「もう限界、女性を殺すかも」男が警察に相談→警察が女性に知らせる→女性が恐怖を感じ”脅迫罪”成立、男を逮捕(山形・酒田市)
この事例については賛否が分かれそうな事例ですので、私なりに検討してみました🤔
今回の事案は、刑事法学の観点からも非常に興味深く、かつ実務上の判断が分かれる可能性のある極めて「異例」なケースです。
脅迫罪(刑法222条)の構成要件に照らして検討します。
1. 脅迫罪の構成要件の検討
脅迫罪が成立するためには、一般に以下の要件を満たす必要があります。
① 害悪の告知◎
内容: 本人の生命、身体、自由、名誉または財産に対し、危害を加える旨を通知すること。
本件の検討: 「女性を殺すかも」という発言は、明らかに生命に対する害悪の告知に該当します。
② 告知の方法(伝達経路)△
原則: 告知は直接本人に対してなされる必要はありませんが「本人に伝わることを予見(認識)」している必要があります。
本件の論点: 男は警察官に「相談」という形で発言しており、通常、警察への相談内容がそのまま相手方に伝えられることは稀です。
しかし、警察が「女性の保護のために伝えるしかなかった」と判断するほどの切迫した内容であった場合、男に「警察を通じて相手に伝わる可能性」の認識があったかどうかが争点となります。
③ 畏怖(いふ)せしめるに足りるもの◎
基準: 告知された害悪の内容が、一般人を畏怖させるに足りる程度のものである必要があります。
本件の検討: 「殺す」という具体的な殺意の表明は、客観的に見て強い恐怖を感じさせるに十分な内容です。
実際に女性が「恐怖を感じた」ことで、犯罪の客観的状況が完結したと警察は判断しています。
2. 警察の介入と「犯罪の創設」という議論
この事件が「異例」とされる最大の理由は、警察の伝達行為が犯罪成立の「スイッチ」となった点にあります。
警察の立場: 警察には犯罪の予防の観点から被害者への連絡が必要であると判断し、警告のために連絡した。
弁護側の想定される反論: 男が「外部には漏らさないはずの警察官」にのみ心情を吐露したのであれば、本人に伝える意思(告知の故意)が欠如していたと主張する余地があります。
本件は、警察が「被害者の安全」を最優先した結果、脅迫の事実が完成してしまった特殊な事案です。
実務上は、男に「警察が動けば相手に警告が行く」ということへの予見可能性があったかが、有罪・無罪を分ける鍵となるでしょう。