こんにちは!林田二郎です。
全く知らない土地へ旅に出たとき、細い路地の奥にひっそりと佇む、居心地の良い小さなパン屋を見つけた瞬間のことを想像してみてください。焼き立ての香ばしい匂いに誘われて扉を開けると、そこには外の喧騒からは想像もつかないほど穏やかで、計算し尽くされた美しい空間が広がっています。店主のこだわりが詰まった配置や、並べられた品物の見やすさに、思わず心が躍るものです。
私が日々手がけているウェブサイトの制作という仕事は、まさにインターネットという広大な白紙の上に、そんな新しい街の地図と魅力的なお店を描く作業にとてもよく似ています。
世の中にはたくさんの素晴らしい技術や、熱い思いを持った企業があります。しかし、それらがどれほど魅力的であっても、どこにあるのか分からなかったり、入り口のドアが重すぎて開けられなかったりすれば、誰にも届かない幻の場所になってしまいます。だからこそ、訪れる人を優しく迎え入れるための、舗装された道路と看板が必要になるのです。
ウェブサイトを作る上で、私が最も大切にしているのは、その場所を訪れる一人の旅人の足取りを徹底的に想像することです。
初めてサイトを訪れた人が、迷うことなく目当ての品物にたどり着けるか。文字の大きさにストレスを感じず、まるで心地よい音楽を聴いているかのようにスムーズに画面を読み進められるか。それは、お店の通路の幅を決めたり、商品の棚の高さにこだわることと全く同じです。見栄えの美しさはもちろん、使いやすさという目に見えない親切さを画面の隅々にまで散りばめていきます。
全体の印象を左右する色や形の選定も、ただの流行りだけで決めることはありません。その企業が持つ独自の空気感や、大切にしている歴史をじっくりと聞き取り、それを一番引き立てる表現を探し出します。
十年という時間をこのデザインの世界で過ごしてきましたが、技術がどれほど進化しても、このものづくりの本質が変わることはありません。それは、画面の向こう側にいるのも、そしてその画面を作っているのも、どこまでも人間だということです。
デザインとは、誰かの頭の中にある大切な宝物を、他の誰にでも届く言葉や形へと翻訳する作業です。デジタルの世界に浮かぶ四角い画面の中に、どれだけ温かい人間の気配と、迷わない親切さを残せるか。訪れた人が自然と笑顔になり、また立ち寄りたくなる。そんな新しくて心地よい街の拠点を、これからも一つずつ丁寧に、この世界に広げていきたいと思っています。