夜になると、過去のことを思い出してしまう
寝ようとしているのに、頭の中が止まらない
そんな経験はありませんか?
脳は本来、私たちが眠りについている夜間に、その日に起きた出来事や感情を「整理整頓」する仕組みを持っています。
断片的な記憶を適切な棚に収め、不要な感情の熱を鎮めることで、私たちは翌朝、新しい一日を「今」として始めることができるのです。
しかし、こころと身体の過去の記憶であるトラウマを抱えていると、この処理が著しく滞ってしまいます。
あまりに強大で冷たい記憶の塊は、脳の整理システム(情報処理のネットワーク)の容量をはるかに超えてしまっているからです。
処理しきれなかった記憶は、棚に収まることなく「現在進行形の危機」として脳の片隅で燃え続け、夜の休息さえも過去の侵入を許す場所になってしまいます。
東洋医学的に見れば、これは「心(しん)」の光(神気)が夜の静寂(陰)の中で安らぐことができず、浮き上がってしまっている状態です。
脳という精密なネットワークが、過去のデータを処理しきれずにフリ
ーズしている。そして、その背後には、「腎」の凍りついた記憶が、どっしりと居座っている……。
東洋医学では、眠りとは「衛気(えき/バリアを司る気)」が身体の外から内へと戻り、五臓六腑を養う時間だと考えます。
しかし、ネットワークがフリーズし、外への扉が固く閉ざされていると、「気」は戻る場所を失い、行き場をなくして浮き上がってしまいます。
この眠りの滞りを解くには、「深く眠ろう」と力むことよりも、まずは日中、あるいは寝る前に、「今は安全な場所にいる」という微かな信号を身体の末端から脳へ届けてあげることが大切です。
この脳の滞りと、こころと身体のフリーズ。 この二つは、決して別々の問題ではありません。
たとえば、冷え切った足元を温めること、深い呼吸とともに横隔膜の強張りを緩めること、温かい飲み物で鳩尾を内側から温めること。
そんな小さな「共鳴」の積み重ねが、脳の整理システムを少しずつ再起動させ、止まっていた時計の歯車を動かし始めます。
もちろん、その歩みは真っ直ぐな道ではありません。 時に同じ場所をぐるぐると回っているように感じることもあるでしょう。けれど、それは「停滞」ではなく、螺旋状の道を歩んでいるのです。