ジョン・レノンの住んだアパートを見る

記事
コラム
 早朝ウォーキングのコースにサットン・プレイスという地区がある。マンハッタンの東側、イーストリバーのほとりの閑静な住宅街だ。この辺りは古いアパートが並び、新しい高層アパートが立ち入る余地はなく、その古さこそが威厳のような佇まいを見せる。

 サットン・プレイスはトルーマン・カポーティの短編小説『ミリアム』の舞台でもあり、マリリン・モンロー主演の『百万長者と結婚する方法』は、この地のラグジュアリーなアパートのペントハウスからストーリーが繰り広げられる。また、実生活ではマリリン・モンローの三度目の夫となった劇作家、アーサー・ミラーの終の棲家もこちらサットン・プレイスにある。そんな場所ゆえ、夜明け前の蒼い朝方、街を歩くのは心ときめくのである。

 このサットン・プレイスにジョン・レノンが住んでいたのだ。『失われた週末』と呼ばれた18ヵ月、愛人、メイ・パンと過ごしたアパートが 434 East 52nd Street にある。

  外観は一般的なアパートで煌びやかさは何もない。そもそもサットン・プレイスには昔からのアパート群が立ち並び、それこそがこの街を特徴づける趣だ。入口のドアは鉄の重厚な細工が施された格子の両扉。この建物の最上階のペントハウスにジョン・レノンは『失われた週末』の18ヵ月、愛人のメイ・パンと暮らした。

 ペントハウスからは近くの国連が見え、遠くにブルックリン、そしてアパート間近のイーストリバーが見下ろせた。質素に見えるアパートだが、ペントハウスは豪勢で、流石のジョン・レノンの暮らしぶりであった。

 気温が30度近くまで上がった6月初旬、意識してそのアパートを見に行く。マンハッタンの中ほどは東のイーストリバーに近い1番街から、西のハドソンリバー傍の12番街まであり、1番街は観光地には程遠く、ニューヨークの暮らしぶりが伺えるニューヨーク住民の普通の暮らしがある地域である。

 オノ・ヨーコと死の寸前まで暮らしたアッパーウエストサイドのダコタハウスとは外見も資産価値も全く違うアパートである。窓の大きさもダコタハウスは巨大で、アパートの入り口には詰め所のようなセキュリティーがいる場所がある厳重注意の超高級アパートだ。

 ジョン・レノンはダコタハウスより、サットン・プレイスのような市場の人々の暮らしを好んだような気がした。まさか近所にかつてジョン・レノンが暮らしていたとは驚いたし、嬉しかった。

 『イマジン』を口ずさみながら、かつてジョン・レノンの住んだアパート前からサットン・プレイス界隈を歩く。

 ジョーゼットのワンピースが夏帯びた風に吹かれ、真昼の太陽光にジワリと照らされたサットン・プレイス。マンハッタンの暮らしに疲れている私を天から見下ろしてくれている人がジョン・レノンであることを願った昼下がりだった。

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す ココナラコンテンツマーケット ノウハウ記事・テンプレート・デザイン素材はこちら