鳩の家と桑の実と。

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最近、ゆっくりする時間が作れていなかったから、今日は久しぶりに少し余裕があったので犬の散歩に出てみた。

久しぶりに感じる外の風。

一か月前はまだ寒かったのに、今はもう、少し歩いただけで汗ばむような陽気になっている。

愛犬のトイプーがちょろちょろと右へ左へ移動しながら、いろんな匂いを嗅いでいる。それでも一か月前よりずっと散歩が上手になって、嫌がることなく歩いてくれる。

すずめの声。 草が風に揺れる音。 葉っぱの擦れる音。
自然と耳に入ってくるそんな音達が心地よい。

「ぼーっ、ぼーっ」

時々、山鳩の声が聞こえる。
ふと見ると、ある家の屋根やら、ベランダの手すりやら、庭の隅まで、山鳩が十羽以上並んで羽を休めている。

まるで、鳩の家みたい。

家がたくさん立ち並んでいるのに、なぜかその家にだけ鳩が集まる。
鳩に好かれる何かがあるのか、鳩を引き寄せる何かをしているのか、私にはわからない。

ただ、そこだけが鳩の憩いの場所のように見えて、なんだか微笑ましかった。
そんなことを思いながらてくてくと歩みを進め、通り掛かった公園に足を踏み入れてみる。

そこには、去年の秋に熟れて落ちたであろう、桑の実がたくさん転がっていた。

そういえば昔、子供たちと一緒に、栗と間違えてたくさん拾ったことがあった。よくわからないまま夢中で集めて、家に帰ってから、さてどうしようかと話していたら、それが桑の実だったと気がついた。

その時話していた栗ご飯は、夢のまた夢に終わった。
大笑いしながら、それもまた楽しい思い出だったなと懐かしく思う。

犬はあいかわらず、自由に、気ままに動いている。

そのそばで、ただただ時間が過ぎていく。
久しぶりに仕事以外のことを思っている。
追われることのない「今」を感じながら、自分が疲れていたことに気がついた。

鳩みたいに、どこかにのんびりできる場所が欲しいなと思いながらも、目の前の仕事にはつい時間を忘れてのめり込んでしまう。
仕事は嫌いではない。むしろ、目の前のことに入り込んでいく感覚は、どこか私の性分に近い。

けれど、だからこそ、気づかないうちに自分の余白まで差し出してしまうことがある。

散歩に出て、風を感じて、鳩の集まる家を見て、桑の実を見つけて、ようやく思い出した。

そんなことを思いながら、また犬の散歩に来ようと決めた。




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