こんにちは!林田二郎です。
激しい夕立に見舞われたとき、偶然見つけた古いバス停の小さな屋根の下で、静かに雨が上がるのを待っていたときのことを覚えているでしょうか。目の前を真っ白に染める雨のカーテンと、アスファルトを叩く激しい音に囲まれながら、その小さな屋根の下だけには、どこか守られているような不思議な静寂が流れています。世界から切り離されたような小さな空間の中で、私たちはただ、雨粒が葉の先からこぼれ落ちる様子をじっと眺めています。
私が日々向き合っているウェブサイトの制作という仕事は、インターネットという果てしない嵐のなかに、そんな誰もがほっと一息つける雨宿りの駅を新しく建てる作業によく似ています。
画面の中に並ぶ言葉や写真、そして四角いボタンの数々は、その駅を形作るための小さな柱や、ベンチのようなものです。どれもが訪れた人を温かく迎え入れ、必要な情報をそっと手渡すためにそこに置かれています。しかし、ただ柱を不規則に立てたり、ベンチを隙間なく詰め込んだりしただけでは、心地よい雨宿りの場所にはなりません。激しい雨風をしのぎつつ、外の景色をゆったりと眺めるためには、計算された構造と、息を抜くための十分な空間が必要になります。
ウェブサイトにおける構造とは、ユーザーの視線を迷わせないスムーズな配置のことであり、雨音を遠くに聞きながら過ごす空間の心地よさは、画面に十分な余白を設けることにあたるのです。
私はデザインを組み立てるとき、いつも頭の中で一人のずぶ濡れの旅人を思い浮かべます。その人が初めてサイトの扉を開いた瞬間に、どんな風に緊張が解け、どの言葉に最初に目を留めるのか。まるで温かいお茶を差し出すように、ユーザーの心の動きを細かく想像しながら、画面の要素を一画素単位で配置していきます。ある場所では立ち止まって言葉の意味を深く味わってもらい、またある場所では安心した気持ちで次の画面へと進んでもらう。その目に見えない心地よい流れを作ることが、私の役割です。
全体の印象を左右する色や形の選定も、ただの流行りだけで決めることはありません。その企業が持つ独自の空気感や、大切にしている歴史をじっくりと見つめ、それを一番引き立てる表現を探し出します。
十年という時間をこのデザインの世界で過ごしてきましたが、技術がどれほど進化しても、このものづくりの本質が変わることはありません。それは、画面の向こう側にいるのも、そしてその画面を作っているのも、どこまでも人間だということです。
デザインとは、誰かの頭の中にある大切な宝物を、他の誰にでも届く言葉や形へと翻訳する作業です。デジタルの世界に浮かぶ四角い画面の中に、どれだけ温かい人間の気配と、迷わない親切さを残せるか。訪れた人が自然と笑顔になり、また立ち寄りたくなる。そんな新しくて心地よい雨宿りの駅を、これからも一つずつ丁寧に、この世界に広げていきたいと思っています。