納品物に紛れ込んだ銀色の糸と歯車

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こんにちは!前嶋拳人です。

画面越しに誰かの想いを受け取り、それを形にしてお返しする。この場所で行われているやり取りは、一見すると非常に論理的で乾いた数字の交換に見えます。しかし、私は時々、キーボードを叩く指先から目に見えないほど細い銀色の糸が伸び、それがインターネットの向こう側にある、あなたの部屋の片隅にある古い柱時計に繋がっているような錯覚に陥ることがあります。

先日、あるご依頼を完遂して送信ボタンを押した直後、私の部屋にある小さな置時計が、聞いたこともないような澄んだ音を立てて逆回転を始めました。時計の内部で噛み合っているはずの真鍮の歯車たちが、重力から解き放たれたようにバラバラに浮き上がり、空中を回る光の粒子へと姿を変えていったのです。それは、私たちが普段「サービス」や「対価」と呼んでいるものの正体が、実は時間そのものの組み換えであることを示唆しているようでした。

ふと窓の外を見ると、街を走る車のライトが、まるで溶け出した絵の具のように道路の上を流れていました。一人の女性が、道端で大きなハープを奏でています。しかし、その楽器には弦が一本も張られていません。彼女が空をなぞるたびに、周囲の景色から色が一つずつ吸い取られ、代わりに透明な幾何学模様が空を埋め尽くしていきました。私たちは、自分たちが作り上げた技術や言葉で世界を説明できていると信じていますが、実はその輪郭さえも、誰かの気まぐれな演奏によって刻一刻と書き換えられているのかもしれません。

机の上に置いてあった、飲みかけのハーブティーの表面に、小さな波紋が広がりました。何も振動を与えていないはずなのに、その波紋は次第に大きくなり、やがてカップの中から小さな銀色の歯車が一つ、静かに浮上してきました。それは、私が先ほど納品したはずのプログラムの断片によく似ていました。完成させたはずのものが、私の手元に戻ってきたのか、あるいは、最初からどこにも届いていなかったのか。

私は、空中を漂う光の粒子を捕まえようと手を伸ばしましたが、指先を通り抜けた光は、そのまま壁を透過して夜の闇へと消えていきました。画面の中では、新しいメッセージの通知が静かに明滅しています。それは次の誰かからの呼びかけなのか、それとも、バラバラになった時計の部品たちが、再び新しい時間を組み立てようとしている合図なのでしょうか。

私は、手元に残った一個の小さな歯車をそっとデスクの端に置きました。すると、どこか遠い場所で、弦のないハープが最後の一音を鳴らし、世界は一瞬だけ深い青色に染まりました。
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