AIの仕組みづくりは、3回目までは赤字です
先に結論を書きます。
定型書類をAIで作る仕組みは、初回に2時間前後かかり、3回目あたりでようやく元が取れます。それより手前は、どう計算しても持ち出しです。この話が抜けたまま「AIで効率化」だけが降りてくるので、現場は動きません。
■ 導入を決める側に、材料が一つも渡っていない
管理職の立場でこれを進めようとすると、判断の材料がどこにもないことに気づきます。
外から聞こえてくるのは、うまくいった話ばかりで、作業が何分の一になったという数字は出回っていても、その仕組みを誰が何時間かけて作ったのかまでは、たいてい書かれていません。一方で現場に降ろすと、返ってくるのは「試しました。便利ですね」で、その先が続かない。翌月には元のやり方に戻っています。
誰も嘘はついていません。
現場の言い分にも理があって、目の前の締切は動きませんし、新しいやり方を覚える時間は、その日の予定のどこにも入っていないからです。だから「あとで落ち着いたら」になり、落ち着く月は来ません。指示を出した側は動かないことに苛立ち、受けた側はまた仕事が増えたと感じ、どちらも間違っていないのに、半年経っても何ひとつ変わっていない会議室が、あちこちにあります。
止まっている理由は、やる気ではありませんでした。初回にかかる時間を、誰も見積もっていないことです。
■ 内訳は4ブロック、合計2時間10分だった
私が「月次報告」を仕組みにしたときの記録です。
ストップウォッチで測ったわけではなく、着手と終了の時刻を手元のメモに残した程度の精度なので、そのつもりで読んでください。
材料をそろえるのに40分。過去3か月分の完成品と、それを書くとき使った元データを引っ張り出す作業です。次に型を決めるのに30分。過去の3本を見比べて、見出しの並びと1項目あたりの行数を書き出しました。試して直すのに40分。手順を1枚に書き残すのに10分。合わせて2時間10分でした。
このうち、いちばん短縮できるのは3つ目のブロックで、私は2回目の試行でこれを使いました。
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以下のAとBを比べてください。
A:私が過去に自分で書いた完成品
B:あなたが今回作った下書き
Bに足りない要素と、Bにある余分な要素を、それぞれ3つまで挙げてください。
【答え方】
・文章の良し悪しではなく、記載があるかないかで答える
・直した文章は出さない
・Aにしかない言い回しがあれば、そのまま引用して示す
【A】
(過去の完成品をここに貼る)
【B】
(今回の下書きをここに貼る)
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この2時間10分のブロックごと、代わりに引き受ける出品を出しています。扱っている書類と、いま何分かかっているかを伺ったあと、プロンプト一式、入力テンプレート、担当者が代わっても回せる手順書を、まとめて一式に仕立てます。価格は1件10,000円。初回の持ち出しが、そのまま外注費に置き換わる形になります。
自分の目で見比べていたときは、違和感はあるのに何が違うのか言葉にできず、そこで20分ほど溶かしていました。差分を先に言わせると、直す場所が最初から決まっているので、同じ工程が5分で終わります。
回収の計算はこうなりました。この書類にはもともと90分かけていて、仕組みを通すと25分です。1回あたり65分浮きます。初回の130分を65で割ると2回。つまり3か月目から黒字です。議事録のほうは初回に3時間かかり、1回あたりの短縮が40分だったので5回目で回収になり、こちらは週1回の会議ですから、1か月半で追いつきました。
数字はどちらも私の書類での実測なので、そのまま当てはめないでほしいのですが、回数と1回あたりの手間をご自身の書類に置き換えれば、同じ形で計算できます。
■ 年12回に届かない書類は、仕組みにしないほうがいい
この計算には、そのまま裏返しの結論が含まれていて、回数が少ない書類は作るだけ損だ、ということです。
年に2回の資料は、回収まで数年かかります。しかも、その間に書式が変わります。担当が代わることもあります。私の目安は年12回で、月に1度以上まわってくる書類だけを仕組みにしていて、それ以下は、その都度AIに頼んで、その場で直したほうが早いと考えています。
もう一つ、回数が足りていても向かない書類があります。毎回まったく違う判断が要るものです。金額の妥当性や、相手との関係を踏まえた言い回しは、型に落とした瞬間に嘘になり、それでも無理に仕組みへ入れてみたときは、点検の手間が増えて、かえって時間が伸びました。
どの書類から手をつけるかの見立ても含めて、10,000円(1件)で組み立てをお受けしています。もし今、社内で「AIで効率化を」と言われているなら、その書類は年に何回まわってくるか、先に数えてみてください。