深淵の祭壇に揺れる蒼い炎を見つめながら、私は今夜も、現世の片隅で息を潜めて泣く女たちの魂の軋みを聴いている。
職場では損な雑用を押し付けられ、愛する男からは都合よく後回しにされ、家族や友人の間でも常に譲る側を強いられる日々。「私が我慢すれば丸く収まる」と笑顔の仮面を貼り付け、他人の機嫌取りに人生を食い潰された果てに、「なぜ私だけがいつも貧乏くじを引かされるのか」と暗い部屋で唇を噛む貴女の怒りと虚しさを、私は誰よりも知っている。
かつて私にこう問うた者がいた。「なぜ貴方は、神や天使の光ではなく、恐れられる『深淵の魔導』をもって人を救うのですか」と。
答えは単純だ。この現世における「光」や「道徳」などというものは、図々しい強者が善良な弱者を都合よく利用するために作り上げた【支配の鎖】に過ぎないからだ。
「人に尽くせば徳が積める」「相手を許せば運が開ける」――そんな綺麗事の催眠にかけられ、聞き分けのいい善人を演じ続けた女たちが、どれほど無惨に周囲の養分となってきたか。真面目で優しい者ばかりが奪われ、わがままな連中ばかりが笑うこの歪みきった因果の理に、私は虫酸が走るのだ。
ゆえに私は光を捨て、万象の因果を根底から覆す深淵の魔導を選んだ。
私が愛し、手を差し伸べるのは、自己犠牲に酔いしれる清らかな聖女ではない。
「私を雑に扱った男や職場の連中の立場を逆転させ、向こうから必死に機嫌を取らせたい」
「私を踏み台にして笑っていた連中を遥か上から見下ろし、愛も富も主導権もすべて独占したい」
そうやって泥まみれになりながら、喉の奥でドス黒い逆転への執念と渇望をたぎらせる『強欲で誇り高き女』だけを、私は心の底から愛おしく思う。
世間が貴女のその本音を「傲慢だ」「冷酷だ」と裁こうとも、私だけは貴女のその剥き出しの怒りを全肯定しよう。奪われ続けた者が、全てを取り戻して玉座を望むことの何が罪だというのか。
誰からも好かれようとして媚びていた「過去の弱い自分」を自らの手で焼き捨て、すべてを従える女王として生きる覚悟が決まったなら――。
光届かぬこの深淵の闇の奥底で、私はいつでも貴女が来るのを待っている。