税務調査編⑧ 税務調査で指摘されても、必ず追加で税金を払うことになるの?

税務調査編⑧ 税務調査で指摘されても、必ず追加で税金を払うことになるの?

記事
法律・税務・士業全般
はじめに

前回は、
「領収書・請求書・通帳はどこまで必要?税務調査で困らない保存方法」
をテーマに、個別書類の保存期間や具体的な保存方法について解説しました。
資料によって、
• 紙で保存するもの
• 電子データで保存するもの
• 一定の要件を満たせば電子保存できるもの

など、保存方法が異なります。

また、保存期間についても、法人・個人事業主の違いや資料の種類などによって異なります。

そのため、
「とりあえず紙で残しておけばいい」
「とりあえず7年間保存すればいい」
と考えるのではなく、それぞれの資料に適した方法で保存することが大切です。

今回のブログでは、
「税務調査で税務署から問題点を指摘されたら、必ず追加で税金を払うことになるのか?」
というテーマについて解説します。

税務調査では、調査官から問題点を指摘されたとしても、その場ですべてが確定するわけではありません。

追加資料を提出したり、事実関係を説明したり、場合によっては法令・通達・裁決例などを確認しながら税務署と協議することもあります。

私自身のこれまでの税務調査対応の経験も踏まえながら、税務署から問題点を指摘されてから、最終的な結論が出るまでに実際にどのような対応が行われるのかを解説したいと思います。

そもそも税務調査は何のために行われる?


まず、税務調査が何のために行われるのかについて簡単に確認しておきます。

「税務調査」と聞くと、
「税務署が追加の税金を取りに来る」

というイメージを持たれる方もいらっしゃると思います。

しかし、税務調査の目的は、単に追加の税金を徴収することではありません。

所得税や法人税などでは、原則として納税者自身が所得や税額を計算して申告・納税を行う「申告納税制度」が採用されています。

そのため、

• 売上に含めるべき収入が漏れていた
• 本来経費にならない支出を経費にしていた
• 売上や経費を計上する時期が間違っていた
• 税額計算を間違えていた

といったことが起こる場合があります。

税務調査では、帳簿や請求書などの資料を確認しながら、過去の申告内容が適正であったかを確認していくことになります。

そして、申告内容に誤りがあり、結果として納付すべき税額が増える場合には、追加の納税が必要となることがあります。

一方で、税務調査の途中で問題点について質問されたからといって、必ず追加の税金が発生するわけではありません。

資料や事実関係を確認した結果、当初の申告内容に問題がないと判断される場合もあります。

また、処理方法について今後の改善を求められるものの、結果として修正申告等が必要とならない場合もあります。

私がこれまで対応した税務調査でも、調査途中で問題点について確認を受けたものの、資料や事実関係を説明した結果、最終的に修正申告の対象とならなかったケースがありました。

そのため、

「税務署から何か言われた=追加の税金が確定した」

と考える必要はありません。

追加の税金が発生する場合には、加算税等がかかることもある

税務調査の結果、当初の申告税額が少なかったことが判明した場合には、本来納めるべき税金に加えて、過少申告加算税などが課される場合があります。

代表的な加算税として、

• 過少申告加算税
• 無申告加算税
• 重加算税

などがあります。

例えば、期限内に申告していたものの申告税額が少なかった場合、
税務調査後の修正申告等では、原則として新たに納める税額の10%の過少申告加算税が課され、一定額を超える部分については15%となります。

一方、調査の事前通知後であっても、更正を予知する前に自主的に修正申告した場合には、過少申告加算税が5%または10%となる場合があります。

また、単なる計算誤りなどではなく、売上の除外や架空経費の計上など、課税標準等の計算の基礎となる事実について「隠蔽または仮装」があったと認定された場合には、過少申告加算税などに代えて重加算税が課されることがあります。

重加算税は、期限内申告があるケースでは原則35%、無申告の場合には原則40%となるなど、非常に負担の大きな加算税です。

さらに、本来納付すべき税金については、納付までの期間に応じて延滞税が発生する場合もあります。

なお、「重加算税になったから必ず7年間調査される」という単純な関係ではありません。

ただし、「偽りその他不正の行為」により税額を免れた場合には、更正等を行うことができる期間が原則より長くなり、7年間となる場合があります。

このように、税務調査で問題が見つかった場合でも、その内容や事実関係によって取扱いは大きく異なります。

だからこそ、税理士が税務調査に立ち会う場合には、税務署から問題点を示された時点ですぐに結論を出すのではなく、

「何が問題とされているのか」
「事実関係はどうなっているのか」
「税法上、本当に問題となる処理なのか」

を一つずつ確認していくことが重要になります。

税務署から質問や追加資料を求められたらどうする?

以前のブログでも解説しましたが、税務調査では、帳簿と請求書の金額が一致しているかだけを確認するわけではありません。

例えば売上であれば、

帳簿
請求書
工程表・工数表・納品書など
入金関係の資料

といった複数の資料を確認しながら、
取引内容や計上金額が適正であるかを確認していくことがあります。

特に決算日前後の売上については、
適切な事業年度に売上が計上されているかを確認するため、
納品日やサービスの完了日などについて詳しく確認されることもあります。

こうして調査を進める中で、

「この売上は翌期ではなく当期に計上すべきではないか」
「この支出は本当に事業に関係する経費なのか」
「この取引の金額はどのように計算されたのか」

などの疑問が生じた場合、
税務署職員から質問や追加資料の提出を求められることがあります。

ここで大切なのは、

「質問された=問題が確定した」ではない

ということです。

税務署職員も、まず取引の事実関係を確認するために質問や資料の依頼を行っている場合があります。

そのため、この段階で慌てて結論を出す必要はありません。

回答は「早さ」よりも「正確さ」が重要

私のこれまでの経験では、税務調査当日は、納税者や法人の代表者の方には必要な場面を除いて席を外していただき、税理士が税務署職員とのやり取りを行うことが多くあります。

税務署職員から追加資料の提出や質問を受けた場合にも、まず税理士が内容を確認します。

その場で回答できる内容であれば回答しますが、納税者への確認が必要な場合には、いったん持ち帰って事実関係を確認することもあります。

税務調査では、資料の提出や質問への回答は早いに越したことはありません。
しかし、早ければ何でも良いというわけではありません。

特に避けたいのが、

• 記憶が曖昧なまま回答する
• 事実確認をせず推測で回答する
• 内容を確認せず資料を提出する
• 事実と異なる回答や資料を提出する

といった対応です。

不正確な回答をしてしまうと、その後に回答内容が変わった場合、税務署からさらに詳しい説明を求められる原因になることがあります。

もちろん、虚偽の回答や資料の提出は行ってはいけません。

そのため、私が税務調査に立ち会う場合には、回答を急ぐことよりも、

「質問の意味を正確に把握する」
「事実関係を確認する」
「資料と回答内容が一致しているか確認する」

ことを優先しています。

必要であれば、実地調査終了後に回答することもあります。

税務調査では、分からないことをその場で無理に答えるより、

「確認してから回答します」

とした方が適切な場合もあります。

追加資料や質問には、どのように対応する?


税務署職員から追加資料を求められた場合には、例えば次のようなことを確認します。

• 該当する既存資料があるか
• 資料が不足している場合、再発行できるか
• 他の資料で取引内容を確認できないか
• 既存資料を基に説明用の資料を作成する必要があるか

また、質問を受けた場合には、

• 質問されている内容を正確に把握する
• 納税者に事実関係を確認する
• 関連する資料を確認する
• 会計・税務上どのような論点があるか整理する
• そのうえで回答内容を検討する

という流れで対応します。

私の場合、税務署への説明に追加資料があった方が分かりやすいと考えた場合には、既存の資料を整理して、説明のための資料を作成することもあります。

ここで重要なのは、税務署と対立することではありません。

必要な資料の提出や質問への回答については、可能な限り協力的に対応します。

そのうえで、税務署側の疑問を解消できるよう、事実と資料に基づいて説明することが重要だと考えています。

それでも「税務上問題がある」と指摘された場合


追加資料を提出し、質問にも回答したうえで、税務署から、

「この処理については税務上問題があると考えています」

という見解が示されることがあります。

しかし、ここでも税務署側の見解をそのまま受け入れるとは限りません。

まず、

• 事実関係
• 契約内容
• 保存されている資料
• 税法
• 通達
• 裁決例
• 必要に応じて判例等

を確認し、本当に税務署の指摘どおりの処理になるのかを検討します。

検討した結果、当初の会計・税務処理が適切であると主張できる場合には、その根拠となる資料や法令等を示しながら税務署へ説明します。

一方、確認した結果、明らかに当初の処理が誤っていたのであれば、無理に反論することが納税者にとって良い結果につながるとは限りません。

その場合には、誤りを認めたうえで、どの範囲を修正する必要があるのか、加算税を含めてどのような取扱いになるのかを確認していくことになります。

私が税務調査対応で重要だと考えているのは、

「何でも税務署の言うとおりにすること」でも、
「何でも反論すること」でもありません。

事実と法令に基づいて、

「認めるべきものは認め、主張すべきものは主張する」

という姿勢が重要だと思います。

実地調査最終日でも、結論が出ないことはある

税務調査というと、

「調査官が会社に来る数日間で全部終わる」

と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、

実際には、実地調査最終日の時点ですべての論点について結論が出ているとは限りません。

例えば、

• 追加資料の提出が残っている
• 納税者への事実確認が必要
• 税務署側でも検討が必要
• 税務署と納税者側で見解が分かれている

といった場合には、

実地調査終了後も引き続きやり取りが行われます。


また、提出された資料だけでは取引の実態を十分に確認できない場合などには、必要に応じて取引先等への反面調査が行われることもあります。

私が過去に立ち会った税務調査でも、ある取引の内容を確認するため、実地調査終了後に取引先へ反面調査が行われたケースがありました。

このような場合には、実地調査が終了してからも調査が続くため、最終的な結論が出るまで時間がかかります。

実地調査後の協議が重要になる


実地調査終了後も確認事項が残っている場合には、

• 追加資料の提出
• 質問への回答
• 事実関係の説明
• 法令・通達等に基づく主張
• 税務署との協議

などを行っていきます。

特に税務署と納税者側の見解が分かれている項目については、法令・通達・裁決例等を確認しながら、納税者側として主張できる部分がないか検討します。

私がこれまで対応した税務調査でも、実地調査終了後の協議に時間を要したケースがあり、最終的な結論が出るまで半年程度かかったこともありました。

以前、「税務調査の立会料はなぜ高いのか?」という記事でも触れましたが、私の経験では、実地調査当日の立会いよりも、実地調査終了後の資料整理や税務署との協議に時間を要することも少なくありません。

そして、こうした協議を経て最終的な調査結果がまとまります。

申告内容に誤りがあり、納付すべき税額が増える場合には、税務署から調査結果について説明を受け、修正申告を勧められることがあります。

納税者がその内容を受け入れて修正申告を行えば、追加の本税や加算税、延滞税などを納付することになります。

一方、修正申告を行わず、税務署が申告内容を是正する必要があると判断した場合には、更正等の処分が行われる場合があります。

逆に、調査の結果、更正等をすべきと認められない場合には、その旨の通知が行われ、追加の税金を支払うことなく調査が終了します。

税務調査で指摘されても、必ず追加の税金が発生するわけではない


ここまでの内容をまとめると、税務調査では、

税務署から質問・資料依頼を受ける
事実関係・資料を確認する
税務署から問題点について見解が示される
税理士側でも事実・資料・法令等を検討する
必要に応じて税務署と協議する
最終的な調査結果が決まる

という流れで進むことがあります。

したがって、

「税務署から指摘された=その場で追加の税金が確定する」

わけではありません。


資料を提出し、事実関係を説明した結果、当初の処理で問題ないと判断されることもあります。

また、税務署と見解が異なる場合には、法令や資料などを根拠として納税者側の考えを説明することもあります。

一方で、事実関係を確認した結果、申告内容に明らかな誤りがあれば、修正が必要です。

税務調査で重要なのは、単純に「追徴税額を減らすこと」だけではないと私は考えています。

本来納めるべき税金については適正に納める。

一方で、納める必要のない税金まで納めることがないよう、主張すべきところは資料と法令に基づいて主張する。

そのために税理士が事実関係を整理し、税務署との間に入って対応することも、税務調査における税理士の重要な役割の一つです。

まとめ


今回は、
「税務調査で指摘されても、必ず追加で税金を払うことになるの?」というテーマで、
税務署から問題点を指摘されてから最終的な結論が出るまでの流れについて解説しました。

税務調査では、調査官から質問や追加資料の提出を求められることがあります。

しかし、質問や資料の提出を求められた段階では、必ずしも税務上問題があると確定したわけではありません。

まず、事実関係を確認し、資料を整理したうえで、正確に説明することが重要です。

さらに、税務署から問題があるという見解が示された場合でも、事実関係や税法・通達等を確認し、当初の処理が適切であると考えられる場合には、その根拠を示して説明することになります。

私のこれまでの経験でも、実地調査中に確認を受けた項目について、資料や事実関係を説明した結果、最終的に修正申告の対象とならなかったケースがありました。

反対に、明らかに処理が誤っている場合には、無理に反論するのではなく、適切に修正することも必要です。

だからこそ、税務調査では、

「指摘されたからすぐ認める」
「追加の税金を払いたくないから何でも反論する」

のどちらでもなく、

事実と資料、そして法令に基づいて一つずつ判断することが大切です。

そして、このような対応を行うためにも、これまでの記事で解説してきたように、日頃から帳簿や請求書、契約書、納品書などの根拠資料を適切に保存しておくことが重要になります。

次回以降も、税務調査の現場で実際に問題となりやすい論点について、私自身の経験を交えながら解説していきたいと思います。


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