前回は、ネイティブスピーカーの「流暢さの魔法」に惑わされず、その背後にある論理(ロジック)を見抜く重要性についてお話ししました。
しかし、海外へ行くと、綺麗な英語を話すネイティブだけではありません。むしろ、世界中の優秀な非ネイティブ英語話者たちと日常的にやり取りする場面が数多くあります。
同じ英語を話しているはずなのに、相手によって「話が通じる感覚」がかなり異なってきます。
今回は、私が海外業務の現場で接してきた各国のビジネスパーソンを例に、英語の使い方から見えてくるコミュニケーションスタイルの違いについて考えてみたいと思います。
息抜き程度に、リラックスしてお読みいただければと思います。
(※以下はあくまで私自身の実務経験に基づく観察です。国籍だけで人を単純化できるものではなく、教育背景や個人の性格によって異なる点はあらかじめご了承ください。)
①アメリカ
カードは比較的オープン(ただし、期待値は少し盛る傾向あり)
アメリカ系ビジネスパーソンは、典型的なローコンテクスト文化です。
つまり、言いたいことは、かなり言葉にする。
裏を読む必要が比較的少ないため、日本人にとっては実はかなり付き合いやすい相手と言えます。
英語の特徴
• 流暢でエネルギッシュ
• Small talk を非常に重視
• 個人的には、日本人にとって比較的聞き取りやすい英語を話す(英語ネイティブの中では、という意味です)
本題前の雑談は単なる儀礼ではありません。
信頼構築の一部です。
本音の読み方
賛成か反対か、何を求めているのかは比較的オープンです。
ただし注意点があります。
彼らは自己主張やプレゼン能力を重視する環境で育つため、まだ中身が完全に固まっていなくても、自信を持って大きく語れる人が少なくありません(前回お話しした通りです)。
その結果、期待値を少し盛って話す傾向があります。
つまり、「勢い = 内容の完成度」とは限りません。
対策はシンプルです。
笑顔で聞きつつ、最後に静かに確認する。
• 数字は?
• 締切は?
• 誰が担当する?
いろいろ枝葉の話が飛んできますが、基本的にはこの3点を押さえれば、大きなズレは防げます。
私も最初の頃は、勢いに押されて何となく分かったふりをしてしまったこともありました。
こちらが少し自信なさげにしていると、話の途中で
“Do you follow me?”
“Does that make sense?”
などと確認してくれることがあります。
聞かれた人によっては、馬鹿にされていると感じるようです(笑)。
ここは、むしろ確認のチャンスです。
不明点があれば、遠慮なく具体的に聞き返してください。
②インド
脳が一瞬バグる、高度な「後出し」スタイル
多くの日本人が、最初の数分で耳と心を折られやすいのがインド英語です。
私も正直、最初は3割も聞き取れませんでした(笑)。
英語の特徴
• 独特のアクセント
• 非常に高速で話す人がいる
• 情報密度が高い
慣れないうちは、聞き取るだけでかなり疲れます。
本音の読み方
私が印象的だったのは、最終的な着地点を最初からすべて明かさないケースが多いことです。
まず高めの要求や広い論点を提示し、相手の反応を見ながら、少しずつ本題に近づいていく。
その結果、こちらは途中でこうなります。
「結局、何が本当に言いたいんだ?」
私は半分冗談で、これを「三重トラップ」と呼んでいます。
1. 発音の壁
2. 意図の壁
3. ジェスチャーの壁
特に有名なのが、肯定時の独特な首の動きです(笑)。
目の前で
“Yes, of course!”
と言いながら首を横に揺らされると、脳が軽く混乱します。
重要なのは、言葉そのものより、彼らの Bottom line(本当の着地点)はどこかを意識し続けることです。
③中国
ロジックで武装した、構造化の達人
「中国人の英語はイントネーションが独特で苦手」そう感じる人もいます。
しかし、慣れると非常に話が追いやすい相手でもあります。
英語の特徴
• 無駄な装飾が少ない
• 構造が明確
• 主張がシャープ
本音の読み方
国際ビジネスの第一線で英語を使う中国系プロフェッショナルには、過酷な競争を勝ち抜いてきた、非常に優秀な人材が多い印象です。
彼らの強みは、論理構造の明快さです。
基本フォーマットは、
主張 → 根拠 → 結論
この流れが非常にクリア。
また、同じ漢字文化圏ということもあり、日本人にとって比較的理解しやすい思考様式でもあります。
ただし、「分かりやすい = 優しい相手」では決してありません。
こちらのロジックに穴があれば、そこを鋭く突いてきます。
中国相手には、感情論よりも論理の盾が必要です。
④韓国
日本人に近い情緒を持つ、熱いパッション型
私の経験上、韓国のビジネスパーソンは、日本人にとって比較的深い信頼関係を築きやすい相手です。
韓国語と日本語は同じSOV語順であり、儒教文化のバックグラウンドも共有しています。
そのため、「年長者を立てる」「上下関係を意識する」「空気を読む」といったコミュニケーションのOSに共通点があります。
日本人と思考様式がかなり近い、と感じることもあります。
英語の特徴
• 結論がストレート
• スピード感がある
• 熱量が高い
本音の読み方
韓国人男性には兵役義務があります。その影響もあってか、精神的にもタフな人が比較的多い印象です。
議論が白熱すると、感情表現が一気に強くなることがあります。
日本人はこれを見ると、「あ、対立したかも…」と身構えがちです。
しかし、相手にとっては単なる真剣なディスカッションである場合も少なくありません。
重要なのは、「感情の強さ = 関係悪化」ではない、と理解することです。
熱量にのまれず、こちらも芯を持って向き合うことが大切です。
日本人としては、比較的長い付き合いになりやすい相手でもあります。
➄トルコ
欧米ロジックとアジアの情が同居するハイブリッド
最後はトルコ(チュルキエ)。
ここも実は、日本人に比較的親和性が高い国の一つです。
理由の一つには、個人的には言語も関係していると考えています。
トルコ語は日本語と共通項が多くあります。語順も同じSOVです。
もちろん同じ言語ではありませんが、発想の近さを感じる場面があります。
英語の特徴
国際ビジネスの表舞台に立つトルコ人は、高学歴で海外経験が豊富な層が多く、進め方はかなり欧米型です。
• 結論ファースト
• 論点が明確
• 意思決定はドライ
本音の読み方
最初はかなり合理的です。
ドライで、鋭い。
しかし、関係が深まると急に人間味が見えてくることがあります。
このギャップが面白い。
象徴的なのが、チャイ(紅茶)です。
オフィスに客人が来ると、とりあえず熱々のチャイが出てきます(笑)。
(チャイでない場合は、有名なトルココーヒーです)
最初は鋭いロジックで話していた相手が、チャイを飲み終える頃には、急に「おもてなしモード」に入ることも珍しくありません。
また、日本に好意的なイメージを持つ人も比較的多く、
• オスマン帝国
• マスタファ・ケマル・アタテュルク
のような話題を持ち出し、トルコ人の自尊心をくすぐれば、もう同志です(笑)。
こうして世界の英語を眺めていると、ある一つの真実に気づきます。
アメリカ人のように流暢でなくてもいい。
インド人のように爆速で話せなくてもいい。
中国のビジネスパーソンが実践しているような、明確な論理構造さえあれば、私たちは世界と十分に渡り合えます。
世界のビジネスパーソンは、こちらの発音が多少拙くても、ロジックが通っていれば敬意を払います。
時折、的確で洗練された語彙を使えると、相手の反応が変わることもあります。相手もこちらに合わせて、その語彙をずっと使い続けます (笑)。
逆に、どれだけ発音が綺麗でも、論理が崩れていれば信頼を得るのは難しいでしょう。
英語力とは、単に綺麗な発音で話す力ではありません。
「英語が上手ですね」という言葉だけで満足してしまうのは、少しもったいない気がします。
とはいえ、英語学習の価値は、もちろんビジネスだけではありません。
• 英語でニュースを見たい
• 映画を字幕なしで楽しみたい
• 洋書を読みたい
• 海外の人と自然に話したい
本来はそうした動機の方が、はるかに多いでしょう。
日本語ではない外国語を通して新しい世界に触れたい――その気持ちこそが、語学上達の最大の原動力だと私は思います。
言語を学ぶ手段や方法は無限にあります。
あらゆる試行錯誤を楽しみながら、自分の理想に少しずつ近づいていく。
それこそが、語学学習の醍醐味なのですから。
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