「肩がこるんです」
整体院をしていると、本当によく聞く言葉です。
肩がつらい。
首まで重い。
仕事が終わる頃には、肩のあたりがガチガチになっている。
そんなとき、多くの人は自然にこう考えると思います。
「肩が悪いから、肩がこっている」
私も整体院を始めた頃は、そう考えていました。
肩が硬ければ肩を見る。
首が張っていれば首を見る。
そこをほぐしたり、身体のバランスを見たりする。
それ自体が間違っているわけではありません。
ただ、経験を重ねていくうちに、一つ疑問を感じるようになりました。
① 肩を見ても、肩こりの理由が分からないことがある
肩を施術すると、その場では楽になる。
ところが数日すると、また同じようにつらくなる。
そんな方は珍しくありませんでした。
「また肩が硬くなっていますね」
「仕事で姿勢が悪かったんでしょうか」
最初の頃は、そんなふうに考えていました。
でも、同じような肩こりでも、人によって様子がずいぶん違います。
一日中パソコンを使っていても、それほど肩がこらない人がいる。
逆に、特別に肩を酷使しているようには見えないのに、強く張っている人もいる。
左右でも違います。
同じ姿勢をしているはずなのに、右だけがつらい人もいれば、左だけがつらい人もいる。
それなら、
「姿勢が悪いから肩がこる」
だけでは説明しきれません。
少しずつ、
肩こりは「肩で起きていること」と「肩こりを生み出していること」を分けて考えた方がいいのではないか
と思うようになりました。
肩が硬い。
これは確かに今そこに起きていることです。
しかし、
なぜ、その肩が硬くなったのか。
これは別の問題です。
② 身体を広く見ると、違うものが見えてきた
そこから、肩だけを見る時間が少しずつ減っていきました。
もちろん肩や首も見ます。
でも、それだけではなくなりました。
背中はどうなのか。
呼吸は浅くなっていないか。
普段どんな姿勢で仕事をしているのか。
眠れているのか。
食事はどうなのか。
最近、仕事が忙しくなっていないか。
長時間緊張した状態が続いていないか。
そうやって範囲を広げていくと、同じ「肩こり」という言葉の中に、まったく違う背景があることに気づきます。
例えば、
仕事に集中すると何時間もほとんど身体を動かさない人。
眠りが浅く、朝からすでに身体が重い人。
忙しくなると無意識に力が入り続ける人。
肩よりも、むしろ背中全体が動きにくくなっている人。
本人は肩の話をしているのに、話を聞いていくと、
「そういえば最近、仕事がかなり忙しくて……」
という話が出てくることもあります。
この頃から私の中で、
「肩がこる=肩に原因がある」
という考え方が少しずつ崩れていきました。
肩こりという言葉は同じでも、
そこに至るまでの道筋は、一人ひとり違うのではないか。
そう考えるようになったのです。
③ 今は「肩こりですね」で終わらせないようにしています
18年間この仕事を続けてきても、
「肩こりだから、これです」
と簡単に答えられるものではないと思っています。
むしろ経験を重ねるほど、
分からないことを最初から決めつけない方がいい
と思うようになりました。
肩こりを感じているのであれば、そのつらさは確かにあります。
でも、
肩だけを見るのか。
身体全体を見るのか。
さらにその人の生活まで見るのか。
見える範囲を少し広げるだけで、考え方はずいぶん変わります。
これは肩こりだけの話ではありません。
腰がつらいから腰。
首がつらいから首。
頭が重いから頭。
身体は、そんなにきれいに部品ごとに分かれているわけではありません。
だから私は今、相談を受けるときに、
「どこがつらいですか?」
だけではなく、
「最近、どんな生活をしていますか?」
ということも大切にしています。
本人にとっては何でもないと思っていたことが、身体の状態を考える大切な手がかりになることもあるからです。
肩こりについて考えることで、私が学んだのは、
痛い場所だけを見るのではなく、その人全体を見ること。
第1回で書いた「止まらない咳」の経験と同じように、これも現在の私の身体の見方につながっています。
もし、
「ずっと同じ肩こりを繰り返している」
「いろいろ試したけれど、何を考えればいいのか分からない」
そんな状態であれば、一度「肩」から少し離れて、自分の生活全体を振り返ってみるのも一つの方法かもしれません。
答えを最初から決める必要はありません。
まずは、
「自分の場合は、いつからこうなったんだろう?」
そこから考えてみるだけでも、見えてくるものがあります。
※この記事は、これまでの施術・相談経験をもとにした考え方を紹介するものです。特定の症状の原因を診断したり、治療効果を示したりするものではありません。強い痛みや長く続く症状、急な体調変化などがある場合は、医療機関への相談を優先してください。