMDSという名前にこだわる必要はありません。
一番大切なのは「記録を残すこと」
仮に最終的に提出されなかったとしても、
病院側が
・いつ依頼したか
・誰へ依頼したか
・どのような回答だったか
を記録しておくことは非常に重要です。
保健所から質問された場合でも、
「病院として確認を行った」
という説明ができます。
何もしなかった病院と、
依頼・確認・記録を残した病院では、
評価が大きく変わる場合があります。
ベンダーは敵ではありません
病院SEになって感じたことがあります。
ベンダーも病院も、最終的な目的は同じです。
患者さんの医療を止めないこと。だからこそ、
「提出してください。」
ではなく、
「一緒に安全なシステムを作るために協力をお願いします。」
という姿勢の方が、
結果としてスムーズに進むことが多いと感じています。
まとめ
MDSを断られたからといって、そこで諦める必要はありません。
大切なのは、
・なぜ必要なのかを説明する
・担当部署まで確認してもらう
・代替資料も相談する
・やり取りを記録する
この4つです。
これだけでも、保健所検査への対応力は大きく変わります。
さらに詳しく知りたい方へ
今回の記事では、MDS提出を依頼するときの考え方を紹介しました。
しかし実際の現場では、
・ベンダーへ送る依頼メールはどう書けばよいか
・断られた後にどう交渉すればよいか
・保健所へはどう説明すればよいか
・他のセキュリティ資料は何を集めればよいか
・厚労省ガイドラインとどう結び付ければよいか
など、より実践的な対応が求められます。
これらを、実際の病院SEとしての経験をもとにまとめたのが、
『【保健所検査で慌てない】病院SE10年の経験を29項目に凝縮|指摘ゼロへの実践マニュアル』
「現場で本当に使える資料が欲しい。」
そんな方の参考になれば幸いです。