ふと気づくと、「またこの問題で既視感のある堂々巡りにハマっているな……」と、立ち止まってみることはありませんか。その都度、気合で気持ちを無理やり切り替えたり、いつもの気分転換(散歩や睡眠、好きなことをして気を紛らわせるなど)でその場をやり過ごしたりして、「よし、解決した」と納得した気になってしまいます。けれど、しばらく時間が経って同じような状況が訪れると、またまったく同じ理由で悩み、同じように消耗してしまう。この「何度も同じ理由で悩んでしまうループ」には、私たちが無意識に見落としている、ある決定的な視点が存在しています。
私たちが悩んだときに取る行動の多くは、あくまで「嵐が来てから慌てて雨戸を閉めるような、その場しのぎの対症療法」でしかありません。心の中に不安や焦りが押し寄せてから、慌ててその場しのぎの対応に追われている状態です。その場はなんとかやり過ごせたとしても、根本的な原因や構造がそのまま放置されていれば、また同じ荒波が来たときに同じように足元をすくわれてしまいます。私たちは「悩んでいる最中(有事)」にどうにかして現状を打破しようとエネルギーを使い果たしてしまいますが、感情が揺らいでいる状態では本質的な解決にはたどり着きません。
医療の世界に例えるなら、これは病気になってから慌てて高度な治療を施すようなものです。本当に大切なのは、病気になる前の段階で生活習慣を整えたり、予防接種を打ったりする一次予防です。それと同じように、思考やメンタルにおいても、「悩んでいない平和なとき(平時)に、次に同じ理由で悩まないための仕組みをあらかじめ仕込めているか」どうかが勝負の分かれ目になります。心に余裕があり、思考がフラットに働いている平時のうちに、予防線を引いておくこと。これこそが、未来の自分を一番守ってくれるシステムになります。
では、平時のうちに具体的にどんな「仕込み」をしておけばいいのでしょうか。
・過去の悩みのパターンを把握する:自分がどんなシチュエーションで、どんな思考の癖にハマりやすいのかを、元気なうちに客観的に捉えておく
・「もしこうなったら」の事前ルールを決めておく:焦っているときほど冷静な判断ができなくなるからこそ、調子の良いときに「次にこう迷ったら、このルールに従う」と決めておく
・環境や構造そのものを整える:意志の力やメンタルの強さに頼るのをやめ、その悩みが生まれにくいスケジュールや人間関係、仕組みへと環境側をアップデートする
何度も同じことで悩んでしまうのは、あなたの意志が弱いからでも、能力が足りないからでもありません。ただ単に、「悩んでいるときの対症療法」ばかりに気を取られ、「悩んでいないときの仕込み」が抜けていただけにすぎません。感情の波にその都度翻弄され、同じ場所で足踏みをする生き方から、平時のシステムで未来の自分を守る生き方へ。その視点を一つ持っておくだけで、日々の消耗感は驚くほど軽くなり、目の前の現実をより冷静で構造的な視点から捉えられるようになっていきます。
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