先日、『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』(中田豊一・著)という本を手に取りました。まだ第一章を読み終えたところですが、日常的なコミュニケーションにおいてハッとさせられる気づきが多くありました。
今回は第一章の内容をもとに、著者自身の学びや教えとして書かれていた「問いかけの落とし穴」と「理想の質問術」についてまとめてみます。
1. 「なぜ?」が会話をねじれさせる3つの理由
私たちは日常の中で、相手の考えや行動の理由を知りたいとき、ごく自然に「なぜ?」と問いかけてしまいがちです。
ですが、理由を直接尋ねても本当の答えは見えてこないのだそうです。相手のためを思って理由を聞いているつもりでも、「なぜ」という言葉は、時にプレッシャーとなり、お節介に聞こえてしまうのだといいます。
本書では、「なぜ」という問いかけが良くない理由として、以下の3点が挙げられていました。
思い込みを強化してしまう
「なぜ」と理由を聞いているようでいて、実は相手の思い込み(感想)を述べさせているだけのことが多いそうです。答えている本人もそれが自分の思い込みであることに気づかず、事実から遠ざかってしまうとのことです。
言い訳や自己防衛を誘発する
「なぜ」と問い詰められると、人は反射的に言い訳を探してしまうそうです。それが会話のねじれを生み、最終的にはお互いの関係性のねじれにまで繋がってしまうとのことでした。
忖度(そんたく)を強いてしまう
聞く側の意図を汲み取ろうとするあまり、相手が本来持っていない意見や考えを無理にひねり出して答えてしまうことがあるそうです。
特に、立場に差がある関係性ほど、この会話のねじれが起きやすいとのことです。
2. 無意識に使ってしまう「負担をかける質問」
「なぜ」以外にも、日常会話で無意識に使ってしまいがちな問いかけについて触れられていました。
「どうだった?」という丸投げの質問 聞く方は気楽ですが、相手には負担を与える質問だそうです。実は聞く側自身も「自分が何を聞きたいのか」がはっきりしていない状態で聞いていることが多いとのことでした。
「問題は何ですか?」と悩みを引き出そうとする言葉 親切心から悩みを聞き出そうとするのも、時に注意が必要だそうです。聞かれた側は「何か答えないと失礼かな」と感じ、ありもしない問題を無理やり作って答えてしまうことがあるとのこと。何かあれば相手から言ってくれるため、こちらからわざわざ悩みを引き出す必要はないそうです。
「いつも」「みんな」といった曖昧な言葉 「いつも」「みんな」といった表現は事実を引き出せず、相手の思い込みを誘発してしまうそうです。「しっかり」「親身に」なども定義があいまいなため、会話にズレを生む原因になるとのことでした。
3. 「なぜ」のかわりに「事実」を問う技術
では、「なぜ」や「どう」と聞くかわりに、どのような問いかけをすればよいのでしょうか。
著者は、解釈や思い込みを問う質問を「空中戦」、具体的に事実を問う質問を「地上戦」と呼び、「空中戦」になってしまった会話を「地上戦(事実質問)」に引き戻すことが大切だと述べています。
ポイントは、「考えさせるな、思い出させよ」ということだそうです。
「事実質問」の3つの要件
5W1Hの中の「why」「how」以外の質問(「いつ」「どこで」「誰が」「何を」など)
過去形、または現在進行形の質問
主語が明確で具体的であること
感覚的には、「あれこれ考えないと答えないもの」は思い込み質問であり、「思い出してパッと言えるもの」が事実質問だと覚えておくとよいそうです。
事実を問うメリット
事実を聞くことで、相手から最速で正確な情報を引き出し、思い込みと事実を切り離すことができるとのことです。 また、相手に「考えさせる」のではなく「思い出させる」だけなので会話のストレスが少なく、人間関係の改善や相手の自発的な気づき(行動変容)にもつながるそうです。さらに自分自身に使えば、メタ認知を高めるツールとしても効果的だといいます。
4. 「なぜ」を使ってもいい例外のタイミング
ちなみに、「なぜ」という言葉もどんな場面でも使ってはいけないわけではなく、以下のような例外のケースでは使っても差し支えないそうです。
質問を受ける本人にやる気があり、信頼関係がある場合
お互いの信頼関係が築けており、相手に前向きな意欲がある状態であれば問題ないそうです。
自分自身と向き合うとき
他者との会話ではなく、日記などで自分の思考を深めるタイミングでは役立つとのことです。
仕組みや「メカニズム」を考えるとき
人の感情ではなく、機械の不具合など純粋な仕組みの原因を探る場面には適しているそうです。
おわりに
相手を理解しようとするあまり、よかれと思って投げかけた「なぜ?」「どうだった?」が、かえって相手の心を閉ざしたり空中戦のモヤモヤを生んだりしているかもしれない。 本書の第一章を読みながら、私自身も身につまされる思いがしました。
「相手に考えさせるのではなく、思い出してもらう」
この視点を持つだけでも、コミュニケーションのハードルはぐっと下がる気がします。
まずは今日、身近な人との会話の中で、感情や解釈ではなく「具体的な事実」を問いかける意識を少しだけ持ってみようと思います。
第一章だけでもこれだけの学びがありました。また読み進めながら、対話のヒントを探っていきたいと思います。