ご覧いただきありがとうございます!ホッチキス前田と申します。
Vtuber向けのシチュエーションボイスなどの台本制作業をスタートしたいと考えており、サンプルを兼ねてフリー台本を制作しました。
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あらすじ
閉店三十分前の、古い喫茶店。毎晩いちばん最後にやって来る常連の男は、今夜も穏やかに席につき、淹れたてのコーヒーを片手にいつもの世間話を始める。あなた(店員)の小さな変化にもよく気づく、優しくて少し過保護な——そんな彼との、静かで心地よい時間。けれど、街を騒がせる連続殺人事件の話題になったとき、彼はまだ報道されていないはずの「犯行時刻」を、何気なく口にしてしまう。和やかだった空気が、ゆっくりと反転していく。声の大きさも口調も変えないまま、彼はあなたに“いつも通り”を求めて——女性向けダークサスペンスシチュボ・全年齢。
本編
(SE:扉が開く、ドアベル)
(ほっとしたような声で)
「こんばんは。……ああ、よかった。今日も間に合った」
「いつもの、お願いします。……ええ、ミルク多めで」
(世間話の軽いトーンで)
「すみません、いつもギリギリに来ちゃって」
「でも僕、この店のこの時間が、いちばん好きなんですよ。お客も、僕だけですし」
「ここに座ると、ほっとするんですよね。……一日の最後に寄れないと、なんだか落ち着かなくて」
(SE:コーヒーが置かれる)
(小さく感心したように)
「……ん。今日のも、美味しいな。……淹れ方、変えました? ……ふふ、やっぱり。分かりますよ、それくらい」
(SE:カップをソーサーに置く)
(懐かしむように)
「思えば、もうずいぶんになりますね。僕がこの店に通い始めて。……半年? いや、もう少しかな。……あなたが新しいエプロンにした日も覚えてますよ。紺色の。今のそれです」
(ふと心配したように)
「……ところで。最近、少し疲れてません? ……ああ、やっぱり。……笑った顔が、いつもより少しだけ、無理をしてる気がして」
「特に木曜は、いつもお疲れみたいですね。……なるほど。発注の日、ですか。それでいつも遅くまで?」
(店員の戸惑いを察して、軽く笑って打ち消すように)
「ああ、いえ。たまたま気づいてしまっただけなんですよ。本当に、たまたま」
(思い出したように、少し声を弾ませて)
「そうだ。日曜に見かけましたよ、駅前の本屋で。……二階の、文庫の棚のところ」
(わずかに距離の近い褒め方で)
「茶色いコート、着てましたよね。よく似合ってました。……お店の外のあなたって、なんだか新鮮で」
(店員の表情が硬くなったのを察し、楽しそうに小さく笑って、誤解を解くように)
「どうしました、そんな顔して。……いやいや、偶然ですよ、偶然。僕もあの本屋、よく行くので」
(話題を変えるように)
「そういえば、最近、物騒でしょう。ニュース見ました?」
(声をわずかに落として)
「ええ、その事件。……もう三人目だそうですよ。被害に遭ったのは、みんな……女性だったとか」
「物盗りではないようですね。財布もスマホも、残ってたって。……目的が分からないのが、いちばん怖いですよね」
「あなたも他人事じゃないかもしれませんよ。……帰りはちゃんと、人通りのある道を通ってくださいね?」
(心配するように)
「……そうですか。それならいいんですが……。でも、気をつけてくださいね。本当に。あなたに何かあったら、この店に来る理由がなくなっちゃうので」
(穏やかなまま、諭すように)
「僕……心配なんです。ああいう事件はね、夜に起きるんです。決まって」
(何でもないことのように、するりと)
「先週のだって……日曜の夜の、ちょうど——今くらいの、時間でしたから」
「…………」
(顔を上げて、不思議そうに)
「……どうしました? ……手、止まってますよ」
(きょとんとして)
「……あれ。……いま僕、何か変なこと言いました?」
(思い当たる。長めの間。声から温度が消える)
「…………ああ。…………そっか」
「犯行の時間までは、報道に出ていませんでしたね」
(こらえきれず、少し不気味に笑いながら)
「ふ……ふふ。……あーあ。……バレちゃったなあ」
(声量は変えない。むしろ優しく)
「ふふふ……そんなに固くならないでください。……ああ、スマホを探してるんですか? いつもレジの裏に置いてますよね。通報されますか? ……いいですよ。別に止めません」
(わざとらしく)
「でも、大丈夫かなあ……僕、あなたの家を知ってます。アパートの二階の、角の部屋。電気が消えるのは、いつも零時過ぎ。……寝る前にいつも窓のカギを確かめるのは、いい習慣です……そのまま続けるといいですよ」
「その指の絆創膏の理由も知っていますよ。……昨日の夜、台所で切ったんですよね? 包丁の音が、途中で止まったから」
(本当に困っているような、無垢な声で)
「もし警察に話しても、すぐには逮捕されません。証拠も何もありませんからね。逮捕されるまでの間……僕、うっかりあなたの家に行ってしまうかもしれません。どうしましょう」
(不気味に、やさしく)
「……ふふ。しないんですね、通報。……好きですよ。あなたの、そういう賢いところ」
(初めて素に近い声で)
「……不思議なんですけど。僕、この店にいる間だけは、頭のなかが静かなんです。……外だと、ずっとうるさいのに。ざわざわ、ざわざわ……って。……ここであなたと話している間だけ、それが、止むんです」
「だから、あなたに知られてしまったのは残念ですよ。……この店にいる間だけは、僕、何も壊さずにいられた……この30分のために生きてたようなものなのに」
(不気味に笑うように)
「でも、大丈夫。……心配しないでください」
(静かに)
「あなたがここで、いつも通りにしてくれるうちは——殺したりしませんから」
「……約束しますよ。僕、約束は守る方なんです」
(SE:小銭を置く音)
(いつもの様子に戻って)
「……ごちそうさまでした。お代、ここに置きますね」
(SE:椅子を引く)
(立ち上がって、コートを羽織りながら)
「じゃあ、また来ます。……閉店30分前に」
(SE:扉が開く、ドアベル)
「ああ。……今夜は、まっすぐ帰ってくださいね。…………物騒ですから」
完