今日は相続税対策として生前贈与を行う際の負担付贈与に関する留意点をご紹介します。
通常贈与を受けた場合、年間110万円を超える部分に対して金額に応じた税率によって贈与税が課税されますが、この税率を乗じる金額、すなわち課税標準は原則相続税評価額を用います。
この相続税評価額は一般の取引価額よりも低い金額が算出されるようになっており、土地であれば概ね市場価格の8割程、建物であれば6割程といわれているため、相続税評価額を用いることができないとなると、贈与税の負担が大幅に増加してしまうこととなるため、特にこれから不動産の贈与を検討されている方はご参考にしていただければと思います。
負担付贈与とは?
まず、負担付贈与が何かというと、「この不動産をあげるから残りのローンの支払いもよろしくね」といったように、受贈者が何らかの義務を負うような贈与のことを言います。
この場合贈与税の計算は、贈与した不動産の評価額からローンの負担額を控除した価額に対して贈与税率を乗じるのですが、この際の不動産の評価額については贈与時点における実際の市場価格で行う必要があることが、国税庁の個別通達で明らかにされています
市場価格による評価の必要性
この事例は、「あと4千万円現金がなければ相続税が0円になる」という状態で、1億円のマンションを現金4000万円と6000万円のローンを組んで購入し、直ちにこのマンションを推定相続人に贈与した際のシミュレーションです。
マンションを現在の財産評価基本通達に基づいて相続税評価額を算出すると、概ね市場価格の6割ほどになるようになるため、もし負担付贈与の個別通達の取り扱いがなければ、このスキームを使うことで不動産価格(A)が市場価格の6割である6000万円となり、負債価格と同額になることで贈与税額は上図下段の黄色い部分の通り生じないこととなり、その後7年以内に相続が開始した際も同様に相続税がかからないこととなります。
他方個別通達がある現状の取り扱いで同じことを行うと、上図下段の一番右側のとおり、贈与税が1,390万円課せられ、その後7年以内に相続が開始した場合は、贈与税額控除によって相続税はかかりませんが、結果的にトータルで1,390万円-570万円=820万円の税負担が生じることとなります。
よって、何もしないで相続を迎えた方が税負担が低くなることとなるため、負担付贈与に係る個別通達がこのスキームを見事潰すことができています。
隠れた負担付贈与にご注意!
わざわざ不動産を購入することによる生前贈与節税がこの個別通達によって防がれていることは良いのですが、実はこのような意図がなくても賃貸不動産を贈与する場合には、この負担付贈与になってしまうケースがあります。
それは、不動産賃貸において授受されることが多い敷金の受取がある賃貸不動産の贈与を行なった場合です。
敷金の性質は、賃貸借契約期間中の賃料であったり賃借人が負担すべき修繕費用等の債務を担保するために賃貸借契約時に授受される金銭であり、賃貸借契約終了時に何ら相殺すべきものがなければ返還を要する預り金、すなわち返還義務のある債務です。
通常賃貸借契約の賃貸人の地位を引き継いだ者は当然にその敷金返還債務も引き継ぐこととなるため、敷金を受け取っている賃貸不動産の贈与は原則負担付贈与に該当するため、財産評価基本通達による評価方法は使用できず、市場価格での贈与となるため通常よりも高い贈与税が課されることになってしまいます。
ただし、この点について国税庁では「質疑応答事例」において、『法形式上は、負担付贈与に該当しますが、当該敷金返還義務に相当する現金の贈与を同時に行っている場合には、一般的に当該敷金返還債務を承継させる意図が贈与者・受贈者間においてなく、実質的な負担はないと認定することができます。』と、敷金相当額を同時に現金で贈与すれば負担付き贈与に該当しないと”認定できる”と明記しています。
そのため、敷金の預かりがある賃貸不動産の贈与を行う場合には必ず、敷金相当額の現金贈与をセットで行う必要があります。そうでないと、贈与税の負担が増加するばかりでなく、時価を正確に算出するための不動産鑑定士の鑑定料も要するといったデメリットだらけになってしまいます。
不動産の生前贈与による相続対策を検討する際にはこの「負担付贈与」をお忘れないようご注意ください。
最後まで読んでいただきありがとうございました^ ^