ChatGPTやGeminiを使えば、業務を効率化できる。
そう聞いて試してみたものの、思ったほど使いこなせなかった。そんな人は少なくありません。むしろ、最初から使いこなせる人のほうが少ないはずです。
先日、病院に行ったとき、40代くらいの女性のお医者さんと雑談でAIの話になりました。その方もChatGPTを試したことはあるものの、全然使いこなせなかったそうです。少し話を聞いてみると、AIが苦手なのではなく、何を頼めばいいのか、どう頼めば仕事に使える形で返ってくるのかが見えていないだけでした。
その場で少し使い方をお伝えすると、「そういう聞き方をするんですね」という反応でした。
これは医療業界だけの話ではありません。個人事業主や小規模事業者でも同じです。ChatGPTやGeminiは便利ですが、ただ質問するだけでは、薄い回答が返ってきて終わります。
業務で使うなら、どの作業をAIに渡すのか。どんな前提を入れるのか。どんな形で出力させるのか。そこまで決める必要があります。
ChatGPTとGeminiは何が違うのか
ChatGPTとGeminiは、どちらも文章作成、要約、アイディア出し、調査の整理などに使えるAIツールです。
個人事業主が使う場合、細かな性能比較よりも、まずは使いどころを分けるほうが現実的です。
ChatGPTは、文章のたたき台作成、壁打ち、構成整理、メール文面、営業資料の文章化などに使いやすいツールです。頭の中にあるぼんやりした考えを、相手に伝わる形に整える作業と相性があります。
Geminiは、Googleのサービスを日常的に使っている人にとって扱いやすい場面があります。Googleドキュメント、Gmail、スプレッドシートなどと組み合わせる前提で考えると、情報整理や下書き作成に使いやすい場面が出てきます。
ただし、どちらを選ぶかで迷いすぎる必要はありません。
個人事業主にとって先に考えるべきなのは、「ChatGPTかGeminiか」ではなく、「自分の業務のどこにAIを入れるか」です。ここを決めないままツールだけ変えても、あまり成果は変わりません。
個人事業主がAIで効率化しやすい業務
AIが使いやすい業務には、共通点があります。
ゼロから考えるのが大変な作業。
毎回似たような文章を作っている作業。
調べた情報を整理する作業。
頭の中にある考えを、人に伝わる形にする作業。
このあたりは、ChatGPTやGeminiを組み込みやすい領域です。
たとえば、顧客対応のメールです。
問い合わせに対して毎回ゼロから返信文を作るのは、地味に時間がかかります。しかも、忙しいときほど文章が雑になります。ChatGPTに問い合わせ内容、相手との関係性、返信で伝えたいこと、避けたい表現を渡せば、返信のたたき台を作れます。
もちろん、そのまま送るのは危険です。言い回しが不自然だったり、事実と違う内容が混ざったりすることがあります。だから最後の確認は人がやる。その前提なら、返信作成の時間はかなり減らせます。
次に、マーケティング業務です。
ブログ記事、SNS投稿、メルマガ、サービス紹介文、LPの見出しなど、個人事業主でも発信しなければならない場面は多いです。ただ、毎回「何を書こう」と考えて止まってしまう人も多いはずです。
AIには、投稿案を出してもらう、記事構成を作ってもらう、既存の文章を読みやすく直してもらう、顧客の悩みを整理してもらう、といった使い方ができます。
ここで大事なのは、AIに丸投げしないことです。
「ブログを書いて」と頼むだけでは、どこかで見たような文章になります。読者も、そういう文章にはすぐ気づきます。AIに任せるのは、整理やたたき台づくりまで。自社の考え、現場で見たこと、顧客から聞いた言葉は、人が入れたほうがいいです。
データ整理にも使えます。
売上メモ、問い合わせ内容、アンケート回答、商談メモなどを整理するとき、AIは役に立ちます。たとえば、顧客の声を分類したり、よくある不満を抽出したり、次に改善すべき点を洗い出したりできます。
ただし、個人情報や機密情報をそのまま入れるのは避けるべきです。氏名、会社名、連絡先、具体的な取引内容などは削る。AIを使う前に、入れてよい情報と入れてはいけない情報を分ける。この線引きがないと、便利さよりリスクが上回ります。
プロンプトで変わるのは、AIの答えではなく業務の流れ
AIをうまく使える人と使えない人の差は、プロンプトの言い回しだけではありません。
もちろん、入力文は大事です。
ただ、「魔法のプロンプト」を探しても、業務はあまり変わりません。
本当に変わるのは、業務の流れです。
たとえば、ブログを書く作業を考えてみます。
悪い使い方は、いきなり「ブログを書いて」と頼むことです。これだと、読者も目的も自社の強みも曖昧なままです。AIはそれっぽい文章を返してくれますが、事業に効く文章にはなりにくいです。
使いやすい流れにするなら、次のように分けます。
誰に向けた記事かを決める。
読後に何をしてほしいかを決める。
読者の悩みを出す。
記事の主張を決める。
構成を作る。
本文を書く。
自社の経験や具体例を足す。
最後に、読みづらい表現を直す。
この流れの中で、AIに任せられる部分と、人が判断すべき部分を分けます。
構成案を出す、見出し案を出す、文章を整える、言い換え案を出す。ここはAIが得意です。一方で、誰に売りたいのか、どの顧客を優先するのか、自社の強みをどう見せるのかは、人が決める必要があります。
AIは、事業判断までは肩代わりしてくれません。
ChatGPTのプロジェクト機能で、毎回説明する手間を減らす
ChatGPTを業務で使うなら、プロジェクト機能も活用しやすいです。
プロジェクト機能は、案件や業務ごとにチャット、ファイル、指示をまとめておける機能です。たとえば、自社サービス資料、過去のブログ記事、よく使う言い回し、顧客向けの説明資料、記事作成ルールなどを登録しておけば、毎回ゼロから前提を説明する必要が減ります。
これは、個人事業主にとってかなり大きいです。
AIを使うたびに「うちのサービスはこうで、読者はこうで、文章のトーンはこうで」と説明していると、それだけで疲れます。結果として、使わなくなります。
プロジェクトに必要な情報を入れておけば、ChatGPTはその文脈を踏まえて回答しやすくなります。たとえば、ブログ記事を書くプロジェクトなら、次のような資料を入れておくと使いやすくなります。
自社サービスの説明資料。
ターゲット顧客の情報。
過去の記事。
記事の編集ルール。
よくある問い合わせ。
避けたい表現。
CTAの文例。
こうしておくと、毎回その場で長い説明をしなくても、記事構成、見出し案、本文のたたき台、リライト案を作りやすくなります。
特にブログやSNSのように、何度も似た作業をする業務では相性がよいです。毎回ゼロから考えるのではなく、過去の資産を使い回しながら、少しずつ精度を上げられます。
ただし、プロジェクト機能に入れれば何でも解決するわけではありません。
古い資料、矛盾した資料、使ってほしくない情報まで入っていると、回答もぶれます。登録するファイルは、今後も使いたい情報に絞ったほうがいいです。過去の資料を全部放り込むより、よく使う資料を少数に絞るほうが、実務では扱いやすくなります。
AI活用で差がつくのは、プロンプトの上手さだけではありません。ChatGPTにどんな前提情報を持たせておくか。その準備も、業務効率化の一部です。
よくある失敗は、とりあえず触って終わること
ChatGPTやGeminiを導入しても、使われなくなるケースは珍しくありません。
理由はシンプルです。
業務に組み込まれていないからです。
「時間があるときに使ってみよう」では、たぶん定着しません。忙しい人ほど、慣れているやり方に戻ります。個人事業主ならなおさらです。営業、納品、請求、問い合わせ対応、発信、経理まで、自分で抱えている業務が多いからです。
AIを使うなら、毎週の作業に組み込んだほうがいいです。
月曜日にSNS投稿案を出す。
問い合わせ返信のたたき台は必ずAIで作る。
ブログを書く前に、読者の悩みをAIで整理する。
商談メモを見返して、よくある質問を抽出する。
このくらい具体的に決めないと、AIは便利な道具のまま放置されます。
もう一つの失敗は、AIの回答をそのまま使うことです。
AIの文章は整っています。だから一見よく見えます。ただ、整いすぎていて、その会社らしさが消えることがあります。特にマーケティングでは危険です。競合と同じような言葉を並べても、読者は動きません。
個人事業主が発信で勝つなら、きれいな一般論よりも、自分の現場で見たこと、自分の判断、自分の違和感を入れたほうが強いです。
先ほどのお医者さんの話もそうです。AIに詳しくない人が、なぜ使いこなせなかったのか。そこには、ツールの問題だけでなく、頼み方がわからない、業務に落とし込めないという現実があります。こういう一次情報が入ると、記事は急に人の言葉になります。
効果を見るなら、時間短縮だけで判断しない
AI活用というと、まず時間短縮が見られます。
メール作成に30分かかっていたものが10分になる。
ブログ構成づくりに1時間かかっていたものが20分になる。
SNS投稿案を考える時間が減る。
これはわかりやすい指標です。
ただ、時間短縮だけで見ると、AI活用の価値を少し狭く見てしまいます。
個人事業主にとっては、考える負担が減ることも大きいです。文章を書く前に手が止まらない。発信のネタ切れが減る。顧客対応の返信が遅れにくくなる。提案の切り口が増える。
このあたりは、売上にすぐ直結するとは限りません。けれど、事業を続けるうえではかなり効いてきます。
見るべき指標は、たとえば次のようなものです。
返信までの時間が短くなったか。
発信の頻度が増えたか。
記事や投稿の作成時間が減ったか。
問い合わせ対応の抜け漏れが減ったか。
提案書やメールの品質が安定したか。
マーケティング施策を考える回数が増えたか。
AIを使った結果、仕事が雑になるなら意味がありません。
逆に、同じ時間で考える量が増え、発信や対応の質が安定するなら、それは業務改善です。
成果を出すには、プロンプトより業務設計が先
プロンプトは大事です。
ただし、プロンプトだけを整えても限界があります。
本当に必要なのは、業務設計です。
どの業務にAIを使うのか。
どの情報をAIに渡すのか。
どの形式で出力させるのか。
人がどこを確認するのか。
何を成果として見るのか。
ここまで決めておくと、ChatGPTやGeminiはかなり使いやすくなります。
たとえば、マーケティング業務なら、単に「SNS投稿を作る」ではなく、次のように設計します。
誰に向けた投稿か。
読者は何に困っているか。
投稿後に何をしてほしいか。
自社の強みはどこに入れるか。
避けたい言い回しは何か。
最後に人が確認すべき点はどこか。
ここまで決めてからAIに渡すと、出てくる文章が変わります。少なくとも、何となく便利そうな文章ではなく、使えるたたき台に近づきます。
BtoBマーケティングの実務でも同じです。発信は、ただ記事や投稿を増やせばよいわけではありません。誰に向けて、どんな不安を消し、どんな行動につなげるのかを決める必要があります。
AI活用も同じです。
ツールを入れるだけでは、業務は変わりません。
業務のどこに入れるかを決めて、はじめて成果につながります。
ChatGPTやGeminiを試しているのにうまく使い切れていない方へ
ChatGPTやGeminiは、個人事業主にとってかなり使える道具です。
顧客対応、文章作成、マーケティング、情報整理、アイディア出し。使える場面は多いです。けれど、ただ質問するだけでは、便利な遊び道具で終わってしまいます。
必要なのは、プロンプトを覚えることだけではありません。
自分の業務のどこにAIを入れるかを決めること。
AIに渡す情報を整理すること。
出力されたものを、人がどう確認するかを決めること。
成果を見る指標を持つこと。
ChatGPTのプロジェクト機能のように、毎回説明しなくても済む仕組みを作ること。
ここまで設計しておくと、ChatGPTやGeminiは日常業務の中で使いやすくなります。
AIを使いこなせなかったお医者さんの話は、特別な例ではありません。専門職でも、経営者でも、個人事業主でも、最初につまずく場所はかなり似ています。AIが難しいのではなく、業務への組み込み方が見えていないのです。
ChatGPTやGeminiを試しているものの、業務でうまく使い切れていない方は、プロンプト単体ではなく、業務フローへの組み込み方から見直してみてください。
自社の業務に合わせて、どの作業をAIに任せるべきか。どんなプロンプトを用意すべきか。どんな資料をプロジェクトに登録しておくべきか。
そこまで整理できると、AIは単なる時短ツールではなく、日々の仕事を前に進める仕組みになります。
自社の業務に合わせたAI活用を整理したい方は、プロンプト設計サービスの活用もご検討ください。業務内容、顧客対応、マーケティング施策に合わせて設計することで、ChatGPTやGeminiを使うたびに迷う状態から抜け出しやすくなります。