セラー業務支援室です。
私は医薬品メーカーで30年、営業事務として働いています。
会社には、さまざまな生活環境を抱えた人が、それぞれの立場で働いています。
しかし、その違いを抱えたまま「公平に働く」ことは、決して簡単ではありません。
実際に、その難しさを痛感した出来事から、考えさせられたことを書いてみたいと思います。
■ 会社で実際に起きたこと
これは、私の勤める会社で実際にあった出来事です。
社員のAさんが「体調不良のため在宅勤務をさせてほしい」と上司に申し出たところ、
「体調不良であれば有給休暇を取りなさい」と言われました。
これに対しAさんは、
「他部署のBさんはケガを理由に在宅勤務をしている」
と反論しました。
一見すると単なる個別のやり取りですが、
この件は管理職会議でも問題として取り上げられます。
■ “統一感”を求めた結果
会議では、内々に一定のルールが定められました。
そして全社員に対しては、
「上長の判断のもとで在宅勤務を可とする」と周知されることになりました。
表向きは柔軟な運用に見えます。
しかし実際には、この出来事以降、
在宅勤務のハードルは確実に上がりました。
在宅勤務を申しでる社員は極端に減少し、
逆に休暇を申し出た場合は「在宅勤務」という代替案が提示されるケースが増えました。
■ その裏で起きたこと
さらに見過ごせない変化がありました。
ある共通点を持つ社員が、相次いで退職するようになったのです。
その共通点とは――
「子育て中の女性社員」でした。
そして、子育て中の女性社員であったAさんもBさんも、最終的には退職しました。
もちろん、退職理由はこの出来事だけではないはずです。
真相は分かりません。
それでも、「制度の運用」が人の選択に影響を与えた可能性は否定できないと感じています。
■ なぜ問題になったのか
改めて、Aさんの反論を振り返ると、問題の本質が見えてきます。
• 所属部署や仕事内容により、在宅勤務の向き・不向きがあること
• 体調不良とケガという異なる事情を、同じ基準で比較してしまったこと
会社側としては、
「体調不良」と「ケガ」では、デスクワークが可能かどうかの判断基準が異なる
と捉えていた可能性があります。
体調不良の場合は業務継続そのものが難しいケースもある一方で、
ケガの場合は業務内容によっては在宅で対応可能と判断されることもあります。
こうした前提の違いがあったにもかかわらず、同じ基準で比較する声が上がったことで、
管理職側は、制度運用の公平性や基準の曖昧さを改めて意識することになったのだと考えられます。
その結果、
本来在宅勤務と相性が良い職種であったBさんのようなケースまで、
制度を利用しにくくなってしまいました。
■ “正しさ”が全体を硬直させる
さて、子育て中のAさんの主張は、本人にとっては正当なものだったはずです。
• 子供の都合で有休休暇を使う機会が多い
• できる限り職場に迷惑をかけたくない
• 他部署で認められているのであれば、自分にも適用されるべきではないか
という思いだったのでしょう。
そしてそう考えること自体は、ごく当然のことだと私も思います。
ただ、自分の事情を理解してもらうことと、制度そのものの公平性を求めることは、必ずしも同じではありません。
会社には
• 部署ごとの業務内容の違い
• 業務継続性の確保
• 他社員との公平性
といった視点があります。
そのため、制度全体の見直しにつながるような問題提起は、
結果として制度運用を硬直化させてしまうことがあります。
■ 在宅勤務は「公平」であるべきか、それとも「最適化」か
会社は、本来、個別事情を考慮しながら柔軟に判断したいと考えています。
だからこそ、あいまいなルールにし、「例外」を認める余地を残しているのです。
ところが、「全員同じでなければ不公平」という考え方が強くなると、
管理する側は例外を認めにくくなります。
今回の出来事は、心情から生まれた言動が、制度全体に影響を与えた結果、
かえって”申請者が使いにくく、会社側の都合で運用される制度”を生み出してしまいました。
制度は平等に作られますが、それを利用する人の事情は決して同じではありません。
では会社側にどのように事情を考慮してもらえばいいのか。
今回の出来事は、その難しさを改めて考えさせられました。
制度といえば、
「副業を認めるかどうか」も会社によって大きく異なります。
副業制度そのものが整備されている企業もあれば、いまだに明確な規定がない企業もあります。
副業についても書いていますので、よかったらどうぞ。