部下に伝えたつもりが伝わっていない。すれ違いを減らすコツ~「ではなく」をあえて加える”クジラ話法”を活用した部下育成,1on1~

部下に伝えたつもりが伝わっていない。すれ違いを減らすコツ~「ではなく」をあえて加える”クジラ話法”を活用した部下育成,1on1~

記事
ビジネス・マーケティング
「ちゃんと伝えたはずなのに、なぜか思っていたのと違う・・・」後輩に仕事をお願いしたとき、そんな経験はないだろうか。以前の私は、そんなとき「もっと私から具体的に伝えればよかった」と反省していた。

しかし、具体性だけの話ではないと思うことがあった。ある後輩とのやり取りから、同じ言葉を使っていても、自分と相手で思い描いていることが違う場合があると気づいた。それ以来、私は依頼やアドバイスをするとき、あえて「〜ではなく」という言葉を加えることがある。

私が勝手に「クジラ話法」と呼んでいる伝え方だ。

「結論から伝えてほしい」とアドバイスした日

ある日の夕方、後輩から仕事の進捗報告を受けていた。その後輩は、いつも丁寧に、確認したことや調べたことも、細かく共有してくれる。ただ「報告を聞き終えるまで、結局何を伝えたいのかわからない・・・」と、少し私は困っていた。

なので、その場で私からこんなアドバイスをした。「次からは、結論から伝えてほしい!」すると後輩は「確かにそうですね。意識してみます!」と答えてくれた。

数日後、再び進捗報告を受ける機会があった。すると、後輩はさっそく実践してくれていた。「結論から言うと、予定どおりに終わりそうです!」と進捗の報告をしてくれた。

たしかに、以前よりも話し始めが明快になっている。ところが、少し気になることがあった。「予定どおりに終わりそう」ということはわかったけど、今、私に相談したいことや判断してほしいことはないのだろうか・・・?

同じ「結論」でも、思い描いていたものが違った

「予定どおりに終わりそうです」と聞いて安心したものの、詳しく聞くと、一部の作業で遅れが生じていた。後輩はその遅れを把握していて、対応も考えてくれていた。ただ、最初の「予定どおりに終わりそうです」という言葉からは、私には残念ながらその状況が見えてこなかった。

そこで、なぜ後輩がその”結論”にしたのかを聞いてみた。すると、全体としては期限に間に合う見込みだったので、「予定どおり」と伝えたのだと教えてくれた。

なるほど、と思った。”結論”という同じ言葉でも何を指すかが異なっていたのだ。後輩にとっての”結論”は、「仕事が予定どおりに終わりそうかどうか」だった。一方、私が最初に知りたかったのは、「今、何か判断や対応が必要なことはあるか」だった。(例えば「期限には間に合う見込みですが、一部で遅れが出ています。対応方法について一つ相談したいです」といった報告を期待していた)

もちろん、後輩の報告が完全に間違っていたというわけではない。「結論から伝える」というアドバイスを受け止め、実践してくれていた。むしろ、その変化はうれしかった。それでも、私が期待していた報告とは少し違っていた。

足りなかったのは、言葉の輪郭だった

この出来事までは、アドバイスが伝わらなければ、もっと具体的に説明すればよいと思っていた。でも足りなかったのは、行動の具体性だけではなかった。私が考える「結論」と、後輩が考える「結論」。その違いを、言葉にできていなかったのだ。

例えば、あのとき、「最初に進捗の良し悪しを伝えるだけではなく、私に判断してほしいことや、相談したいことがあれば、それを先に伝えてほしい」と話していたらどうだっただろう。少なくとも、私が何を知りたいのかは、もう少し明確になっていたと思う。

「何をしてほしいか」を伝えるだけではなく、「何との違いを意識してほしいか」も伝える。この伝え方を私は勝手に「クジラ話法」と呼んでいる。

「クジラとはどんな生き物ですか?」

なぜクジラ話法と私が呼んでいるか、について話したい。突然だが「クジラとはどんな生き物ですか?」と聞かれたら、どう相手に伝えるだろうか。

例えば「クジラは肺で呼吸します」「クジラは子どもを産みます」「クジラは自分で体温を保ちます」というだけでも、クジラの特徴は説明できている。

でも、こんなふうに伝えたらどうだろう。「エラで呼吸するのではなく、肺で呼吸します」「卵を産むのではなく、子どもを産みます」「周囲の水温に体温が左右されるのではなく、自分で体温を保ちます」

それも、一文の後半で伝えている特徴は、先ほどと同じだ。違うのは、その前に「〜ではなく」が加わったこと。それだけで、海を泳ぐクジラが、同じ海にいる魚とはどれほど違う生き物なのかが見えて、説明として分かりやすい。

このように、「何であるか」だけでなく、「何ではないか」を対比させることで、伝えたいことの輪郭がはっきりする。私はこの考え方を、勝手に「クジラ話法」と呼んでいる。

伝えるときも、聞くときも
この、輪郭をはっきりさせたほうが良いのは、後輩に何か指示したりアドバイスをするときだけではない。例えば、後輩が私に「もっとお客様と、直接やり取りする仕事を増やしたいです」と話してくれたとき。

「お客様と関わる仕事を増やしたいんだね」と受け止めるだけでなく、「お客様からの問い合わせを受けて対応するのではなく、自分からお客様に提案する機会を増やしたいってこと?」と聞いてみる。

すると、「そうなんです!」と返ってくることもあれば、「いや、実はそうではなくて……」と、思いがけない考えを聞けることもある。

どちらも、相手の希望をもう一歩理解できたようで、うれしい瞬間だ。自分の考えを伝えるときにも、相手の考えを理解するときにも、「~ではなく」を考えると、言葉の輪郭がはっきりする。

あの日、後輩との報告ですれ違った経験から、そんなことを意識するようになった。これからも、「何であるか」だけでなく「何ではないか」にも目を向け、お互いが思い描いていることの輪郭を明確にしながら、後輩との対話をより深めていきたい。
サービス数100万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す