【心理考察】占い師が描く、少女の葛藤と再生の物語『AsIs物語 山城虹奏編』第1話

【心理考察】占い師が描く、少女の葛藤と再生の物語『AsIs物語 山城虹奏編』第1話

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普段の鑑定の根源にある、私の人間観や心理描写を物語にしました。私の言葉の温度感を感じていただければ幸いです。

プロローグ


2027年3月29日、7人組アイドルグループAsIs(アズイズ)はデビュー3周年記念日となるこの日。日本武道館でのワンマンライブが行われることになっていた。

デビュー前から日本武道館でのワンマンライブが夢と語ってきたメンバーにとって念願だった夢が叶う瞬間でもあり、本当に日本武道館ほどの大きな会場を埋められるのか不安もあった。
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ただライブをやるだけでは意味がない、満員にして初めて成功なんだ。そう思いながら必死に告知も行った。それでも当日を迎えてみなければ分からないことだけに不安は消えなかった。

そんな中、開演時刻の19時を間近に控えて影アナと言われるメンバーによる注意事項の読み上げを行うと、開演が待ち切れないファンによる声援が地響きのように振動となって舞台裏で待機していたメンバーに観客の多さを伝えた。

それは日本武道館という夢の舞台で多くのファンが駆けつけてくれたという喜びと同時に、今まで感じたことがないぐらいの緊張感が彼女たちを包んでいた。

開演時刻の19時になり、いよいよ開演の時間を迎えてメンバー7人とプロデューサーのななむぎは手をつなぎ円陣になる。

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ななむぎはメンバーに語りかける「夢の日本武道館まで来たんだから楽しまなきゃ損だよ。悔いのないように全力でやってきな。」

「はい。」7人は力強くそう返事をすると、ななむぎは少し安心した表情を浮かべ手を離した。

SE(サウンドエフェクトの略。いわゆる入場曲。)が流れると、AsIs恒例の円陣での掛け声が始まる。

せーのっ、雨野せい、北川姫子、瀬乃ひより、星野夢空、南世菜、桃井美月、山城虹奏、AsIs。君の好きを否定なんかしない、ありのままの姿でいい。AsIs行くぞー。おー!

差し出した右手を上に振り上げると不思議なもので自然と覚悟が決まる。

そして、いよいよ憧れの日本武道館の舞台に向かって一歩を踏み出し始めた。

※この物語はフィクションです。


1話 山城虹奏(やましろにいな) 私のやりたいこと

高校3年の6月。

今後の進路について担任の先生と二者面談が行われることになった。クラスの全員がやるってわけじゃなくて、成績優秀で推薦が取れそうな子とか、スポーツ推薦で大学からスカウトが来てる子とか、そうじゃなくても志望校がはっきりしてる子とか、そういう子は除いて私みたいな進路がはっきりしてない人だけがやる面談だった。

「山城、進路はどうするつもりなんだ。」

「う〜ん、まだ未定です。」一応、考える振りをしてから言ってみたが、実際のところは何も考えていなかった。

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「未定ってお前、進学するのか、就職するのか、そろそろ決めないと。どっちにしたって夏休みが勝負なんだぞ。まずはこれからどうしたいのかを決めないと始まらないんだから。」

それが正論であることは虹奏も分かっていた。同級生もこの時期になれば自然と進路の話になるし、聞きたくなくても勝手に情報が耳に入ってくる。そりゃあ、3年の6月にもなれば進路を決めなきゃいけない時期だってことぐらい私にだって分かる。

でも、多くの同級生がそうであるように、やりたいことが見つからないからとりあえず大学とか、専門学校とか、そういう決断はしたくなかったし、ましてや就職なんて考えられないと思った。

中学のときは些細なことから人間関係がこじれて不登校の時期があった。いま思い出しても涙が出てくるぐらいつらい出来事で、自分でもよく死ななかったなと思う。

原因は、私がたまたま同じクラスの男子と話しをしていたところを他の女子に見られていたみたいで、その男子がクラスでもかっこいいと評判のイケメンだったこともあって反感を買ったらしい。まぁ、なんというか、こういうのってくだらないと思うんだけど、気がついたら学校に私の居場所はなくなっていた。

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最初は黒板に相合い傘が描かれていたりしたものから始まって、次第にSNSでも嘘ばっかり書かれるようになった。あとから分かったことだけど、SNSで私の悪口が書かれてるよと親切ぶって私に教えてくれた子が実はその子の自作自演で悪口をバラまいている張本人だと分かった。同じダンス部で仲良くやれていると思っていただけにショックは大きかった。

そんな中学時代を過ごしていたから、高校は嫌いな同級生がいかない学校を優先して選んだ。高校生活も知ってる子がいなくて不安もあったけど、コロナ禍もあって学校ではマスク着用は絶対、私語は厳禁で、修学旅行もなしというのは正直私には都合がよかった。

誰ともコミュニケーションを取らずに静かにしていても全部コロナのせいにしてしまえば済んだから。

しかし、高校3年にもなってくるとコロナ禍も徐々に終わりを迎えて、これから選ぶ進路は高校と同じようにはいかないことはなんかこう、感覚的に分かった。

だから、高校卒業後の進路は適当には決めたくないと思った。

私にとって好都合だったのは、そんな私の優柔不断な性格を家族は理解してくれていたこと。中学の時も、無理して学校に行かなくていいと言ってくれていたし、高校卒業後の進路についても本音で話したら1年ぐらい浪人するのはよくあることだから焦って決めなくていいと言ってくれた。

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学校の三者面談でも結論を急ぐ担任の先生に対して、私に代わって進学も就職も決めずに卒業することを説得してくれたのは母親だった。

というわけで、気がつけば受験勉強をするわけでも、就職を目指すわけでもない浪人生になるってことが私の中で決まった。

同級生が続々と進路を決めていく姿を見るのは複雑な気持ちもあったけど、コロナ禍であんまり友達同士の交流がなかったのは本当に私にとってはちょうどよかったと思う。

高校を卒業して19歳の誕生日を迎えた7月16日。早く大人になりたいような、あと1年で20歳になって今のような中途半端な状態も許されなくなるのかなという怖さとが入り混じったような感覚があった。

9月になり学生だったら2学期が始まってるんだなと思うと、自分の方向性がまだ見つかっていないことへの焦りが出てきた。

そんな私の心境を察したのか、珍しくばぁばが二人でお昼ごはんでも食べようと誘ってくれた。ばぁばは心配性な私とは違って、いつも私の気持ちをポジティブにしてくれる。パパやママに話せないこともばぁばには話せたし、おもしろくて、楽しくて、授業参観のときにヒョウ柄の服を着てくるような変な人だった。

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いつものように楽しく話していると、ばぁばが私にこういった。

「おめぇ何かやりたいことはあるんか?」ばぁばはいつも私のことを「おめぇ」っていう。

「う〜ん、私って何がやりたいのかなって最近毎日のように考えるんだけど、結局これがやりたいっていうのが分からないんだよね。もう1年もしないうちに20歳になるっていうのにこんなんじゃダメだよね。」今の私の不安な気持ちとか、やりたいことが見つからないもどかしさとか、ばぁばには素直に話せた。

「じゃあ、何をしてるときが一番楽しい?」

「楽しいこと? なんだろ・・・」虹奏の頭をいろんなことが駆け巡る。ラーメンを食べてるときとか、メロンを食べてるときはたしかに幸せだけど、一番て言われると難しい。

虹奏は数秒考えた後「妄想かもね(笑)」と言って、ばぁばと一緒に笑った。

「どんな妄想をするんだべ?」とばぁばが聞くから、私の定番の妄想ネタを教えてあげた。

「妄想の中の私は乃木坂46のようなかわいい子がいっぱいいるアイドルグループに加入していて、歌って、踊って、ファンの人を元気にできるようなキラキラしたアイドルで、武道館を満員にしちゃうような大人気のアイドルをやってるんだよ。」妄想してるときの自分は無敵になったような気分で楽しくてしょうがなかった。ステージに立ってるときの自分(妄想)は、こんな私でも応援してくれる人がいて、自分の存在価値を認めてもらえている気がした。

そんな私の夢物語を聞いてばぁばは言った。

「おめぇ歌も踊りもうまいんだからアイドルになったらいいべ。」

そんなばぁばの言葉を聞いて私は笑った。

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私がダンス部だったときの映像を見たときすぐに私だと分からず本気でプロのダンサーが踊っていると思ったらしい。一緒にカラオケに行ったときもそんなに歌がうまいなら紅白にも出られるって歌手になることを勧めてきたぐらい。孫のことがかわいいのは嬉しいけど、ばぁばはとにかく私に甘い。

「いやいや、私には無理だって。人気のアイドルって、もっとスタイルがよくて歌も踊りもできるすごい子たちばっかりなんだから。」苦笑いを浮かべる私に、意外なほどばぁばは本気だった。

「別にうまくいくかどうかなんて考えなくていいんだよ。楽しいからとりあえずやってみる。やってみて思ったのと違ったなと思ったら、またそのときに考える。もしかしたら意外と才能あって楽しいかもしれないしね。それに人気なんてなくてもばぁばにとっておめぇがかわいい孫であることに変わりはないんだから(笑)」

このときのばぁばの言葉は不思議と私の心の奥底にストンと落ちたような、妙に腑に落ちる感覚があった。

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私はいつからアイドルを好きになったんだろうと思い返していた。中学時代、不登校になってしまったとき、することがなかったからTVやYouTubeで好きなアイドルの映像をずっと見ていた。特に乃木坂46のことは大好きで「今、話したい誰かがいる」は何度聴いたことだろう。

歌い出しの歌詞「一人でいるのが一番楽だった 誰かと一緒にいると僕は僕じゃない」の部分は、学校に居場所がなくて一人でいるほうが一番楽だった私の心を鷲掴みにした。すでにアイドル界のトップランナーとして君臨していた乃木坂46のメンバーたちも私の気持ちを分かってくれる気がして勝手に親近感を感じていた。つらいときでもアイドルの曲を聴いていると頭の中から嫌なことが消えて当時の私にとってアイドルこそが救いだった。

でも、自分がアイドルになろうとは思わなかった。だって、乃木坂46といえば何万人という応募者の中から選ばれた超難関なオーディションを勝ち抜いてきた子たちの集まりであって、きっと学校でもめちゃくちゃモテたはず。

それに比べて私なんて全然モテなかったし、ダンスもちょっとやっただけ。歌はカラオケで楽しむ程度でアイドルになるための努力なんてしてこなかった。

だから私には無理だってずっと思ってきたけど、ばぁばの言うように楽しそうだからやってみる。人気なんてでなくてもいいからやってみる。そうすることに意味がある気がして、なによりオーディションを受けなかったらきっと私は後悔する。それだけは確信があった。

こんなふうにアイドルの妄想話から始まって、自分がアイドルを好きになったときのことを思い出していたら、私がアイドルに救われたように、私も誰かの推しになって、誰かを救える人になれるのかな、というか、そういう存在になりたいって思った。

あ、私のやりたいことってこれなんだ。そう気づいた瞬間だった。





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