40年間、誰かの好きになろうとしていた。──「君が好きな君が好き。」その一言で、私はようやく自分を選べた。

40年間、誰かの好きになろうとしていた。──「君が好きな君が好き。」その一言で、私はようやく自分を選べた。

記事
コラム
私は、自分の「好き」が分からない人でした。

「好きな髪型って何?」

そう聞かれたら、今の私はすぐに答えられます。

でも、20代の頃の私は答えられませんでした。

答えられないんじゃなくて、考えたことがなかったんです。

私が考えていたのは、いつも一つでした。

「相手は何が好きなんだろう。」

ロングが好きかな。

ショートかな。

スカートかな。

パンツスタイルかな。

可愛い系かな。

大人っぽい方がいいのかな。

私は、自分の「好き」を探しているつもりで、ずっと相手の「好き」を探していました。

だから恋愛をすると、毎回同じことが起きます。

少しずつ、自分がいなくなる。

嫌だと思っても言えない。

本当は違うと思っても合わせてしまう。

「これくらいなら我慢できる。」

そうやって、自分を後回しにしていました。

でもね。

その時の私は、それが愛だと思っていたんです。

相手に合わせられる私は優しい。

我慢できる私はいい彼女。

そう信じていました。

だから、自分をなくしていることにも気づきませんでした。

40年近く生きてきて、ようやく分かったことがあります。

人は突然、自分を見失うんじゃありません。

毎日の小さな選択で、少しずつ自分を手放していくんです。

「今日は相手に合わせよう。」

「今回は私が我慢しよう。」

「嫌われたくないから黙っていよう。」

その積み重ねが、何年も続く。

気づいた時には、「私は何が好きなんだろう。」さえ分からなくなっていました。

だから、この作品では恋愛テクニックは書きません。

「こうすれば愛されます。」という話もしません。

私には、それは書けません。

私が書けるのは、一人の女性が40年かけて、自分を取り戻していった話だけです。

そして、もしこの記事を読みながら「これ、私かもしれない」と思ったら、一つだけ試してみてほしいことがあります。

今日一日だけでいい。

何かを選ぶ時に、一度だけ自分へ聞いてみてください。

「私は、本当はどっちが好き?」

お昼ご飯でもいい。

服でもいい。

飲み物でもいい。

小さなことで構いません。

大切なのは、正解を選ぶことじゃありません。

自分に質問すること。

実は私も、その小さな質問から人生が変わり始めました。

でも、その頃の私はまだ気づいていませんでした。

私は「恋愛をしている」と思っていたけれど、本当はずっと、誰かに好かれるための役を演じ続けていただけだったことに。

そのことに気づいた時、私は中学生の頃の自分を思い出すことになります。

第1章

「普通の女の子」を演じることが、私の恋愛だった。

──可愛い自分を演じれば、置いていかれないと思っていた。

中学生で初めて彼氏ができました。

今でも、その時のことはよく覚えています。

嬉しかった。

好きな人ができて、好きって言ってもらえて。

やっと私にも普通の恋愛ができるんだって思いました。

でもね。

私は最初から、本当の私では恋愛をしていませんでした。

私の家は、普通の家庭ではありませんでした。

母はギャンブルにのめり込み、借金を繰り返していました。

家を空けることも何度もありました。

父とは毎日のように喧嘩。

家にいても安心できない。

学校へ行っても、家のことは噂になっていました。

だから私は思ったんです。

「普通の子だと思われたい。」

その一心でした。

彼にだけは知られたくなかった。

可哀想な子だと思われたくなかった。

だから私は、笑いました。

明るく振る舞いました。

何も悩みがない女の子を演じました。

今思えば、あれが私の恋愛の始まりでした。

「好きになってもらうために、自分を作る。」

それが当たり前になっていました。

高校生になると、年上の彼氏ができるようになります。

社会人の彼は忙しくて、毎日連絡をくれるわけではありません。

会える日も少ない。

でも私は、その時間を待てませんでした。

返信が来ない。

たったそれだけで苦しくなる。

「嫌われたのかな。」

「私、何かしたかな。」

「もう好きじゃないのかな。」

頭の中は、そのことでいっぱいでした。

今だから分かります。

私は恋をしていたんじゃありません。

置いていかれることが怖かった。

子どもの頃、母が何度も家を出ていきました。

幼稚園の頃の私は、泣きながら母を探しました。

その時の私は、

「また一人になった。」

そう思っていました。

その感覚が、大人になっても消えていなかった。

だから恋愛でも同じでした。

返信が遅い。

会えない。

その出来事そのものが苦しかったんじゃありません。

また一人になるかもしれない。

その恐怖が苦しかったんです。

だから私は、相手に合わせました。

嫌だと思っても笑う。

本当は寂しくても「大丈夫」と言う。

可愛いと思われそうな服を選ぶ。

相手が好きそうな髪型にする。

そうすれば、置いていかれないと思っていました。

でも、不思議ですよね。

自分を消してまで続けた恋愛は、一度も心から安心できませんでした。

どれだけ頑張っても、

「もっと可愛くならなきゃ。」

「もっと好かれなきゃ。」

その繰り返しでした。

今、昔の自分を見ると、かわいそうとは思いません。

頑張ってたね。

そう思います。

あの頃の私は、本気で信じていたんです。

「自分を変えれば愛される。」

って。

だから責めることはできません。

ただ、一つだけ。

もしあの頃の私に会えるなら、こんな質問をしたいです。

「その髪型、本当にあなたが好きなの?」

たぶん、答えられなかったと思います。

だって私は、自分が何を好きなのか、知らなかったから。

そして、その「分からない」が、大人になってもずっと続いていくことになります。

恋愛をするたびに私は、相手の好きな女の子になろうとしていました。

だから、今の彼に出会って最初にした質問も、やっぱり同じだったんです。

「どんな髪型が好き?」

その質問が、40年間続いた私の恋愛を、大きく変えることになるなんて。

この時の私は、まだ知りませんでした。

第2章

「どんな髪型が好き?」と聞き続けていた私。

──私は、自分で自分を選べなかった。

今の彼と出会ってからも、私は昔と何も変わっていませんでした。

恋愛をすると、まず最初に考えること。

それは、

「私は何が好き?」

じゃありません。

「この人は何が好き?」

でした。

ある日、彼に聞きました。

「どんな髪型が好き?」

ロング?

ショート?

その質問は、一回だけじゃありません。

何度も聞きました。

服装も同じです。

「スカートが好き?」

「パンツスタイルはどう?」

「こういう服って好き?」

今思えば、私は彼に質問をしているようで、本当は違いました。

「これなら嫌われない?」

そう確認していただけなんです。

彼に好かれたい。

彼の理想の女性になりたい。

その気持ちは、本当に強かった。

だから私は、自分で選ぶことができませんでした。

もし彼が、

「ロングが好き。」

そう言えば、髪を伸ばしていたと思います。

「スカートが好き。」

そう言えば、毎日スカートを履いていたと思います。

昔の私は、それくらい簡単に自分を変えてしまう人でした。

でもね。

これは今の彼だけじゃありません。

私は昔からずっとそうでした。

恋愛をするたびに、

相手の好きそうな女性を演じる。

可愛いと思われそうな服を着る。

嫌われそうなことは言わない。

本当は嫌でも笑う。

「大丈夫。」

と言う。

そうやって恋愛を続けていました。

だから私は、「嫌だ。」という言葉が苦手でした。

断ることも苦手。

お願いすることも苦手。

自分の気持ちを伝えることも苦手。

嫌われるくらいなら、

私が我慢した方が早い。

そう思っていました。

でも、その生き方は少しずつ私を苦しめました。

本当はラーメンが食べたい。

でも彼が和食なら和食でいい。

本当は今日は疲れている。

でも会いたいと言われたら会う。

本当はその髪型にしたくない。

でも、相手が好きならそれでいい。

こういう小さな我慢って、その時は気づかないんです。

「これくらい。」

そう思う。

でも、それが一年。

二年。

十年。

積み重なると、

最後には

「私って何が好きなんだろう。」

になってしまう。

私は、本当に分からなくなっていました。

だから今思うんです。

自分を失うって、

ある日突然じゃありません。

一回の大きな出来事でもありません。

毎日の小さな「まぁ、いっか。」の積み重ねなんです。

私はその「まぁ、いっか。」を何千回も繰り返してきました。

恋愛だけじゃありません。

結婚もそうでした。

離婚もそうでした。

ずっと相手を優先してきました。

だから今の彼に出会っても、最初は同じことをしていました。

ある日。

また私は聞きました。

「どんな髪型が好き?」

すると彼は、少し笑いながら言いました。

「君が好きな髪型が好き。」

一瞬、意味が分かりませんでした。

「え?」

聞き返したくらいです。

すると彼は続けました。

「ロングでもいい。」

「ショートでもいい。」

「君が好きで選んだなら、それが一番似合う。」

私は五秒くらい固まっていたと思います。

今まで、そんなことを言われたことがありませんでした。

「彼女なんだから、彼好みになりたい。」

そう思うのが当たり前だと思っていたからです。

だから、その言葉は嬉しいというより、

理解できなかった。

それが正直な気持ちでした。

でも、その五秒が、

私の四十年間を少しずつ変え始めます。

最初に変えたのは髪型でした。

ちょうどマンネリもあって、美容院へ行こうと思っていた頃でした。

以前の私なら、

「彼はどっちが好きかな。」

そう考えて決めていました。

でも、その日は違いました。

美容師さんに聞かれました。

「今日はどうしますか?」

その時、私は初めて考えました。

「私は、どんな髪型が好きなんだろう。」

たったそれだけのことでした。

でも、私にとっては人生で初めて、自分にした質問でした。

そして、その小さな質問が、

この先の恋愛も、生き方も、大きく変えていくことになります。

でも、その頃の私はまだ知りませんでした。

髪型を自分で選べるようになっても、

心はまだ昔のままでした。

返信が少し遅いだけで、

私はまた、スマホばかり見つめることになるのです。

第3章

返信が来ないだけで、一日が終わっていた。
──私は彼を愛していたんじゃない。不安から逃げたかった。

今だから笑って話せるんですけど。

昔の私は、本当にスマホばかり見ていました。

彼から返信が来ない。

それだけで、一日が終わるんです。

「なんで?」

「まだかな。」

「仕事かな。」

最初はそう思います。

でも、30分。

1時間。

2時間。

時間が経つにつれて、頭の中はどんどん悪い方向へ進んでいきました。

「何か怒らせた?」

「他に好きな人ができた?」

「もう私のこと好きじゃないのかな。」

気づけば、スマホを開く。

閉じる。

また開く。

何回見ていたのかなんて、もう覚えていません。

でも、かなり見ていました。

通知が鳴った気がして画面を見る。

違った。

そんなことを何度も繰り返していました。

彼から「好きだよ。」と言われても同じでした。

もちろん嬉しい。

安心もします。

でも、その安心は長く続きませんでした。

半日くらい。

本当に、それくらいだったと思います。

夜に「好き。」と言われても、次の日の昼にはまた不安になる。

「本当に好きなのかな。」

「昨日は言ってくれたけど、今日は?」

私は、愛されている証拠を集め続けていました。

「好き。」

「会いたい。」

「かわいいね。」

そんな言葉を集めれば安心できると思っていました。

でも、どれだけ集めても足りない。

バケツの底に穴が空いているみたいでした。

入れても。

入れても。

安心はこぼれていく。

だから、また欲しくなる。

今だから思うんだけど。

私は彼を疑っていたわけじゃないんです。

彼は何も悪くありませんでした。

返信が遅いのも、仕事だったり、友達といる時間だったり。

理由はちゃんとありました。

それでも不安になる。

じゃあ、何が苦しかったんだろう。

何年も考えて、やっと答えが出ました。

私は彼を失うことが怖かったんじゃありません。

「また置いていかれる。」

その感覚が怖かったんです。

幼い頃。

母は家を空けることが何度もありました。

私は泣きながら母を探していました。

その時の私は、

「またいなくなった。」

「また置いてかれた」

「また1人になった。」

そう感じていました。

その小さな女の子は、大人になっても私の中にいました。

だから返信が来ないだけで、

昔の私が顔を出すんです。

「また一人になる。」

って。

恋愛をしている40歳の私じゃなく、

お母さんを探して泣いていた小さな私が、不安になっていました。

だから私は、

「彼を信じられない人」

だったわけじゃありません。

本当は、

「自分が愛されても大丈夫だと信じられない人」

だったんです。

この違いは、とても大きかった。

そのことに気づいてから、私は自分を責めるのを少しやめられるようになりました。

「あぁ、また不安になってる。」

じゃなくて、

「小さい頃の私が、また怖くなってるんだね。」

そう思えるようになったんです。

すると、不思議でした。

少しだけ心が落ち着くようになりました。

もちろん、すぐには変われません。

今でも彼から連絡がないと、寂しいと思うことはあります。

「どうしたんだろう。」

そう思います。

でも昔と決定的に違うのは、

最初に浮かぶのが、

「嫌われた。」

ではなく、

「何かあったのかな。大丈夫かな。」

になったことです。

たったそれだけ。

でも私にとっては、大きな変化でした。

そして、その変化を決定的なものにした出来事があります。

それが、彼に何度も聞いていたあの質問。

「どんな髪型が好き?」

その答えとして返ってきた、たった一言でした。

「君が好きな君が好き。」

あの日の私は、その言葉の本当の意味を、まだ何ひとつ理解できていませんでした。

第4章

「君が好きな君が好き。」
──人生で初めて、「そのままでいい」と言われた日

「君が好きな君が好き。」

あの日、彼にそう言われました。

正直に言うと、その時は意味が分かりませんでした。

五秒くらい固まって、

「どういうこと?」

そう思っただけでした。

嬉しいというより、理解が追いつかなかった。

だって私は40年間、

「誰かに好かれるために変わる。」

それが当たり前だと思って生きてきたからです。

だから、その言葉を聞いたからといって、次の日から急に変われたわけではありません。

何も変わりませんでした。

相変わらず彼のことを考えるし、

たまに不安にもなる。

でも、その言葉だけは不思議なくらい頭の中に残っていました。

何日経っても。

何か月経っても。

忘れることがありませんでした。

そして少しずつ、私の行動が変わり始めます。

一番最初に変わったのは、自己投資でした。

マツパをしてみよう。

ネイルもやってみよう。

スキンケアも頑張ってみよう。

昔の私なら、

「彼に可愛いって思われたい。」

その気持ちが一番だったと思います。

もちろん最初は、その気持ちも少しはありました。

でも、続けているうちに気づいたんです。

朝、鏡を見る。

まつ毛がきれいに上がっている。

肌の調子がいい。

ネイルを見ると少し気分が上がる。

その時、嬉しかったのは彼に見せることじゃありませんでした。

私が、私を見て嬉しかった。

その感覚が、すごく新鮮でした。

40年間、自分のために何かをすることが、ほとんどありませんでした。

恋人のため。

家族のため。

子どものため。

誰かのためにお金を使うことはあっても、自分のために使うことには、どこか罪悪感がありました。

でも今だから思います。

自己投資って、贅沢じゃない。

「私は私を大切にします。」

そう自分へ伝える時間なんだなって。

高い化粧品じゃなくてもいい。

ブランド物じゃなくてもいい。

私にとっては、マツパもネイルもスキンケアも、

「今日も自分を大切にできた。」

そう思える、小さな積み重ねでした。

そして、その積み重ねは恋愛だけでは終わりませんでした。

新しいことにも挑戦してみようと思えるようになりました。

「どうせ私なんて。」

そう思って諦めていたことへ、一歩踏み出せるようになった。

もちろん、怖かったです。

失敗するかもしれない。

笑われるかもしれない。

それでも、

「やってみたい。」

そう思える自分がいました。

今だから思うんだけど。

彼が私にくれたものは、

「幸せ」ではありませんでした。

彼がくれたのは、

自分を否定しなくてもいいという安心感。

そして、その安心感があったから、私は少しずつ自分で歩き始めることができました。

だから私は、「彼が私を変えた。」と思っています。

でも同時に、こうも思っています。

彼は私の人生を歩いてくれたわけじゃない。

勇気をくれた人でした。

その勇気を受け取って、一歩踏み出したのは私です。

その一歩は、とても小さなものでした。

でも、その小さな一歩が積み重なって、今の私があります。

40年間、私はずっと誰かに選ばれることばかり考えていました。

でも気づいたら、少しずつ。

「私はどうしたい?」

そう考えられるようになっていました。

そして、その変化は恋愛だけでは終わりません。

私の生き方そのものを変えていくことになります。

第5章

自分を好きになったら、人生まで動き始めた。
「君が好きな君が好き。」

その言葉を聞いて、少しずつ自分を選べるようになりました。

でも、今だから思うんです。

本当に変わったのは恋愛じゃありませんでした。

生き方でした。

昔の私は、新しいことを始めるのが苦手でした。

やる前から、

「どうせ私には無理。」

そう決めつけていました。

失敗したらどうしよう。

笑われたらどうしよう。

そんなことばかり考えて、一歩踏み出せない人でした。

だから、何かを始める前に諦めることも多かったと思います。

でも、自分を否定する時間が少しずつ減ってくると、不思議なことが起きました。

「やってみようかな。」

そう思える日が増えてきたんです。

大きな勇気じゃありません。

本当に小さな一歩です。

文章を書いてみよう。

自分の経験を誰かに話してみよう。

そんな小さな挑戦でした。

昔の私なら、

「誰が読むの?」

「こんな人生、恥ずかしい。」

そう思って終わっていたと思います。

二度離婚したこと。

恋愛で苦しかったこと。

返信が来ないだけで泣いていたこと。

そんなこと、人に話すものじゃないと思っていました。

でも、ある日ふと思ったんです。

もし昔の私と同じように苦しんでいる人がいるなら。

「私だけじゃなかった。」

そう思ってもらえるかもしれない。

その気持ちが、私の背中を押しました。

だから私は、noteを書き始めました。

最初から自信なんてありません。

「誰にも読まれなかったらどうしよう。」

その不安は、今でもあります。

それでも書いています。

それは、たくさんの人に褒められたいからじゃありません。

これは、私が選んだ人生だから。

そう思えるようになったからです。

そこから少しずつ、新しいことにも挑戦するようになりました。

今までなら、

「私にはまだ早い。」

そう思っていたことにも、一歩踏み出せるようになりました。

もちろん、全部がうまくいくわけではありません。

思うように反応がない日もあります。

落ち込むこともあります。

でも、不思議なんです。

昔みたいに、

「やっぱり私はダメだ。」

とは思わなくなりました。

「じゃあ次はどうしてみよう。」

そう考えられるようになったんです。

この変化は、私の中ではとても大きなことでした。

昔の私は、失敗すると自分を否定していました。

今の私は、失敗しても方法を考えます。

この違いは、恋愛だけでは手に入らなかったものです。

だから私はよく、

「彼に変えてもらったんですね。」

と言われます。

その言葉を否定するつもりはありません。

彼がいなければ、今の私はいなかったと思います。

それは本当です。

でも、それだけではありません。

彼は私の代わりに記事を書いてくれたわけじゃない。

彼は私の代わりに挑戦してくれたわけでもない。

一歩踏み出すたびに決めたのは、全部私でした。

だから今は、こう思っています。

彼は私の人生を変えた人というより、

「変わってもいい。」

そう思わせてくれた人。

そして、その言葉を信じて歩き始めたのは、私自身でした。

その一歩は小さくても、人生は少しずつ変わっていきました。

恋愛だけで終わると思っていた変化は、仕事も、夢も、未来の考え方まで変えていったんです。

そして気づけば、私はもう一つ、大きな変化をしていました。

昔の私は、「誰かに選ばれること」が幸せだと思っていました。

でも今は違います。

「自分で人生を選べること」が、私にとって一番の幸せになっていました。

第6章

誰かに選ばれる人生を、私は卒業した。
昔の私は、恋愛が人生の中心でした。

彼から連絡が来る。

来ない。

会える。

会えない。

その一つひとつで、一日が決まっていました。

朝から気分がいい日もあれば、

たった一通の返信が来ないだけで、何も手につかない日もありました。

今思えば、私の心はいつも誰かに預けっぱなしだったんです。

だから、相手が笑えば私も笑う。

相手が離れそうになると、私は自分を見失う。

そんな恋愛を何度も繰り返してきました。

でも、今は違います。

もちろん、彼のことは大好きです。

会えた日は嬉しい。

帰る時は寂しい。

連絡が遅い日には、「どうしたんだろう。」と心配にもなります。

そこは今も変わりません。

でも、一つだけ決定的に変わったことがあります。

恋愛が、人生のすべてではなくなりました。

昔の私は、恋愛がうまくいけば幸せ。

うまくいかなければ不幸。

そんな極端な考え方をしていました。

でも今の私には、恋愛以外にも大切なものがあります。

子どもとの時間。

がんもと過ごす時間。

これから挑戦したい仕事。

少しずつ増えてきた夢。

私の世界は、恋愛だけじゃなくなりました。

だから彼と会えない日があっても、

「今日はこの記事を書こう。」

「今日は次の企画を考えよう。」

そう思えるようになりました。

昔の私は、「待つ時間」しかありませんでした。

今の私は、「自分の時間」があります。

この違いは、とても大きいと思っています。

よく、

「恋愛中心にならない方法を教えてください。」

そんな相談を見かけます。

でも私は、その方法を知りません。

無理に恋愛を減らそうとしても、きっと苦しくなるだけだから。

私が変われた理由は、恋愛をやめたからじゃありません。

恋愛以外に、自分が夢中になれるものが増えたから。

それだけなんです。

夢中になれることは、人それぞれでいいと思います。

仕事でもいい。

趣味でもいい。

子育てでもいい。

旅行でもいい。

何でもいい。

「これは私が好き。」

そう思えるものが一つ増えるたびに、人生は少しずつ広がっていく。

私はそう感じています。

今でも、昔の自分が顔を出す日はあります。

返信が遅い日。

急に会えなくなった日。

そんな時は、少し不安になります。

でも、その不安に飲み込まれることはなくなりました。

「また昔の私が心配してるな。」

そう思えるようになったからです。

昔は、不安が私でした。

今は、不安も私の一部。

それだけの違いなのかもしれません。

でも、その違いが人生を大きく変えました。

私はもう、「誰かに選ばれること」で自分の価値を決めません。

誰かに愛されることで、自分を好きになろうともしません。

もちろん、彼に「好き」と言われたら嬉しいです。

それはこれからも変わらないと思います。

でも、その言葉がないと私は幸せになれない。

そんな人生ではなくなりました。

40年間、私は誰かの好きになろうとして生きてきました。

でも今は、少しだけ違います。

今日の私は、今日の私が好き。

そう思える日が、少しずつ増えてきました。

毎日じゃありません。

まだ落ち込む日もあります。

自信をなくす日もあります。

それでも、自分を責め続けることはなくなりました。

それだけでも、私にとっては大きな成長です。

そして今、この文章を書きながら思います。

あの日、彼がくれた一言は、恋愛を変える言葉じゃありませんでした。

私の人生を、私へ返してくれた言葉だったんだ。

そんな気がしています。

最終章

君が好きな君が好き。
この記事を書きながら、何度も昔の自分を思い出しました。

中学生の私。

二十歳の私。

三十歳の私。

そして、返信が来ないだけで泣いていた私。

どの私も、一生懸命でした。

誰かに愛されようとして。

誰かに必要とされようとして。

誰かの好きな自分になろうとして。

頑張っていました。

だから今の私は、あの頃の私を笑えません。

「なんでもっと自分を大切にしなかったの。」

そう責めることもできません。

あの頃は、それしか知らなかったから。

私はずっと勘違いをしていました。

恋愛がうまくいけば幸せになれる。

好きと言われ続ければ安心できる。

相手に選ばれ続ければ、自分にも価値がある。

そう思っていました。

でも、それは違いました。

どれだけ愛されても。

どれだけ褒められても。

自分が自分を嫌いなままだったら、不安はなくなりませんでした。

だから私は、愛され方を探すのをやめました。

その代わりに、

「私はどうしたい?」

という質問を、自分にするようになりました。

最初は答えられませんでした。

四十年間、一度も聞いたことのない質問だったからです。

でも、不思議ですね。

何度も自分へ聞いているうちに、少しずつ答えられるようになりました。

今日はこれが食べたい。

今日はこれを着たい。

今日はこれをやってみたい。

本当に小さなことばかりです。

でも、その小さな積み重ねが、私の人生を変えてくれました。

今でも、不安になる日はあります。

彼から連絡が遅い日もあります。

落ち込む日もあります。

自信をなくす日だってあります。

私は、完璧に変われたわけではありません。

でも、一つだけ変わったことがあります。

そんな日でも、

自分を嫌いにならなくなりました。

「今日はそんな日もあるよね。」

そう言えるようになりました。

昔の私なら、

「私が悪い。」

そう思って終わっていたと思います。

この違いは、とても大きい。

そして私は、彼に言われたあの日の言葉を、ようやく理解できるようになりました。

「君が好きな君が好き。」

あれは髪型の話じゃありませんでした。

メイクの話でもありませんでした。

「誰かのために自分を変えなくていい。」

「自分で選んだあなたを、私は好きだよ。」

そんな意味だったんだと思います。

理解するまでに、私は何年もかかりました。

でも、それでよかった。

もしあの日、すぐに理解できていたら、きっと今の私はいません。

遠回りをして。

失敗をして。

泣いて。

迷って。

それでも少しずつ歩いてきたから、今こうして自分の言葉で書けています。

だから、昔の私へ伝えたい。

頑張ったね。

本当に頑張った。

無理をして笑っていた日も。

嫌だと言えなかった日も。

置いていかれるのが怖くて眠れなかった夜も。

全部知ってるよ。

でも、大丈夫。

四十歳になったあなたは、ちゃんと笑っています。

そして今、この文章を読んでくれているあなたへ。

私は、「こうした方がいい」とは言いません。

恋愛の形も。

幸せの形も。

人それぞれだから。

ただ、もし今日。

何か一つだけ選ぶ場面があったら。

その時だけは、

誰かが好きなものじゃなくて、

あなたが好きなものを選んでみてください。

大きなことじゃなくていい。

飲み物でも。

服でも。

お昼ご飯でも。

その小さな一つが、もしかしたら数年後のあなたを変えているかもしれません。

私がそうだったように。

あの日。

彼が私にくれた言葉は、

人生で一番短いラブレターでした。

そして今、その言葉を少しだけ、私自身にも言ってあげられます。

「君が好きな君が好き。」

まだ完璧じゃない。

それでも今日の私は、昨日より少しだけ、自分のことが好きです。

それで十分。

私は、そう思っています。

最後までお読みいただきありがとうございました。


この3作目は、「恋愛」の話を書いたつもりはありません。

40年間かけて、少しずつ自分を好きになれた話です。

でも実は、この物語にはまだ続きがあります。

私は「自分を好きになれた」から、今の考え方になれたわけではありません。

その前に、二度の離婚がありました。

「離婚なんて失敗だ。」

そう思われることもあります。

でも私は、一度もそう思ったことがありません。

私にとって離婚は、人生を取り戻すための選択でした。

もし、まだ読んでいなければ、こちらも読んでいただけたら嬉しいです。

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