「脱Excelを進めよう」という話が出て、部内のファイルを数えてみたことがある。共有フォルダを開くと、今も使われているものだけで四十いくつあった。一覧にして、どれから手をつけるかを二回話し合い、それきり止まっている。
止まった理由は、優先順位が付かなかったことに尽きる。四十のうちどれを指しても「今のままでも一応回っている」と言えてしまう。緊急のものが一つもない一覧を前にすると、人はどこからも始められない。全部を対象にした瞬間、順番が決められなくなる。
そして実のところ、全部をやめる必要はない。Excelが今でも一番向いている仕事は残っている。残す表とやめる表の線を先に引くと、四十が五つか六つに減る。今回はその線の引き方と、両方が手元に残っている間の付き合い方を書きます。
一覧を作った時点で止まる
脱Excelという言葉は、対象が全部だと言っているように聞こえる。だから最初に一覧を作る。ところが一覧ができあがると、今度は一覧そのものが仕事になる。移す順番、影響の範囲、誰が使っているかの確認。手を動かす前の作業だけが積み上がって、半年が過ぎる。
実際に困っているのは、たいてい二つか三つの表だ。締めのたびに合わなくなるもの、コピーが人数分に増えているもの、毎月同じ貼り付けを繰り返しているもの。四十を平らに並べると、この二つか三つが他と同じ重さになって埋もれる。先に落とすべきなのは、困っていない表のほうです。
残していい表は、だいたい三種類
一つ目は、一人で使う下書き。頭の中を並べ替えるために書く表で、行を足したり消したりしながら形そのものが変わっていく。二つ目は、その場限りの分析。今月だけ、この件だけ、と期間が決まっているもの。三つ目は、印刷して配るための整形。決まった枠に数字を流し込んで紙にする作業だ。
共通しているのは、消えても誰も困らないという点だ。作った本人しか見ない。来月には使わない。元になった数字が別の場所に残っている。このどれかに当てはまる表は、わざわざ移す必要がない。表計算のほうが速いし、思いついた形にその場で変えられる。得意なことをやらせておけばいい。
移す側に回す四つの目印
逆に、次の四つが当てはまる表は、そのままにしておくと後で面倒が来る。複数人が同じファイルを触ること。誰がいつ直したかを後から確かめる必要があること。金額が入っていること。そして月をまたいで数字が積み上がっていくこと。
一つだけなら運用でしのげる。触る人が二人でも、声をかけ合えば当分は持つ。厄介なのは重なったときだ。金額が入っていて、複数人が触って、月をまたぐ。これが揃うと、ずれた瞬間ではなく締めの日に発覚する。二つ以上当てはまるなら、移す側に置くくらいの粗さでちょうどいい。
出す向きは、一方向に固定する
移すと決めても、Excelが完全に消えるわけではない。アプリに入れたデータを表計算で加工したい場面は残る。取引先ごとに並べ替えて眺めたい。会議の資料に貼りたい。経理の担当者に渡す形に変えたい。これは止める必要がない。CSVで出して、Excelで好きに加工してもらえばいい。
条件は一つだけだ。出す向きを一方向に固定して、戻す道を作らない。アプリから出す。Excelで加工する。その先で直したものをアプリに戻す、はやらない。戻す道を用意した瞬間、同じ情報が二か所にあって、どちらも入力できる状態が常設になる。
どちらが正しいか分からなくなるのは、二か所にあるからではなく、両方に入れられるからだ。
控えが二か所にあること自体は珍しくない。手元に写しを持つのは自然な行動だ。困るのは、両方が入力できてしまう場合に限る。片方が読むだけなら、食い違っていてもどちらが正かは決まっている。決まってさえいれば、直す先で迷うこともない。
どうしても戻したい場面はある。件数の多い修正を表計算で一気に直したい、というときだ。その場合もExcelを直接つなぐのではなく、取り込み用の口を一つ作る。いつ、誰が、どのファイルを取り込んだかが残る形にしておく。入力できる場所を増やすのではなく、入り口を一つに保ったまま手段だけを足す、という考え方です。
貼り付けが残るなら、その一手だけ
線を引いて残した表にも、手作業は残る。多いのは貼り付けだ。既存のシステムから落としたCSVを開いて、決まった列だけを別の表に貼り、書式を整えて提出する。月末に三十分。惜しいのは、この三十分を消すために、表そのものを作り替えようとしてしまうことだ。そこから話が大きくなって、また止まる。
表そのものを置き換えなくていい。落としたファイルを読んで、決まった形に整えたものを出す。その一手だけを自動にする。入り口も出口も今のままなので、使う人の手順は変わらない。うまくいかなければ手作業に戻せる。戻せる範囲で試すのが、結局いちばん安く済みます。
残す表にも、置き場所を決める
最後に一つ。残すと決めた表を各自のデスクトップに置いたままにすると、線を引いた意味が薄れる。手元にあるファイルは、便利だから使われる。使われるうちに見る人が増え、直す人が増え、いつのまにか本番の一本になっている。置き場所を決めないと、引いた線はすぐ崩れる。
決めることは二つで足りる。どこに置くか。いつ捨てるか。下書きと今月限りの分析は、期限を書いたフォルダにまとめて、翌月にはまとめて消す。印刷用の整形は、元の数字を毎回アプリから出し直す形にしておく。締めた月の数字を後から手で直さずに済むのは、この形にしておいた時だけです。
当方は元金融系のシステムエンジニアで、Excel・紙で回している業務を小さなツールにする仕事をしている。全部を作り替えるのではなく、貼り付けや集計の一作業だけを切り出して自動にするご依頼も承っています。残す側かやめる側かを決めかねている段階で構いませんので、ココナラのメッセージからご相談ください。